「常識破り」の客室、“意外な注目エリア”東京・蒲田に開業した新ホテル

有名チェーンホテルの開業やメディアで注目されるような新しいホテルは多くありますが、この連載ではホテル評論家が新規開拓したおすすめホテルをレポート。今回は東京・蒲田に新たに開業した「ホテルシンシア東京蒲田」を紹介します。変わったレイアウトの客室など新たな発見のあるホテルです。


開業が続くホテル

近年のホテル活況は多くのホテルを誕生させました。その多くは宿泊特化型のホテル、いわゆるビジネスホテルが多くを占めます。一方で2020年に入り東京オリンピックへ向けて盛り上がっていた業界でしたが、一転、新型コロナウイルスの影響で破綻するホテルが相次ぐ中で、プロジェクトそのものが白紙になるケースや建設が頓挫しているホテルも出てきています。

ただ、開業間近だったという施設では、開業を延期させたもののオープンのタイミングを見計らっていたケースも数多くありました。今回は、緊急事態宣言が解除され徐々に経済活動も優先する空気が広がる中で、7月3日に開業した新しいホテルをレポートします。

賑やかな蒲田駅周辺

訪れたのは東京都大田区蒲田。多摩川を渡れば神奈川県川崎市という都県境エリアです。町工場なども多く見られ、昭和の雰囲気を色濃く残す街として根強い人気を誇ります。街として見た場合にJR蒲田駅周辺と京急蒲田駅周辺に大きく分かれます。東急線の乗り換えもできるJR蒲田駅のホームに降り立つと、発車メロディが蒲田行進曲であることに気付きます。

蒲田には戦前に松竹キネマ(現・松竹)の映画撮影所がありました。“キネマの都”とも言われ、映画「蒲田行進曲」でも一躍その地名は全国区になりました。蒲田行進曲のテーマソングは、まさに蒲田を象徴するメロディとして駅のホームで聴くことができます。

JRも京急も含め蒲田駅の周辺にはアーケードを中心に安い飲食店や商店などが多くあります。物価も安く生活のしやすさが想像できます。ホテルシンシア東京蒲田は、京急蒲田駅の西口から徒歩3分、アーケードを通って右折するのが近道です。JRの蒲田駅からだと東口より徒歩8分です。

蒲田は意外なホテル注目エリア

東京のホテルというカテゴリーで見た場合、どうしても都心のターミナル駅や人気タウンのホテルが注目されがちです。一方で、以前から筆者は品川以南の京浜東北線や京急沿線のホテルに着目しており、多くのホテル情報を拡散してきました。蒲田の場合、旅のアクセスという点からいうとJRよりも京急に軍配です。

その理由は、なんと言っても京急ならば羽田空港から最短10分で到達することが出来るからです。京急のネットワークを活用すれば品川や横浜、遠くは成田空港までも乗り換えなしでアクセス可能です。規模でいえば都心のターミナル駅には叶いませんが、羽田空港に最寄りの駅近ホテル泊であれば何かと安心です。

そもそも、都心のターミナル駅は規模が大きいので、駅を出るまでに時間を要し、駅近ホテルといえどもチェックインまでには相応の時間がかかります。蒲田駅のようなケースであればホテルまでのアクセスは意外に時短が期待できます。

広々としたロビースペース

通りに面した明るい外観のホテルシンシア東京蒲田に入るとまずフロントがあります。フロントを抜けた奥には大きなテーブルとゆったりとしたソファが並びます。カフェスペースのような空間ですが、まさに宿泊者限定で利用できるフリードリンクサービスもあるのです。

また、ロビーにはアメニティバイキングが用意されており、必要なものを必要な分だけピックアップできます。客室にアメニティが揃っているのが定番ですが、環境という面からもホテルシンシア東京蒲田に限らず、最近ではこのようなアメニティの提供方法も見られるようになりました。

いったいこのバスルームは何だ!?

キレイでスタイリッシュなホテルが増えました。ビジネスホテルでも同様で差別化という点でもデザインや機能性という面でも様々な工夫が見られます。ホテルシンシア東京蒲田の客室は様々なタイプがありますが、客室によって壁紙やバスルームの位置が異なるデザインを採用しており、客室によりかなり雰囲気は変わります。

個人的におすすめはコンフォートダブルで、テレワークも捗りそうな備え付けのデスクとは別に、ゆったりした椅子とテーブルも用意されています。客室面積は 17.5平方mとシティホテルのシングルユース向け客室のレベル。ベッドの質感も高いです。

何より驚くのがバス・トイレのスペース。通常のホテルでは入り口付近にまずユニットバスがあり、奥にデスクやベッドのスペースというのが一般的。ところがこちらの客室は、奥にバス・トイレのスペースがあるのです。

そのような配置ゆえ大きな窓からの眺望は抜群。バスタブにオーバーヘッドシャワーと設備も吟味されています。数え切れないほどビジネスホテルを見てきましたが、このレイアウトにはさすがに驚きました。


東京・蒲田の新しいホテルいかがだったでしょうか? フルサービス型といわれるいわゆるシティホテルに比べ、付帯施設や設備などが限定される宿泊特化型ホテルということで、新しいアイディアをはじめとした差別化は客室内が勝負という様相を呈しています。今後も気になったホテルを見つけたらレポートしていきたいと思います。

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