代打の切り札から首位打者へ DeNA4番佐野を支えるラミレス監督との“共同作業”

DeNAのアレックス・ラミレス監督(左)と佐野恵太【写真:荒川祐史】

「キャプテンとはどうあるべきかをアドバイスしている」

■DeNA 8-2 中日(5日・横浜)

DeNAの佐野恵太内野手が5日、今季打率.353としリーグトップに躍り出た。この日、本拠地・横浜スタジアムで行われた中日戦で、バックスクリーン左の中堅席に叩き込む6号ソロを含め、4打数3安打3打点1四球の固め打ち。昨年まで主に代打として活躍していた佐野を、今季からメジャーリーグに移籍した筒香に代わる新主将&4番に指名したアレックス・ラミレス監督は、してやったりだ。

プロ4年目の25歳。昨年はスタメンも45試合に上ったが、特に存在感が光ったのはやはり代打で、32打数11安打、打率.344、2本塁打、17打点の勝負強さを誇った。

それが今季は5日現在、全40試合で4番スタメン。新主将の重責まで背負わせているラミレス監督は「打率トップに立っていることまでは想像していなかったが、彼が持っているものからすれば、驚くほどではない」と事も無げだが、ファンにとっては望外の喜びではないだろうか。

「地位は人を作る」といわれるが、ラミレス監督は佐野に地位を与えただけではない。佐野は「監督には毎日バッティングを教えてもらい、毎日ポジティブな言葉をかけてもらっているおかげで、打てなかった試合の翌日も、精神面で試合に挑む準備ができる」と感謝しきりだ。

本塁打は「期待しないでくださ~い!」

指揮官は「キャプテンとは、ともすれば孤独になってしまいがちだ。キャプテンに対してモノを言う人はあまりいないからだ。自分が打って結果が出ているうちはいいが、大事なのは調子が悪くなった時。佐野はキャプテンとしてはルーキーだから、そういう時にキャプテンはどうあるべきかをアドバイスしている」と説明する。

もちろん、ラミレス監督の指導は打撃の技術面にも及ぶ。この日の試合前にも、佐野と話し込むシーンがあった。「『最近安定して結果が出ているのは、腕の使い方がすごくいいからだ』という話をした」と明かした。ボールに対して、肘の出方から手首の返しまで理にかなっている。つまり「インサイドアウトがうまくできている」のだという。佐野にしてみれば、自分の好調の要因を理論的に解説してもらうことによって、自信が確信に変わり、好調の持続にもつながるのだろう。

打率は開幕直後から高かったが、本塁打をなかなか打てず、28試合目にようやく今季1号が出た。その後は12試合で5本塁打と量産化しているが、この日のお立ち台で「明日もホームランを期待してよろしいでしょうか?」と聞かれると、「しないでくださ~い!」とおどけた。

ラミレス監督の就任2年目に入団した佐野は、まさに“愛弟子”。シーズンを通してスタメンで出続けた経験がないだけに、これからが正念場と言える。2016年のドラフト9位で、全体87人中84番目の指名だった男の逆転サクセスストーリーは、まだ始まったばかり。師弟の二人三脚が続く。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2