死ぬまでに使いきれなくなる!? 31歳DINKS夫婦の手取りと貯金のペースとは?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、23区にお住まいの、31歳共働きのご夫婦。子どもをもつつもりも、マイホームを建てるつもりもないというライフプランをもっていますが、老後のためにいくら貯めればいいのかわからないと言います。FPの氏家祥美氏がお答えします。

夫婦で一生都内23区に賃貸住まいを考えていますが、定年退職までに夫婦で貯めておくべき必要な金額がわかりません。また、固定費をこれ以上下げられません(引っ越す予定はないので住宅費は変更不可)。可能な限り夫婦共に定年まで正社員、子どもは持たない予定です。

【相談者プロフィール】

女性、31歳、既婚(夫:31歳)

あなたの職業:会社員

子どもの人数:なし

住居の形態:賃貸

毎月の世帯の手取り金額:44万円(相談者年収480万円 ※コロナ禍の打撃で最低でも年収100万以上減る予定、夫年収600万円)

年間の世帯の手取りボーナス額:私の会社のボーナスは、年によってかなり変動し、ボーナスが年収の割合を大きく占めるので年収に大きく響くのが悩み。昨年実績は200万。

毎月の世帯の支出の目安:22万円

【支出の内訳】

住居費:13万円

食費:3万円

水道光熱費:1万円

保険料:0.3万円

通信費:0.4万円

お小遣い:4万円

【資産状況】

毎月の貯蓄額:22万円

ボーナスからの年間貯蓄額:200万円

現在の貯蓄総額:3000万円

現在の投資総額:0

現在の負債総額:0


氏家: 今回は、31歳の共働きご夫婦から「定年退職までにいくら貯めておくべきか」というご相談です。貯めておくべき金額は、各家庭によって異なります。そこで、3つの視点から、貯めるべき金額を考えていきます。

(1)今後の貯蓄可能額
(2)老後の生活費
(3)公的年金額

退職までの貯蓄可能額をざっと計算

最初に、ご相談者さんが今後貯蓄できる金額を考えてみましょう。ご相談者さんは共働きをしています。子どもを持つ予定は今後もなく、住宅購入の予定もありません。そのため、大きなライフイベント資金を考慮することなく、定年退職までのマネープランを考えることができます。

毎月の手取り月収が44万円なのに対して、毎月の支出は22万円。そのため、毎月22万円の貯蓄ができています。1年間で22万円×12ヵ月=264万円になりますね。さらに、ボーナスもほとんど使わず年間200万円の貯蓄ができています。そのため、1年間で464万円の貯蓄が可能です。

仮に60歳で定年退職をするとした場合、あと29年間働けます。給与の上昇や、暮らし向きの変化、運用益を考慮せず、単純計算した場合、今後、464万円×29年=1億3456万円の貯蓄を増やせる計算となります。

現在の貯蓄残高3000万円をあわせると、60歳時点で合計1億6456万円の貯蓄を手にできると考えられます。

何歳まで働けばいいのか?

老後資金を考えるうえでは、「何歳まで働くか」も大きな要素となります。60歳で定年を迎えてリタイア生活に入ると、5年間預貯金を取り崩して生活することになります。

一方で、65歳まで働くとした場合、収入を得られる期間が長くなり、かつ、老後の年金額も増やすことができます。貯蓄を取り崩して生活する期間を減らせるので、長く働くことはキャッフローの改善につながります。

先ほど、60歳時点で合計1億6456万円の貯蓄ができるという計算になりましたが、65歳まで働くとするとその間の貯蓄分が上乗せできます。さらに、勤務先からの退職一時金や企業年金があれば、ご相談者さんの老後資金はさらに増えることになります。

老後の生活費はいくら必要か

老後の生活費は、どこに住み、どんな暮らしをしたいかによってまるで異なります。まずは、現在の暮らしをベースとして考え、高齢になった時に増えやすい支出、減りやすい支出を調整していきましょう。

ご相談者さんご夫婦の現在の生活費は、月額22万円。家賃が13万円と60%近くを占めていますが、他の支出がとてもコンパクトに抑えられています。通信費や保険料が必要最低限に抑えられていますし、レジャー費や雑費、被服費などの項目が無く、それらを吸収していると思われるお小遣いの金額も抑えられています。

高齢になると、医療費などが今よりもかかりやすくなりますので、支出は少し増える可能性があります。

老後の公的年金収入はいくらか

全国平均データによると、65歳以降の厚生年金受給者の年金額は、男性が17万2742円、女性が10万8756円です。

現在老齢年金を受給している65歳以上の世代では、配偶者の被扶養者として専業主婦をしていた期間が長い女性も多く含まれるため、厚生年金受給額に男女差が出ていると思われます。男女の数字を足すと、厚生年金を受給中の夫婦の平均的な年金月額が計算できます。
17万2742円+10万8756円=28万1498円

ご相談者さんご夫婦の年金額は試算していませんが、現在のご夫婦の年収や今後の希望を見る限り、全国平均の金額よりもご相談者さん夫婦の年金額が上回ると思われます。年金額を知りたい場合には、日本年金機構の「ねんきんネット」を使って、一度シミュレーションをすることをお勧めします。

いずれにしても、年金額が全国平均程度の28万円として、そこから税金や社会保険料を差し引いても、ご相談者さんの生活費はほぼ年金の範囲内で収まると考えられそうです。

老後資金はいらない!?

しっかりと働き、浪費をせず、とても堅実な家計を築いているご相談者さんご夫婦ですが、老後はとても経済的な余裕がありそうです。毎月の年金から家賃も含んだ生活費が賄えれば、備えておきたい老後資金は、病気や介護への備えと老後の楽しみのお金です。

お子さんやマイホームの予定がないので、子どもの教育費や結婚援助資金、お孫さんへのイベント費用は必要ありませんし、リフォーム費用なども不要です。

そのため、とてもお金を貯めやすい状況にありますが、老後資金を貯めて長生きしても、お金を使えずに終わる可能性があります。お子さんやお孫さんへの相続もないと、使いきれなかったお金は国庫に納めることになります。

ご相談者さんご夫婦はまだ31歳。節約のペースを少し緩めて、目先の楽しみにもっとお金を使っていくか、貯めたお金を使う先を考えてみてもいいでしょう。

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