“一文無し”主婦が発明した「瞬読」は俳優も着目する脳トレ

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「体は意識して鍛えることができますが、頭の中はなかなか難しい。脳を鍛えるためには、多くの情報を『インプット』し、その情報を自分自身の知識として『アウトプット』することが重要になります。『瞬読』は、その最善のトレーニング方法。しかも、1日2〜3分、バラバラに並べられた文字を見るだけです!」

そう語るのは、一般社団法人「瞬読協会」代表理事の山中恵美子さん(48)。「SSゼミナール」「APマスターズ」など全国で30校以上の学習塾を経営する株式会社ワイイーエスの社長も務めている。

山中さんが出版した『1冊3分で読めて、99%忘れない読書術 瞬読』(SBクリエイティブ)は、10万部の大ヒットを記録している。では、この「瞬読」とは、いったいなんなのだろうか。

「高い理解度を保ったまま、短時間で本を読めるようになるためのメソッドを瞬読と呼んでいます。マスターすれば、ほんとうに1冊を3分で読むことができるようになります。しかし、これは“速読”とは違うのです。瞬読をするメリットは、“右脳の潜在能力”を引き出すことができる点にあります。これによって『記憶力』や『問題処理能力』の向上をはじめ、『創造力』なども高められるのです」

空間把握や、芸術性、ひらめきをつかさどる右脳。アーティストなどは右脳を使うことに秀でているとされるが、ふつうの主婦にとっても右脳を鍛えることには大きな意味があるという。

「右脳を鍛えることで、暗記力や集中力が高まる。すると、“直感”が冴えてくるんです。私たち人間は一日中、判断や決断をして生きています。あれかこれどちらを食べるか、あの人とこの人どちらに話しかけようか……というふうに。そしてその判断の基準は、直感にもとづいていることがほとんどです。右脳がしっかり鍛えられていて直感が冴えている人は、決断を迫られたときに、正しい選択ができるようになる。つまり瞬読のトレーニングは、即時的な判断が求められる場面で大きな力を発揮するのです」

瞬読のメリットは、それだけではない。

「瞬読のミソは、『インプット』と『アウトプット』。人間の頭は、アウトプットしたことはなかなか忘れないようになっています。テレビをただ見る(インプット)より、その番組についての話を友達とする(アウトプット)ほうが、番組の内容もはっきりと覚えられますよね。これを繰り返すことで、認知機能の向上にも一役買うのです。人の名前が覚えづらくなったという人もいると思いますが、このトレーニングを積めばもの忘れなども改善するはずです」

この「瞬読」の原点は、山中さんがわが子のために考え出したものだという。

「リーマンショックがあったとき、私は専業主婦だったんですね。主人の仕事がダメになって、文字どおりの一文なしになりました。子どもがそのとき小3と幼稚園で下の子の幼稚園の月謝2万5,000円もついに払えなくなった。どうやって生きていこうと……しかもそんなとき、長男が『塾に行きたい』って言いだしたんです」

’08年、山中さんは一念発起し、小さな部屋を借りて自ら学習塾を経営することを決意した。

「自分の子どものための塾なので、よそのような合格率を重視するのではなく、“自分の考えや意見を伝えられる子”を育てられるような塾を作ろうと思いました」

受け身でテレビやネットから流れてくるニュースを見ているだけでは、自分の言葉で何も語ることはできない。

「そんな子を育てるために、どんなことをしてあげたらいいか。それにはまず、本をたくさん読ませることによって、基礎学力や語彙力、知識を増やさないといけない。そして時間を無駄にしないためには、量だけでなく速く読ませることも重要だと思いました。そして編み出したのが瞬読でした」

瞬読によって、子どもたちの判断力や思考力が磨かれていくことを山中さんは発見。

「そして4年前、その力を磨くことに特化した教室を始めました。はじめ集まったのは興味を持った8人。その子たちに瞬読のトレーニングを1カ月間やってもらったところ、全員が8倍から10倍の量を読めるようになったんです」

瞬発的な空間把握能力や判断力を磨きたいスポーツ選手、長ゼリフや小噺を覚える能力をつけたい俳優や落語家からも、瞬読は注目を集め始めているという。

「瞬読の根幹にある『インプットしたらアウトプットする』ことは、小学生から高齢者まで、すべての人に効果があります。病院の待合室で雑誌を手に取ったら、何でもいいから記事をひとつ覚えて帰ってみてください。芸能記事を覚えたならそれを友人や家族に話してみる。レシピを覚えたなら、家で料理してみる。それがアウトプットになり、認知機能を向上させるのです」

日常生活を送るなかで、インプットとアウトプットを実践する場はそこかしこにある。“瞬読トレ”で、認知症とはオサラバ!

「女性自身」2020年8月11日 掲載