飲食業界は厳しい...。けれど利用者にはメリットもある。コロナ禍での変化と定着しつつあるもの

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収束の見えない新型コロナウイルスの感染拡大は、飲食業界が提供するサービスを大きく変えている。

営業自粛や営業時間の短縮などによる利用客の減少に伴い、売り上げが激減した飲食店は少なくない。

そうした厳しい状況の中、少しでも売り上げを確保しようと、飲食店が取り組み始めていることにテイクアウトやデリバリーがある。やむを得ず販促費をカットし、無料のSNSサービスを駆使して集客を図る方向にシフトする店舗もある。

コロナ禍で、飲食業界と利用者はどう変わっていくのか。

Kensuke Seya / BuzzFeed

インスグラムやFacebookを活用しているのが、横浜駅近くに店を構えるダイニングバー「Newjack(ニュージャック)」だ。

コロナ禍で大打撃を受ける中、まず始めたのがテイクアウトサービスだった。

10種類以上のフードメニューのほか、購入者が自身で作る「カクテルセット」を4月から販売し始めた。いずれも真空パックして、鮮度を保つ工夫もしている。

店の売りを生かした新サービス

Kensuke Seya / BuzzFeed

その翌月には、自宅にいながら楽しめる、店の売りを生かした目新しいサービスの提供も開始した。VRを利用したショータイムを商品として売り出したのだ。

ニュージャックの売りは、バーテンダーがシェイカーやボトル、グラスなどを使ってアクロバティックなパフォーマンスをしながらカクテルを作る「フレアショー」だ。

通常は店内で誕生日プレートを注文してもらった場合にショーを披露しているが、自宅でもショーを満喫してもらおうと、その様子を収録したVRコンテンツを商品化した。

世界に一つだけの映像を提供

Newjack / Via youtu.be

ショーは注文を受けてから、店内で撮影を始める。お客に合わせて内容を全て変え、一つとして同じ映像はないという。

VRのゴーグルを装着して視聴する5分ほどの動画では、複数のフレアバーテンダーたちが連携しながらパフォーマンスをする。シェイカーやボトルなどが宙を舞い、視聴者に向かって炎が吹かれる。さらには、マイクパフォーマンスもあり、盛りだくさんのショータイムとなっている。

映像を360度楽しめるVRだからこそ、一度観ただけではパフォーマンスの全てを観ることはできない。さまざまな角度からショーを味わえ、複数回観て楽しめるよう工夫しているという。

ショーのデータのみ、映像の最後で完成するカクテル(ノンアルコールも対応)の材料付き、VRゴーグルとカクテルの材料付きといった3種類のメニューから選べ、インスタグラムとFacebookから注文ページにアクセスできる。

パートナーの誕生日などの記念日や、バーを利用したことがない子どもへのプレゼント目的で購入されることが多いという。

ニュージャックを運営する「ラッドエンターテインメント」の社長で、ヘッド・バーテンダーである山本圭介さんは「VRでしかできない演出がある」とBuzzFeed Newsに話す。

「お店でやるショーよりも時間は短いですが、店内でお客さんを目の前にして行うパフォーマンスではできないようなことができます。たとえばカメラに向かって炎を吹いたり、瓶を投げたりできるんです。楽しんでもらえると思います」

ニュージャックでは新型コロナの収束後もテイクアウトサービスとVRコンテンツの販売を継続する予定だという。

Kensuke Seya / BuzzFeed 山本圭介さん

飲食業界と利用者はどう変わっていくのか

8月3日には、東京都が酒を提供する飲食店やカラオケ店に営業時間の短縮要請を始めた。

応じた事業者には、一律20万円の協力金を支給するというが、店の家賃や人件費などを考えれば決して十分な額とは言えない。自治体や国からのお金、店内で飲食をするイートイン利用で得られる売り上げだけでは、店の経営を維持するのはどんどんと難しくなってきている。

このようにコロナ禍で、多くの飲食店が追い込まれているが、消費者からすればメリットもある。普段はなかなか利用する機会がない高級飲食店や、人気で予約が取りづらい飲食店がテイクアウトやデリバリーサービスを開始したがゆえに、利用しやすくなった一面があるからだ。

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飲食店が利用する予約・顧客管理台帳システムを提供する「テーブルチェック」によると、全国で緊急事態宣言が解除された現在もテイクアウトとデリバリーの予約件数は一定の水準を保っているという。

同社のサービスを利用した予約件数を見ると、不要不急の外出自粛が呼びかけられた4月のはじめからテイクアウトの予約件数が伸び始めた一方、来店予約件数が減っていった。

来店予約は、5月に入るとゆるやかに伸び始め、緊急事態宣言が解除された6月以降、4月1日の予約件数の2倍以上を記録する日が多くある。

その推移と連動するかのように、テイクアウトの予約件数は減少傾向に転じるが、7月はほぼ横ばいとなっている。また、デリバリーは、テイクアウト需要と比較すれば少ないとはいえ、一定の予約がある。

こうしたデータからテーブルチェックの広報担当者は「感染拡大に歯止めがかからない中、今後も店に行かずに楽しめるテイクアウトやデリバリ―といった『店外利用』の需要は継続するはずです。そして、その需要が、コロナ禍以前の水準まで戻ることはないと考えています」と話す。

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SNSでの予約も定着するか

人々のテイクアウトやデリバリーの需要に応えるように機能が拡充し、利用しやすくなったのがSNSだ。

たとえばインスタグラムは5月、飲食店から料理を注文できる機能を追加した。

飲食店側は、ストーリーズに「料理を注文」スタンプを貼り付けて投稿でき、プロフィール欄に「料理を注文」というアクションボタンを追加することができるようになった。

利用者は、そのスタンプやアクションボタンをタップすることで、飲食店が設定したプラットフォームのベージに飛び、注文できる。お気に入りの飲食店の「料理を注文」スタンプのシェアも可能だ。

また、店側が発行したクーポン券などのギフトカードを購入できるようにもなった。

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テーブルチェックの広報担当者は「コロナ禍で影響を受けるお気に入りの飲食店をシェアして紹介する人も増えています。今後は、自身の好みにあったサービスやアイテムが、より見つかりやすいSNSで予約する人が増えるのではないか」と見ている。

先出の山本さんは「これからがより厳しいと思っている。みんな節約しようと考えるのではないか」と語る。それもあり、テイクアウトサービスとVRコンテンツの販売を続ける方針でいる。

新型コロナによって、かつてのような営業方法や売り上げを期待するのは難しくなっている。飲食業界はコロナ禍以前の売り上げを確保するため、それ以上の売り上げを達成するために、模索を続けている。