社説:元徴用工訴訟 首脳対話で解決策探れ

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 韓国最高裁が日本製鉄(旧新日鉄住金)に賠償を命じた元徴用工訴訟で、原告が差し押さえた同社資産について韓国の裁判所が売却命令をすることが可能になった。

 韓国内の司法手続きが4日に完了したためで、今後、売却に向けて資産評価などが進められる。

 実際に資産が現金化され、原告に支払われるまでには数カ月以上かかる見通しだが、日本企業に実害が発生すれば日韓の対立が深刻化するのは必至だ。両国政府は関係悪化を避ける努力を続けなければならない。

 韓国最高裁は2018年10月、元徴用工の原告4人の訴えを認めて日本製鉄に損害賠償の支払いを命じた。原告の申請を受けた韓国の裁判所が、支払いを拒んだ同社の韓国内資産を差し押さえた。

 日本政府は、韓国人の個人請求権問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場だ。資産の現金化は日韓関係の基本枠組みを否定するものといえる。

 政府は資産売却阻止に向け、査証(ビザ)発給条件の厳格化や駐韓大使の一時帰国のほか、韓国製品への追加関税、送金規制などの報復措置を検討しているという。

 ただ、「被害者中心主義」を掲げる韓国の文在寅政権は司法判断を尊重する姿勢を崩していない。韓国側も日本の報復措置に対抗する構えを見せており、いっそう出口が見えづらくなりそうだ。

 元徴用工訴訟を巡っては、昨年5月に日本政府が日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の開催を求めたが、韓国は応じなかった。12月には当時の韓国国会議長が寄付金を元徴用工らに支給する法案を提出したが、韓国内で支持を集められず廃案になった。

 文氏の支持層に対日強硬策を求める意見が多いためとみられるが、韓国も2005年に元徴用工問題は解決済みと確認した経緯がある。日韓双方が原則論に固執していては、事態は打開できないのではないか。

 日韓両首脳は昨年12月に約1年3カ月ぶりに会談した。元徴用工問題では主張が平行線をたどったが、朝鮮半島情勢で緊密な連携を確認するなど、歩み寄りへの地ならしもみられた。政治が国民の間の溝を深めていることを認識し、首脳同士が対話を重ねる必要がある。会談を早期に行うべきだ。

 米中対立が激化し、東アジア情勢は不安定化している。日韓が協力して対処すべき課題は数多くある。元徴用工問題の解決を長引かせてはならない。