社説[最低生計費調査]最賃引き上げに生かせ

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 1人暮らしの若者(25歳男性)が、那覇市内で普通に暮らすために必要な生活費は月額24万6316円で、東京都北区とほぼ同じ-。

 県労働組合総連合(県労連)が沖縄で初めて実施した「最低生計費試算調査」でこんな結果が出た。

 非正規を含めた全ての労働者に適用される賃金の下限額である「最低賃金」が沖縄県は、14県と並び全国最低の790円だ。

 週5日、1日8時間フルタイムで働いても月14万円に満たず、調査で分かった最低生計費の24万円と月10万円以上の開きが出ることになる。

 調査通りなら、現状の最低賃金では「普通の暮らし」の維持は難しいということだ。

 調査結果は地域間格差の問題も明らかにした。

 東京都北区の最低生計費は沖縄とほぼ同額の24万9642円。家賃は沖縄が約3万6千円、東京は約5万7千円で約2万円の開きがあった。交通費は沖縄が約3万3千円で、東京は約1万2千円。公共交通機関が限られる沖縄では車が必需品で維持費がかさみ、家賃と相殺された形だ。

 生活費は同じだが、東京都の最低賃金は全国最高の1013円で、沖縄県とは月4万円近い差が出る。

 同様の調査は全国20都道府県で行われており、最低生計費はどこもほぼ同じ水準だった。

 生計費から算出した月に必要な賃金は時給1600円を上回る。

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 国の中央最低賃金審議会は「現行水準の維持が適当」として、本年度の最低賃金の引き上げ額の目安提示を見送った。事実上の据え置きだ。

 国は非正規労働者らの待遇改善のため、最低賃金を2016年度から4年連続で3%程度引き上げてきた。

 だが、今年は、新型コロナウイルス感染拡大による企業業績の悪化を受け、安倍晋三首相が、企業の厳しい状況を考慮するよう要望し、中央審議会の結論に影響した形だ。

 コロナ禍では、収入の低い非正規労働者が生活苦に陥っているケースが目立つ。国は、コロナ禍だからこそ、最低賃金引き上げの流れを維持すべきだった。

 体力の弱い中小、零細企業の支援はそれとは別にやるべきことだ。日本の労働生産性は先進7カ国(G7)で最下位。コロナ禍、生産性向上はますます重要な課題で、国には企業が取り組める支援策を講じる必要がある。

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 沖縄地方最低賃金審議会で、県の最低賃金額を決める議論が始まっている。近く、改定額が確定する見通しだ。

 全国一深刻な沖縄の「子どもの貧困」は「親の貧困」であり、その要因は賃金の低さにある。目安のあるなしにかかわらず、沖縄の実情を踏まえた議論を深め、額を決定してほしい。

 調査が想定したのはワンルームのアパートに住み、中古の軽自動車を所有し、月に2~3回、友人らとランチや飲み会に行く「普通の暮らし」。誰もが普通に働けば、その水準の生活ができる最低賃金の保障が必要だ。