ザ・ヴァンプスが語るブルーノ・マーズやブライアン・メイとの関係と新作

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ラジオDJ、ライナー執筆など幅広く活躍されている今泉圭姫子さんの連載「今泉圭姫子のThrow Back to the Future」の第38回。今回は今年10月に最新アルバム『Cherry Blossom』を発売することを発表したザ・ヴァンプス(The Vamps)。彼らをデビューの頃からインタビューしてきた今泉さんに、新曲とともに彼らの過去の発言や楽曲について振り返っていただきました

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2020年、ザ・ヴァンプスが動き出します。昨年「サマーソニック2019」のために来日してから1年、7月31日にシングル「Married In Vegas」をリリースし、10月にはアルバム『Cherry Blossom』の発表が控えています。アルバムの全貌は、今のところ明かされていませんが、シングルを聴く限り、常に新しいことへのチャレンジを惜しまないザ・ヴァンプスのニュー・チャプターを感じさせるサウンドに胸が躍ります。来日時には富士山を見に箱根に行ったり、日本の美しい場所に敬意を表してくれるイギリスの若者4人が、アルバム・タイトルに『Cherry Blossom』とつけたのは、もしかしたら日本を思ってくれてのことか、と勝手に想像しています。

ザ・ヴァンプスは、2013年「Can We Dance」(全英最高位2位)でデビューしました。バステッド、マクフライを世に送り出したマネージャーの手によって、次世代のポップ・ロック・バンドとして誕生し、マクフライのアリーナ・ツアーのサポートを務め、華々しいスタートを切ったのです。また彼らは、デビュー当時から多くのアーティストたちの応援を受け、恵まれたデビューとなりました。マクフライのトム・フレッチャー、ダニー・ジョーンズ、ダギー・ポインターとの共作「High Hopes」や、バステッドのジェイムズ・ボーンとの共作「On The Floor」がファースト・アルバム『Meet The Vamps』に収録された他、「Can We Dance」のソングライターの一人には、ブルーノ・マーズの名前がありました。

「子供の時に初めて聞いた音楽が、バステッドやマクフライだった。音楽に夢中になるきっかけとなったバンド。彼らはソングライターとしても、ライヴ・バンドとしても素晴らしい。何より長く続けていることが凄いことだよね」と、2013年初来日時のインタビューで、ジェイムズ・マクヴェイはこう答えていました。

帰国後はバステッドとマクフライの合体マクバステッドのハイド・パーク・コンサートでのオープニングも務めることになり、50,000人の前で演奏することを楽しみにしていました。

「ブルーノ・マーズとは、同じレコーディング・スタジオで、ちょうど僕たちの前に作業をしていたんだ。プロデューサーの計らいで、ブルーノがサビの“Can We Dance♫”というフレーズをデモで歌ってくれている曲をもらった。それを僕たちが仕上げていったんだ。僕たちにとって初めてのセッションで、信じられないことが起きたって感じ。たくさんのことを学んだし、自分たちもより良いソングライターになろうと思った。ブルーノが歌っているデモを聴いた時、頑張ろうっていう気持ちになったんだ」とブラッド・シンプソン。

ザ・ヴァンプスは、まさに今の時代を象徴するSNSから生まれたバンドです。16歳のジェイムズが、バンドを作って自分の思いを歌に託したいという目標を掲げ、YouTubeにアップされていたブラッドの歌声と演奏に目が止まり、直接連絡をしたことから始まっています。2011年でした。

「音楽を一緒にやろうと声をかけて、2人で曲作りを始めたんだ。最初に作った曲が“Rough Night”って曲。とにかくすぐに意気投合したんだ。もちろん最初の頃は、学校の友達以外の友達と一緒に曲を作って、楽しい時間を過ごすと言う放課後のような時間だったけどね」とジェイムズ。

「アルバムには収録できなかったけど“Rough Night”はすごく気に入っているんだ。いつか発表したい。特別な思いがある曲だからね。お互いが最初に会った日に書いた曲だから」とブラッド。

その後YouTubeでトリスタン・エヴァンズがドラムを叩く動画を見て彼にも声をかけ、その数ヶ月後に同じくYouTubeでコナー・ボールの動画を見て連絡をとって、ザ・ヴァンプスは誕生しました。音楽だけでなく、スケボーをやったりと趣味も一緒だったことから、4人は昔の幼なじみかのように心をオープンにし、音楽を通じて4人のスタイルを見つけていくことになったのです。

2013年、YouTubeに「Wild Heart」を公開し、1ヶ月後にデビュー・シングル「Can We Dance」をリリース。2014年、デビュー・アルバム『Meet The Vamps』が、全英チャート最高位2位に輝き、世界に向けて一気に飛び出しました。彼らが登場した2013年の音楽シーンは、ワンダイレクション、テイラー・スウィフトなど、自分たちの音楽を自分流で表現している若手アーティストが中心となっていました。イギリスから生まれた彼らも、そんな波に乗り、一気にシーンを駆け上ったのです。

初来日は2014年、ミニ・コンサートを開催しました。2015年は、Zepp Tokyoで初のフル・コンサートを行いました。この時は、ジェイムズが手の手術後のため、ギターを手にすることができず、ヴォーカルと盛り上げ役でステージで暴れていたのが印象的でした。そして、セカンド・アルバムの制作前でしたが、イギリスではアリーナ・ショウを完売にするまでのバンドに成長し、デミ・ロバート、ブレイク前のショーン・メンデスをフィーチャーしたリミックスをリリースしたりと、次から次へとチャレンジの手を止めることはありませんでした。

