<隠れた名盤>寺本圭佑『ひとりにしない』カラオケ好きなら是非チェック

 1976年生まれ奈良県出身の男性歌手。2010年に歌手デビューを果たし、本作は2019年に発表したシングルのカップリングを変更したスペシャル盤。カラオケ好きならば是非チェックすべき作品だろう。

 表題曲は、相手への労わりに満ちたミディアム調の歌謡曲。小田純平作曲のメロディーが憶えやすく、また寺本の高音は小林旭のように素朴かつ繊細で聴き心地が良い。本作では、ギター演奏だけのバージョンも収録されており、温かな歌声や音程の確かさがよく分かるので、カラオケ練習にも最適だ。

 カップリングには、1996年の五木ひろしのヒット曲『女の酒場』と、1949年に伊藤久男が歌った『イヨマンテの夜』のカバーも収録。『女の酒場』は、永井龍雲作詞・作曲のフォーク歌謡で、「逢いたいよ 逢いたいよ」の感情のこめ方に哀愁や優しさがにじみ出ている。対して『イヨマンテの夜』は、一変して出だしの「アーホイヨー」からテノール歌手のように豪快で濃厚な歌声を聴かせる。スナックで酔っぱらいながら気軽に歌えそうな表題曲に飽き足らない人は、是非こちらをオススメしたい。

 タイプの異なる3曲をどれも完璧に歌いこなす点が見事で、今後はポップス系の華やかな作品にも果敢に挑んでもらいたいほどだ。本作を聴けば、周りの人たちの人間くささにより敏感になれるはず。

(ユニバーサルミュージック・スペシャルパッケージ1364円+税)=臼井孝

© 一般社団法人共同通信社