F1技術解説イギリス編:ドラッグ軽減もダウンフォースを大きく犠牲にしたフェラーリのウイング

 2020年これまでの4戦のなかで、最もパワーサーキットの性格が強いシルバーストンサーキット。高速コーナーを安定して駆け抜けるのに必要なダウンフォースを確保しつつ、いかにストレートでのドラッグを減らすか。その両立を目指して、ほぼすべてのチームが、イギリスGPに新たな空力アップデートを投入した。はたして正解したのは、どのチームだったのだろう。

 レッドブルとマクラーレンは、リヤウイングのプレート下側に形状変更を加えてきた。両端を持ち上げることで(黄線参照)、ドラッグ軽減を図る工夫だ。一方でダウンフォースを発生させる役割の、中央部の湾曲は維持している。

2020年F1第4戦イギリスGP レッドブルRB16(上)とマクラーレンMCL35のリヤウイング

 序盤3戦のフェラーリは、非力なパワーの割りにリヤウイングを付けすぎていることが指摘されてきた。それが今回のイギリスGPではようやく、かなり薄いリヤウイングに変更した。これで確かに、ドラッグは大幅に軽減する。しかし同時に、ダウンフォースも相当減ってしまい、コーナリング中の安定性が犠牲になったはずである。

2020年F1第4戦イギリスGP フェラーリSF1000のリヤウイング(上からオーストリア、ハンガリー、イギリス)

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