【高校野球】元ロッテ捕手の父の激励を胸に… 木更津総合の「背番号10」が誕生日に快投

木更津総合・吉鶴翔瑛【写真:宮脇広久】

憧れで目指すのは父・吉鶴憲治コーチが所属するソフトバンクの左腕・大竹

高校野球千葉大会は7日、市原市のゼットエーボールパークなどで行われ、第8地区準々決勝で優勝候補の木更津総合が市原中央を4-1で下した。かつて中日、ロッテで捕手として活躍し、現在ソフトバンク1軍バッテリーコーチを務める吉鶴憲治氏の次男、翔瑛投手が先発し6回3安打5奪三振無四球無失点の快投を演じた。一方、県内ナンバーワン右腕といわれプロも注目するエースの篠木健太郎投手は“試運転”で9回の1イニングを投げたが、2安打2四死球で1点を奪われた。

もともと木更津中央の投手陣では篠木の実力が突出していたが、昨秋から背番号10の左腕・吉鶴が急成長し“2枚看板”といわれるまでになった。吉鶴はこの日、速いテンポで速球、スライダー、チェンジアップを投げ分け、18アウトのうち併殺打を含め10を内野ゴロで奪った。

くしくもこの日は吉鶴の18歳の誕生日。8月に大会がなければ、誕生日に公式戦を迎えることはなかった。福岡を本拠とし正月くらいしか顔を合わせる機会がない父からも、LINEで「誕生日だから頑張れ」とメッセージを受け取った。コロナ禍で甲子園大会が消滅した時も、「県大会はあるだろうし、この先も野球を続けるのだから、落ち込むのではなく前を向いて練習していけ」とのゲキを飛ばされたという。

吉鶴が生まれた2002年に、父は現役を引退しており、プレーを生で見たことはない。それでも「技術的なことはあまり言われませんが、『ピンチでは得意のボールで強気で押していけ』と言われています」と明かす通り、4回2死三塁では相手の4番・小関に対し、低めのスライダーを2度空振りさせてカウント1-2と追い込み、最後もスライダーで二ゴロに仕留めた。

進路は「大学で4年間やってからプロを目指したい」と明確だ。憧れの投手に「ソフトバンクの大竹投手」と父が所属するチームの左腕の名前を挙げる。「まっすぐの球威、球速はそれほどでもないけれど、変化球を多投して打者を打ち取る姿に、自分も同じタイプの投手なので憧れます」と現実的に自分へ引き寄せて考えている。

木更津総合・篠木健太郎【写真:宮脇広久】

主将兼エースの篠木は満を持して登板も1回1失点

ストレートの球速にこだわりはないようで、MAXを聞くと、「140キロくらい」と自己申告。その根拠は「測ったことはないですが、“LINEニュース”にそう書いてあったので……」と屈託なく笑った。「今日もピンチで球が浮いてしまう場面がありましたし、球威そのものも足りない」と自己分析しつつ、大学で力をつけてから父がいるプロの世界へ飛び込む意思は揺らがない。

一方、主将兼エースの篠木は満を持して、4-0とリードして迎えた9回に登場したが、本人いわく「りきみ過ぎました」。2死満塁とされた後、一塁内野安打で1失点。それでも最後の打者を高速スライダーで空振り三振に切って取り、意地は見せた。

次戦の第8地区準決勝の相手は、東海大市原望洋。もちろん目標は、8地区の優勝チームで争われる決勝トーナメントの頂点しかない。吉鶴は「全員で優勝したい」と言い切る。篠木との二人三脚で高校最後の戦いを飾る決意だ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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