F1第5戦木曜会見(1):「一方的に非難されるのは我慢できない」人種差別主義者かのように見なされたルクレールが反論

 第4戦イギリスGPに引き続きシルバーストンで開催される2連戦の2戦目は、70周年記念グランプリという名前で開催される。1チーム2名ずつ出席して行われる木曜会見は、これまで同様、2019年のコンストラクターズ選手権の下位チームからスタート。

 2番目に登場したハースのケビン・マグヌッセンは、先週行われたイギリスGPでは、あることでメディアの注目を集めていた。それはスタート前の人種差別撤廃を訴えるセレモニーでの対応だった。

 というのも、マグヌッセンは初戦のオーストリアGPでは、ほかの13人のドライバーとともに膝をついていた。このとき直立していたのは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)、キミ・ライコネン(アルファロメオ)、ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)、アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)、カルロス・サインツJr.(マクラーレン)の6人。その後もこの構図は変わらず、イギリスGPでマグヌッセンが直立したため、現時点では片膝をつくドライバーが13人、直立するドライバーが7人となった。

 この件を尋ねられたマグヌッセンは、直立した理由を次のように説明した。

「まず、明確にしておきたいのは、僕は『End Racism(人種差別を終わらせよう)』という運動には賛成だということだ。その運動は支持しているけど、『Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター/黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える、国際的な積極行動主義の運動)』のような政治的な動きとは距離を置きたいんだ。そのことは、2戦目のレース前に言っていて、今回そうしただけ。僕は自分ができることを自分なりに続けていくだけ」

2020年F1第5戦70周年記念GP ケビン・マグヌッセン(ハース)

 開幕戦から直立でセレモニーに参加し続けているルクレールにも、同じような質問が相次いだ。理由は、70周年記念グランプリを前に、ツイッターにEnd Racismに関するコメントを投稿していたからだ。それは、膝をつかないルクレールを人種差別主義者であるかのように見なす一部の人たちへの反論だった。

「僕は積極的にソーシャルメディアを活用しているから、真実でないことを言われるのは、納得できない。ただ膝をつかないからといって、この数週間、いろんなことを言われ続けてきた。だから、僕は自分の思いを率直にツイートしただけ。これ以上、一方的に非難されるのは我慢できないからね」

2020年F1第4戦イギリスGP スタート前セレモニー

 これに対して、人種差別撤廃運動に積極的な姿勢を見せているルイス・ハミルトン(メルセデス)は、「僕は(だれが膝をつき、だれが膝をついていないかを)見ていないし、気にしていない。ただ、僕たちが一緒に何か行動を起こすことが最も重要なことだという気持ちはいまも変わらない」と言い、こう続けた。

「ほかのスポーツを見れば、ほとんどのスポーツで『Black Lives Matter』が大きな話題になっていることは明白だ。ヨーロッパのサッカーでは、ほとんどのチームが国籍に関係なく、みんな膝をついている。もちろん、アメリカのバスケットボールではそうでないチームもあるし、野球のメジャーリーグでもいくつのチームはそれを行っていない。でも、だからといって彼らが団結していないという意味にはならない」

 ハミルトンは膝をつかないという選択に理解を示しつつも、膝をつくことの重要性を次のように説く。

「最終的に個人の選択にかかっていると思う。これは強制するものではないから。この運動は世界中の人々がお互いを学び、理解していく良い機会となると思っている。だって、膝をつくことがどんな意味を持つかを知らない人だってたくさんいると思うから。そういう人たちに知ってもらい、その背景に何があるかを学んでもらうことはとても意味があること。だから、僕はこれからもこの行動を続けていくつもりだ」

2020年F1第4戦イギリスGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

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