一人のデザイナーが始めた本屋さん。世界中のクィアな本をお探しなら、「ロンリネスブックス」へようこそ!

アジアをはじめ世界で活発に作られているクィアなZINE(個人制作の本)や本、グッズを集めるブックストア&ライブラリィ『loneliness books』。
ここには、セクシュアリティやジェンダー、フェミニズム、セックスワークなど、強くたくましく美しくもある作品たちが取り揃えられ、作り手が発信する「声」を届けてくれている。

元々デザイナーである店主がソウルで開催されたプライドパレードへ行ったのがお店を始めるきっかけに。会場にはものすごい数の出版物やアパレル、グッズなどのブースが出店し、並べられている作品を手に取ると言葉は分からずとも通ずる、強いメッセージと、美しい表現があったと言います。
日本では感じたことがない感性ーー。それに衝撃を受けた店主は「これを日本でも広めたい」という強い思いから、東アジアを中心に出版物を集め、購入や読書できるブースを2019年の東京レインボープライドに出店。その後、ウェブサイトで数多くの伝えるべくクィアな写真集や漫画、エッセイ、詩集など、ジャンル関係なく取り揃えるようになったそうだ。

国内でもLGBTに対する関心が高まる昨今、ぜひ当事者だけでなくアライの方々、強いては様々なカルチャーに興味のある方を含め、店主オススメの書籍をいくつかご紹介。ぜひ、いろんな生き方・人々の声に耳を傾けてみてはいかがだろうか?

DUIRO
毎号ひとつのイシューを取り上げ、これまでに「軍隊」「同性婚」「ルームメイト」の3号が制作されてきました。ファッションが社会や政治的スローガンになる時代を象徴する韓国・ソウル発のクィアマガジンです。
雑誌名の『DUIRO』は韓国語で後ろを意味していて、一見ネガティブなようで、そこはクィアな雑誌、「後ろから突かれたら、前へ進もう」という前向きなメッセージが込められています。日本のアーティストやカップルへのインタビューなども収録されており、これまでになかったスタイリッシュで美しいビジュアルと共に、一歩先の世界を見せてくれる、東アジアの灯台のようなクィアマガジンです。

NEON MILK
ソウルのゲイタウン、梨泰院を中心にクィアなパーティシーンを牽引するドラァグパフォーマー集団『NEON MILK』が制作した雑誌。ソウルのクィアなナイトシーンにフィーチャーし、ナイトクラブに集まる人々や、ドラァグクイーンへのインタビューなどを収録しています。ドラァグカルチャーをもっと多様にしていきたいというビジョンを持っていて、ショーはもちろん、雑誌、YouTube、展覧会、ワークショップ、アパレルやグッズの制作など様々な手法で発信しています。

キミのセナカ
店主が今注目しているのが、韓国で出版された『キミのセナカ』という漫画。日本の漫画家で長年ゲイ雑誌バディで『下宿のお兄さん』を連載していた、野原くろさんの作品。LGBTsと彼らを取り巻く人たちの些細な日常と繊細な心情を描く作風が「カミングアウトをテーマにして、セクシュアルマイノリティを応援する本を作りたい」という韓国の独立出版社6699pressの目に留まり、依頼を受けて制作されたもの。
現在『キミのセナカ』は台湾でも出版され、フランスでは電子書籍を配信、秋には書籍化を予定。国内でも世界のLGBTをテーマにした本を翻訳出版するサウザンブックスPRIDE叢書の企画と連動し、書籍化を目指すクラウドファンディングが8月17日(月)まで実施中。幸せな未来を思い描くための「勇気」が詰まった作品に支援をしてみるのもアリですね。

国が違うことで、文化も言語も法律も違います。ただ、そこに生まれてくる人間性や個性、セクシュアリティは誰にも縛られてはいけないもの。今よりずっと前から、マイノリティはあらゆる手段を使って自身を主張し発信し続けてきました。そして、現在マイノリティに対する意識は少しずつ変わりはじめています。
私たちがどのようにメッセージを送り続けているのか。他国ではどのような方法でメッセージを送っているのか。一冊の本を通して、私たちが知らない表現の仕方や様々なアイデンティティ感じ取ることができる作品は、まだまだこの世の中にたくさんあります。そんな、作品たちを求めて『loneliness books』を覗いてみてはいかがだろうか?

■ loneliness books/ロンリネスブックス
■ https://qpptokyo.com
■ Twitter@BooksLoneliness
■ 野原くろ「キミのセナカ」日本語翻訳版書籍化のクラウドファンディングページ(2020年8月17日まで)

インタビュー・編集/新井雄大
記事制作/newTOKYO

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