この時のインタビューで面白い話が聞けました。トリスタンの家族がクイーンのブライアン・メイの家族と繋がりがあり、トリスタンがデビューしたということで、ブライアンからサイン入りのブライアンモデルの限定ギターが届けられたということです。ジェイムズはブライアン・メイが憧れのアーティストでしたので、かなり羨ましかったようです。そのギターの音は「Wild Heart」「Dangerous」「Somebody To You」で聴けます。「ジェイムズやブラッドほど上手くはないけれど、僕が弾いているんだ」とトリスタン。

セカンド・アルバム『Wake Up』(全英最高位10位)は、2015年に発売になりました。2016年2月には国際フォーラムホールAで来日公演が行われています。残念ながらコナーは怪我のため不参加でした。新作では、デビュー時のキラキラなポップ・ロックから、現在のザ・ヴァンプスの成功の足掛かりとなったサウンドが生まれ、新しい方向性を見出した作品でした。

以前からブラッドは、友人の影響でハウス・ミュージックもよく聴くと言っていましたが、ロックとクラブ・ミュージックの融合となるサウンドは、新しいザ・ヴァンプスの扉を開くことになりました。

「自分たちらしさを失わないことは必要だけど、ファーストが成功したからといって、同じようなことをやろうとは思わなかった。1年間かけて曲作りをしたんだけど、自分たちらしく、それでいて新しいものを取り入れて、納得いくアルバムを作りたかったんだ」とジェイムズが語っています。その代表曲となる「Volcano」ではラップを取り入れています。「ベースはアーバンだけど、プロデューサーのスティーヴ・マックと新しい挑戦となる取り組みをした曲なんだ」とブラッドが語っています。

また『Wake Up』は、80年代にもインスピレーションを受けたアルバムとのこと。「テイラーもThe 1975のファーストもかなり80sの影響を受けていたよね。ポリスのギター・サウンドはかなり刺激になった。80年代ではないんだけど、映画『ドライヴ』(2011年公開映画)のサントラに入っているカヴィンスキーの曲は、僕たちが目指すところだった。つまり80sのシンセ・サウンドを取り入れながら、自分たちならではの元気サウンドにしていく」と。この方向性が、次作で初の全英ナンバーワンに輝いたアルバム『Night & Day』につながっていくのです。

2017年、ザ・ヴァンプスは、3枚目にあたる『Night & Day』のNightヴァージョンをリリースします。3枚目にして初の1位に輝いたことについてトリスタンは「徐々に積み上げてきた結果がナンバーワンにつながったと思う。デビューしてすぐにトップになって、段々萎んでいくよりも、手応えを感じながら、一歩一歩階段を登れたことが嬉しいし、何よりもこのアルバムは僕たちが誇りを持って作ったアルバムだから、どのアルバムよりも“Night & Day”が1位になれたことが嬉しいんだ」と語っています。

この年の来日公演は、自信に溢れた彼らの姿がとても誇らしく思えるステージでした。ようやく4人が揃ったフルコンサートを見ることができたというのもあるかもしれませんが…。気になったのは、コンサートが始まる前のBGM。70年代の曲が中心となっていました。

「ペットのハムスターのジョー・オニールがどの曲に反応するかを試して、ジョーの動きが激しかった曲をBGMにしたんだ」(たぶん冗談)と!ジョー・オニールはかなりシン・リジィがお気に入りなのね、と攻め返すと「そうなんだ、シン・リジィの曲になるとずっと走り続けているんだ」と。このやりとりのおかげでコナーは、インタビュー中ずっと笑いが止まらなく、涙まで流していました。ツボにハマってしまったのですね。若い…。アルバムの話は真面目に答えてくれました。

「まず“All Night”が完成して、それによってアルバムの方向性が決まったんだ。これまでEDMを取り入れたことも、“It’s A Lie”のようにラテン・フレーバーを入れることも、チャレンジというよりは、面白いからやってるだけなんだ」とブラッド。

そして2018年には『Night & Day』のDayヴァージョンをリリース(全英最高位2位)。マシンガン・ケリーをフィーチャーした「Too Good To Be True」などもあり、またまた面白いことを実現させています。

「これも自然な成り行きで生まれたコラボレーションなんだ。というかハプニング。リミックスを頼んだプロデューサーの作業の流れの中で、マシンガン・ケリーが入ることになって。いつかライヴで一緒に出来たらいいなと思う。」と、2019年のサマーソニック出演のために来日した時に話をしてくれました。

デビューしてから6年、メンバーそれぞれの成長を聞くと「髪型が変わった(笑)。背が伸びた人もいれば、変わらない人もいる。でも、自分たちの元気でハッピーなところはいつまでも持ち続けていたい。思えば、コナーがバンドに加入した時は15、6歳で、そんな彼を引き込んで、学校も辞めることになったのだから、バンドに対しては真面目に向き合ってきたつもり。大人になっていく過程を、このバンドを通して体験してきたわけだから、当然のように成長してきたと思うよ」とトリスタン。

そしてまた、新しい試みの一つとして、ザ・ヴァンプスは自分たちのレーベルを立ち上げました。ニュー・ホープ・クラブは、彼らが見つけ、レーベル契約した最初のバンドです。社長は誰なの?と聞くと、「ブラッドさ」とみんな。「経理や広報だっているよ」と楽しそうに話していました。これからもザ・ヴァンプスとしての音楽活動を続けながら、いろいろなアーティストと契約していきたいとのことです。全員10代だったデビュー時から7年が経ち、今年はEP『Missing You』を配信し、いよいよ5枚目のフル・アルバム発売となります。婚約したメンバーもいれば、ようやくロンドンに引っ越したメンバーもいたり、30代を前に、20代だからこそできるザ・ヴァンプスとしての新たな冒険物語を、メンバー自身が誰よりも楽しみにしているのでしょう。

Written by 今泉圭姫子