時価総額はトヨタの2倍!コロナ禍で80%増益、注目の台湾ハイテク企業TSMCの強さとは

新型コロナウィルスの感染拡大は、世界的に依然として終息する兆しが出ていません。その中で好調さが目立っているのがハイテクの分野です。

特に、ハイテク関連の企業を多く抱え、“ザ・ハイテク”とも称される台湾では、経済、株式の好調さが際立っています。直近の新型コロナ禍のなかで高値を更新しているのは、台湾加権指数と米国ナスダック総合指数です。いずれも世界的に有数なハイテク関連市場であることから、おおむねハイテク市況の強さを反映した相場といえます。


台湾株式市場のけん引役となっている半導体メーカー「TSMC」

好調な台湾株式市場の中でけん引役となっているのが、台湾随一の半導体ファウンドリー企業(受注製造に特化した企業)である台湾積体電路製造TSMCです。

世界的には名が通っている企業ではありませんが、同社の株式時価総額は日本円で約39兆円(7月31時点)と、台湾市場最大の企業です。日本で時価総額が最も大きいのは言わずとしれたトヨタ自動車ですが、その時価総額は約20兆円強で、TSMCはトヨタ自動車の約2倍の時価総額を誇ります。

実際、同社の主要顧客には、世界的なIT・半導体関連企業であるアップル、クアルコム、エヌビディアなど、そうそうたる企業群が名を連ねます。技術力の高さや対応力の速さなどの面で、TSMCが高く評価されている証明といえるでしょう。

今や「TSMC抜きでは世界のサプライチェーンは機能しない」といっても過言ではありません。

コロナ禍でも満点の決算

7月16日、TSMCは2020年4-6月期の決算を発表しました。世界的にみれば、かなりひどい決算内容や決算見通しを示している企業が目立ちますが、同社の決算内容は前年同期比28.9%増収、同81%増益と大幅増収増益でした。新型コロナ問題禍のなかで、満点の決算内容であったといえます。

また、これまで同社の主要顧客のひとつが、中国のファーウェイでした。しかし、米国がファーウェイに対する制裁を表明したため、同社は5月15日以降ファーウェイに対する半導体製造サービスの提供を禁止されることになりました。

今後、この規制が解除される可能性は低く、ファーウェイからの新たな受注は望めません。しかし、この減収分は他企業からの需要で補われており、全体の収益にはほとんど影響を与えていないと思われます。

自転車のジャイアントも堅調

ハイテク企業が大半を占めている台湾株式市場のなかで、ハイテク企業のほかにも堅調な値動きとなっている企業があります。自動車の世界大手企業であるジャイアント(巨大機械)です。

世界的にコロナ問題が長期化しているなかで、リスク回避のために自転車通勤を選ぶ人が増えており、自転車に対する需要を押し上げています。コロナ問題が生んだ意外な副産物です。

コロナ封じ込めに成功した台湾

また、経済の方でも台湾に対する評価が高まりつつあります。7月30日に発表された台湾の2020年4-6月期実質GDP成長率は、年同期比マイナス0.73%でした。17四半期ぶりのマイナス成長とはいえ、米国、欧州など、直近相次いで発表された他国の状況と比べれば、落ち込みはかなり軽微にとどまっています。

このGDPの落ち込みの小ささは、コロナ対応をそのまま反映しているといえます。実際、台湾のコロナ感染者数は467人にとどまっており、4月13日以降は、新たな感染者は確認されていません。

他の国がコロナ問題に苦しめられている中で、台湾は早期封じ込めに成功している代表国のひとつといえるでしょう。この度の迅速で適切なコロナ対応をみて、国民から政府に対する信頼度が増しています。加えて、海外の国々からから台湾を見直す動きが強まってきました。

台湾経済において、GDPの約半分を占めているのは民間消費ですが、足元の消費についても最悪期を脱しつつあります。消費刺激策として7月15日からクーポン券「三倍券」の利用が開始されました。飲食業の活性化、GDPの押し上げ効果が期待できそうです。今後の台湾経済の行方が注目されます。

<文:市場情報部 副部長 明松真一郎>

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