【特集】家族3代 文房具店を「おにぎりカフェ」に 建物と活気が受け継がれ…

特集は家族3代で営む長野市の店です。長年、両親が営んできた文房具店を改装し、女性とその娘がカフェにしました。地域で親しまれてきた店が形を変えて引き継がれ、再び活気を取り戻しています。

釜で炊いたご飯を…軽快な手つきで「おにぎり」に。つくっているのは浜野友美さん(44)。今年4月、念願だった「おにぎりカフェ」をオープンさせました。

「店内でお召し上がりですか?」

ほのかに、ノリの香りが漂う店内。昼時は多くの客でにぎわいます。

客:

「ツナマヨ。おいしい」

「おいしいです。素朴な(味で)」

一見、普通のカフェですが、外に出ると…『事務用品』に『文房具』の文字。実はこちらの建物は去年12月まで文房具店でした。

ユウナギ・浜野友美さん:

「両親がずっと文房具店をやっていた場所で、それを閉めることになったので、じゃあその後、私がお店をやろうかなと思って」

1983年から両親が営んできた「SHOPハマノ」。文房具や事務用品を扱い、一時期は事業所などの大口の顧客を抱え繁盛しましたが、通販の影響などで徐々に売り上げは落ち込んでいったと言います。

父・圭右さん:

「夫婦でやっていたんですけど、文房具に限らず物品の販売は大変ですよね。去年の8月に女房が亡くなったもので、それを契機に閉店しようということで」

父・圭右さんが足かけ36年で店を閉じようとした時、友美さんは、両親の思いと自身の夢を託した「改装」を提案します。

ユウナギ・浜野友美さん:

「継ぐっていうことで喜んでくれるかなっていう思いがあったので。でも自分はカフェをやりたいという思いがあったので、継ぐものと自分の思いを足してうまくやっていければいいなと思いました。お母さんの味を思い出すような、来た人、食べた人がホッとできるような料理は何かなって思った時に、ふと、おにぎりとかおみそ汁が浮かんで…」

店のコンセプトは「おにぎりカフェ」。およそ2カ月かけて改装しました。文房具店の面影は残そうと看板はそのままにし、ショーケースも流用しました。

店の一角には…。

ユウナギ・浜野友美さん:

「父と母がやっていた文房具店をほんのちょっとですけど、名残を少し残して」

カフェの名は友美さんの娘2人の名前から2文字ずつ取って「ユウナギ」にしました。

厨房には次女・凪彩さんも入ります。小さいころから友美さんと一緒に台所に立つことが多く、それまでの仕事を辞めカフェを手伝うことにしました。

次女・凪彩さん:

「私も和食がすごく好きで、そういうお店に勤めたいって思っていたので、『やる!』ってなりました」

具の仕込み…。

次女・凪彩さん:

「こちら、ツナマヨネーズに使うんですけど、お子さんだとツナマヨが好きで、大人の方はここにわさびを乗せて、一番人気です。味が付くものはお母さん、それ以外の切ったり、煮たり、洗ったり雑用は私です」

ユウナギ・浜野友美さん:

「修行とかをしてないんです、料理の。自分がやってきたことを出すだけで、それをみんながおいしいと思ってくれるか不安だったり心配で…」

具材や総菜はまさに家庭の味です。オープン3時間前、前日から水に浸しておいた米を羽釜で炊きます。

ユウナギ・浜野友美さん:

「羽釜って昔から使われていて、お米がおいしく炊けるって言われているので」

釜は一度に一升、炊けますが一回に7合、おにぎり30個分にするとうまく炊きあがるそうです。

ユウナギ・浜野友美さん:

「おいしいです」

午前11時、カフェがオープンしました。友美さんたちがおにぎりをつくる間、店先に座るのは父・圭右さんです。

父・圭右さん:

「ここが私の定位置。車の誘導ね。それからお客さんといろんな話を」

厨房で忙しく働く娘と孫の代わりに接客や車の誘導をします。

父・圭右さん

「歩いてこられたんですか?」

客:

「すぐ近くなので」

父・圭右さん:

「楽しいですよね。今一人ですから、人恋しいですよ。人と話するのはいい」

ユウナギ・浜野友美さん:

「父が一番、今のところ皆さんを癒しているんじゃないかと思います」

店内はすぐに客でいっぱいに。炊き立て・握りたてを食べてもらおうと、おにぎりは注文が入ってからつくります。

ユウナギ・浜野友美さん:

「ポイントはなるべく握らない、力を入れずに握る。ふわふわ、普通にご飯をお茶碗で食べているみたいな感じの食感がおいしいかなと思って」

ワサビがアクセントの「ツナマヨワサビ」(200円税込)に、ピリッと辛い「じゃこ七味」(200円税込)など店頭に並ぶおにぎりは7種類ほど。

次女・凪彩さん:

「お待たせしました、ノリの佃煮と塩おむすびです」

客:

「おいしいですね、やわらかくて」

「手作りの良さがありますね」

テイクアウトの客も多い…。

テイクアウト客:

「めちゃくちゃおいしいです」

「冷めてもすごくおいしくて、お米もちょうどいい具合で」

ユウナギ・浜野友美さん:

「やっぱり見ちゃうんですよ、どんな顔して食べているかなとか。うれしいです、それだけ。本当に幸せですね、この光景が」

この日も売れ行きは好調で、午後2時頃には完売となりました。2人の頑張りに父・圭右さんは…。

父・圭右さん:

「私にとっては誇りですよね、うれしいです。お年寄りから赤ちゃんまで癒される店。今後もそのような形で行ってもらいたいと思います」

文房具店からカフェへ。店舗と共にかつての活気も引き継がれようとしています。

ユウナギ・浜野友美さん:

「まだオープンしたてなので、いろいろ不安なんですけど、こっちが楽しみながらやるとお客さまにもそれが伝わって、いい雰囲気のお店になるんじゃないかと思って、頑張らなきゃと思います」

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