無尽蔵のスタミナ V長崎 FW澤田崇 「今、自分ができることをやるだけ」

90分間落ちないスピードでピッチを駆け回る澤田=岡山市、シティライトスタジアム

 得点能力が飛び抜けて高いわけではない。ただ、指揮官が代わっても、システムが変わっても、必ず試合に出続ける。それが澤田崇というアタッカーだろう。「今、自分ができることをやるだけ」。口数は少ないが、そのひたむきな姿は見る者の心を打ち、周りの選手を突き動かす。プレーで「語る」ことのできる替えの利かない存在だ。
 90分間ピッチを駆け回るスタミナは、無尽蔵という表現がぴったり。鋭いターンから繰り出すドリブル突破は、相手の足が止まる終盤にむしろ切れ味を増す。タレントが豊富なV長崎の前線で、他との明確な違いを生み出している。
 高いパフォーマンスの裏には、人知れぬ鍛錬がある。新型コロナウイルス感染拡大に伴うチームの活動休止期間をリフレッシュに当てる選手もいる中、家の近くにある海辺や坂道を黙々と走り込んだ。今年で29歳。「もう若くない。動けなくなるのが怖いから」と照れくさそうに語る真の努力家が、今季のチームの躍進を支えている。
 熊本県出身。2016年に震災が発生した際は、縁のある選手と協力してサッカー教室を開き、被災地の子どもに寄り添った。そして今年。記録的な大雨が故郷を襲い、再び甚大な被害が出た。「育ててもらった場所。少しでも力になりたい」。コロナ禍で現地に赴くのは好ましくない。それでも、何かできないかと考え、動画メッセージを送った。
 「今、自分にできること」に全力を尽くす。ピッチの中でも外でも決してぶれず、そこには一切の妥協もうそもない。だから、信頼されている。

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