大林監督が話した体験、言葉の重さ感じて

映画「海辺の映画館」出演の俳優山崎紘菜さん #8月のメッセージ

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 俳優の山崎紘菜さん(26)は、大林宣彦監督の遺作となった映画「海辺の映画館 キネマの玉手箱」(公開中)で、広島への原爆投下で犠牲になった移動劇団「桜隊」の隊員を演じた。大林監督の「戦争3部作」にも出演した山崎さんは「役者の言葉には影響力があり、お芝居を通して伝えていかなければいけないことがあります」と語る。山崎さんのメッセージとは。(共同通信=徳永太郎)

山崎紘菜さん

 ―これまでに戦争や平和について考える機会は。

 戦争については小中学校で学んだこともあり、知識はありましたが、初めて体感したのは高校の修学旅行でした。沖縄で壕(ごう)に避難した人の話を聞き、壕に入る体験もしました。戦争はどこか自分と距離があるものだと思っていたが、リアルに感じました。

 実際に起きた「ノンフィクション」で、巻き込まれた人がたくさんいます。「自分の家族だったら」「好きな人だったら」と考えるきっかけになりました。自分で見て、触れることが一番学びになると思いました。映画はすごく良い媒体だと思います。自分に置き換え、どう動くかを考えることができるからです。

 ―大林宣彦監督(4月に82歳で死去)が非戦と平和をテーマにした映画「戦争3部作」全てに出演している。遺作となった「海辺の映画館 キネマの玉手箱」で4作目となるが、戦争に対する考え方は変わったか。

大林宣彦監督(2017年8月撮影)  

 大林監督の作品にはメッセージが含まれていて、時代に生きている方を描くことが多いと思います。私もその感情を想像して演じないといけないので、覚悟が要ります。大林監督自身が体験したことを話してくれることもありました。言葉が一つ一つ重いと感じました。

 ―今回の作品では、広島への原爆投下で犠牲となった移動劇団「桜隊」の隊員を演じた。

 もともと桜隊のことを知らなくて、桜隊を描いた映画や本で学びました。原爆が落ちた日に彼女の人生は終わりました。後から見ると「かわいそう」と思ってしまいますが、その日は彼女の人生の1日にすぎず、一生懸命生きていたことを伝えたいと思って演じました。

 ―広島や長崎で原爆にゆかりのあるものを見たことは。

 撮影時、原爆ドームを見に行きたいと思っていました。でも、被爆して苦しんでいる描写を演じるだけでも心が痛く、苦しくなりました。自分がのみ込まれてしまいそうで怖くなり、行く勇気が出ませんでした。いつかは絶対に行かないと、と思っています。

 ―原爆投下から今年で75年だが、今も核兵器はなくなっていない。

 全てのことをちゃんと把握しているわけではなく、学んでいる途中なので、まだ自分から強いメッセージは発信できません。ただ、作品の中で「好きな人を慈しむように他人を愛しなさい」という桜隊隊長のせりふがあります。今も戦争の傷痕に苦しんでいる人はたくさんいて、新型コロナウイルスをはじめとした社会問題もあります。一人一人が、自分に関わる人たちに愛する人のように接すれば、きっと世界は平和になるし、大林監督が望んでいるような世界になるのではないかと思います。

 ―戦争を経験した世代の方々が少なくなっている。こうした戦争をテーマとした作品でどう演じようと考えているか。

 今回の桜隊を含め、簡単に命が奪われてしまうことがあってはならないと思います。私たちはそういうことをしてしまった歴史を持っているので、絶対に繰り返してはならないという気持ちがあります。私たち役者の言葉には影響力があり、だからこそ発信しなければいけないメッセージや、お芝居を通して伝えていかなければいけないことがあります。この仕事をしていたら義務でもあると思います。

 ―桜隊は戦争のさなかでも芝居をしていた。

 一連のコロナ騒動で、演劇というものが危機にひんしている状況で、私自身も数カ月考えました。戦争の厳しい時代でも消えずに受け継がれていったもので、絶対にこれからも消えないと思いました。

 ―今作を通して、見ている人に戦争や原爆について伝えたいことは。

 大林監督の作品は、反戦のメッセージが強いと形容されがちですが、テーマがどんなに厳しくても、私は愛情をすごく感じます。「反戦映画」とされたら、原爆ドームに足を運べなかった私のようにおじけづいてしまう方もいっぱいいると思います。反戦映画という捉え方ではなく、大林監督のメッセージを受け取りに来てほしいと思います。どんな状況でも人はたくましく強く生きていく生き物なので、今、過酷な状況で苦しんでいる方も、登場人物たちからパワーをもらいに来てほしいと感じます。そして、戦争というものがどういうものだったか、どう生きていけばいいか、自分で考えるきっかけにしてほしいなと思います。

   ×   ×

山崎紘菜さん

 やまざき・ひろな 1994年、千葉市生まれ。大林監督の「この空の花 長岡花火物語」(2012年)、「野のなななのか」(14年)、「花筐(はながたみ) HANAGATAMI」(17年)の「戦争3部作」の全てに出演した。筋金入りのラグビーファンとしても知られ、昨年のワールドカップ(W杯)日本大会では、開催都市特別サポーターを務めた。