8月7日、ついに東海道新幹線「のぞみ12本ダイヤ」が本領発揮 JR東海の狙いは

2020年3月14日、「のぞみ12本ダイヤ」出発式

2020年3月14日のダイヤ改正を機に「のぞみ12本ダイヤ」が実現した。

といっても朝から晩までひっきりなしに「のぞみ」が走るようになったわけではない。年末年始やGWなどの多客期に、あくまで”1時間に片道最大12本の「のぞみ」を運転できるようになった”という話だ。

JR東海は「のぞみ12本ダイヤ」の実現のためにソフト・ハード両面から取り組みを進めてきた。JR西日本が保有する東海道・山陽直通列車の車両も含め、全ての列車を最高時速285km/時の性能を有するN700Aタイプに統一(もちろん7月にデビューしたばかりのN700SもN700Aと同等以上の性能を誇っている)。車内清掃時間の短縮、東京駅におけるATCブレーキの改良や駅係員の使用する設備の改良、沿線の電力設備改良による出力増強、運行管理システムの改良による扱える運転データ件数増……こうした改善点の積み重ねにより、山手線もかくやと言わんばかりの間隔で新幹線を送り出せるようになった。

資料提供:JR東海

2020年3月14日のダイヤ改正当日には、JR東京駅で「のぞみ12本ダイヤ」の出発式が行われた。JR東海 金子慎代表取締役社長は、式典で次のように述べている。

「(コロナウイルスの影響で)今後の見通しは難しい。ダイヤ改正によって春休みやGWに今までにないような増発をしてたくさんのお客様にご利用いただけるよう期待をしておりました。感染がおさまればまた多くのお客様にご利用いただけるということで、そういう時期が早く来るのを願っています」

そういう時期が来たのだろうか。JR東海は8月7日、「のぞみ12本ダイヤ」を実現以来初めて設定する。6月24日に発表されたJR東海のプレス資料によれば、東海道新幹線の運転本数は8月7日~17日のお盆期間にかけて、一日平均で前年より11本多い431本となる見込みだ。8月16日の運転本数に至っては455本、過去最多となる。

コロナ禍で乗客が減った今、なぜ「のぞみ12本ダイヤ」を?

GW等の大型連休やお盆・年末年始に新幹線に乗ると、指定席号車の通路まで立ち客で溢れていることもままあった。

しかし2020年8月現在、新型コロナウイルスは収束するどころか大都市を中心に再び流行の兆しを見せており、各都道府県で独自の緊急事態宣言が検討されるほどになった。新幹線の座席にも現状では十分な空きがあるように見える。にもかかわらず「のぞみ12本ダイヤ」を実施するのはなぜか?

その理由は下記の動画を見ると分かりやすい。同社が新型コロナウイルス感染症対策として掲げた「五つのお約束」をまとめたものだ。

JR東海広報によれば、のぞみ12本ダイヤの設定は最初の約束「余裕をもった座席提供」の一環として実施するという。運転する列車の本数を増やすことで相対的に利用者同士が密になることを防ぐという理屈は分かりやすいものの、それを成し遂げるために必要なコストを思えば覚悟も伝わろうというものだ。

大都市からの帰省は新型コロナウイルスを持ち帰る恐れもあり、また重症化しやすい高齢者との接触機会も一人旅と比べると多い。出来る限りのSTAY HOMEを……と呼びかけたいところではあるが、仕事上の都合で長距離移動を余儀なくされるケースもある。人によっては大都市での仕事が消滅して実家に身を寄せる他に選択肢がないといったケースも十分に考えられる。

そんな状況でも「新幹線」が徹底して安全に取り組んでくれるのなら、移動時の感染リスクは抑えられる。車内・駅構内ではマスクを着用し、車内での会話を控え、座席を回転して対面での利用も控えて……と普段より制限の多い移動とはなるが、サービス提供者・利用者ともに感染リスクを抑える努力をしつつ安全な移動手段として活用していきたい。

鉄道チャンネル編集部

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