TOTOは演奏だけじゃない、その “いたずら” も超絶テクニック! 1980年 3月8日 TOTOの初来日公演が渋谷公会堂で開催された日

超絶技巧に感動! TOTOの初来日公演

TOTOを初めて観たのは1980年3月、初来日での東京初演。この時私はCBSソニー洋楽の宣伝マン。渋谷公会堂で体験した彼らのパフォーマンスの凄さに驚いたものでした。最近、この形容詞にも慣れっこになってますが、まさに人生初めて体験した “超絶技巧” に感動したライブでした。

この来日時点では1枚目の『宇宙の騎士(TOTO)』と『ハイドラ』、2枚のアルバムがリリースされていました。デビュー時こそ、我々も「ボズ・スキャッグスのバックバンドです」とか「スタジオミュージッシャンの集まりですから、演奏はとんでもなく上手いです」的な表現をしていましたが、その演奏レベルの高さは当然としても、収録された楽曲のクオリティで、アルバム2枚目にして確固たる人気と評価を得ていました。

全員が “いたずら” 大好き、そのリーダーはスティーブ・ルカサー

そういうテクニシャン揃いのミュージシャン集団ですが、ステージ降りると “陽気なカリフォルニアの若者達” でした。彼らは来日回数も多く、私も制作担当として来日公演時には取材などの機会を含めアテンドしていました。時系列的には前後するかもしれませんが、見聞きした彼らの素顔と “いたずら” の超絶テクニックを紹介します。

東京だとバンドメンバー全員が集まって呑む機会はありませんが、地方公演での移動日などは、メンバーだけでなくスタッフも揃ってホテル近くの居酒屋で盛り上がります。小料理屋の座敷は個室なので、彼らも意外とお気に入りで、みんなテンション高く酒を呑むし、喋るし、楽しい会食です。酒が回ってくると、その騒々しさはもうカオスです。たとえば、こぼした酒でタタミを濡らすと座布団で拭き、びしょびしょになると何枚も重ねて隠します。しまいには干物をなげ合ったり、ひどい外人達です。もちろん襖もやぶれます。その様は、まるで修学旅行の子供状態です。

そもそもメンバーだけでなく、スタッフもマネージャーも全員が “いたずら” 好きな連中で、そのやりかたが傑作です。居酒屋でのご乱交の後なんか、ホテルの部屋に戻って酔いつぶれている仲間がいると、こっそりとベッドごと廊下に運んで部屋をロック。寝てる仲間を起こして逃げるように立ち去り、陰に隠れて様子を伺ってます。もう見ているだけで笑っちゃいます。

大体の “いたずら” は、スティーブ・ルカサーがリーダーとなってます。たとえば、夜、メンバーやスタッフの部屋のドアを数人でノックします。ドアを開けて顔出すと、この瞬間を狙って廊下に引きずり出し、ドアを閉めて立ち去っていきます。こんなんばっかりです。シャワーを浴びていたとして、何度も呼び鈴を鳴らされ、何事かと思いバスタオル腰に巻いてドアを開けたら最悪です。マネージャーなどは国際電話の最中にこれをやられて部屋に戻れず、通話料だけが虚しくかさんでバカ高い通話料を払わされたこともあります。

なんと、フジテレビ「夜のヒットスタジオ」の楽屋で!

TOTOは、来日したときにフジテレビの番組に出演したこともあります。『夜のヒットスタジオ』だったはずです。外国人ゲストの場合は、楽屋として特別応接室が準備されます。ちなみに、日本のTV番組では待ち時間が非常に長いので、我々レコード会社スタッフは、この長い時間でも彼らに、いかに退屈しないで過ごしてもらうか、頭を悩ませること多々ありました。わずか4~5分の出演のために4~5時間も前にスタジオに入り、リハを一度やったらひたすら出番を待つ… 彼等からしてみれば信じられないことです。

こういう状況は我々も色々経験していて、TV局での時間の過ごし方は、ラジオ番組用のコメントをとったり、サインを書いてもらったり、社内スタッフだけで対応できる色々な作業をやらせることが多かったです(トラブルなんて当たり前、洋楽アーティストの来日と歌番組ブッキングの裏事情!参照)。

そんな特別応接室での出来事です。いわゆる “特応” と言いますが、ここにはA、Bの2部屋あり、我々が入った時、たまたま隣の部屋に動物大好きで有名な先生が、ある番組収録のためにいらしてました。

そしてこちらTOTOの連中、コメント録りも終わり、リハも終わり、やることもなくなって、後は本番までヒマでヒマで、バンドメンバーもウロウロし始めます。隣の特応の主は収録でスタジオに入り不在。メンバーの誰だったかは忘れましたが、隣の部屋のドアが開いてることに気付き、覗いてみると中には誰もいない。好奇心旺盛な彼らです。他のメンバーも続き、こちらも心配で一緒に付いていきます。

そのゲストの文化人の先生、テーブルの上に高級な一眼レフのカメラを置きっぱなしです。我々から見ても不用心ですが、彼らからしたら信じられないくらいのもの。「盗まれちゃうよ~、知らないよ~」とか言いながら、連中、目で合図。何をするか阿吽の呼吸で分かっているんですね。一人がおもむろに自分のズボン下ろします。そしてパンツまでずらしてお尻丸出し。これを仲間がカメラを使って撮り始めました。お尻だけでなく股間を撮ったり、さらにマネージャーまで一緒になってお尻を撮らせていました。10カットくらい撮って何事もなかったように、元のテーブルに戻したのです。

いやぁ、 “いたずら” のバリエーションを沢山持ってますね。TOTOは、そういう陽気な連中なんです。

カタリベ: 喜久野俊和

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