母娘死亡の諫早・轟峡崖崩れ 当日は少雨、専門家「予見難しい」  雨に代わる水の流れ要因か

崖崩れの前兆現象

 諫早市の轟峡(とどろききょう)で7月25日に発生した崖崩れで、長崎市の女性(40)と小学生の娘(8)が亡くなった。この日、諫早市はあまり雨が降っていなかった。なぜ県道下の斜面が崩れたのか。専門家はその前に大量の雨が降った場合、「無降雨時にも(地下水や用水路など)雨に代わる水の流れが生じていた可能性がある」と斜面の構造を指摘する。
 広島大防災・減災研究センターの海堀正博センター長(砂防学)に聞いた。

 長崎地方気象台が発表した諫早の6月11日~7月29日の降水量(速報値)は1611ミリで平年の2.38倍。県設置の雨量計によると轟峡に近い黒新田の7月1~25日の雨量は1175ミリに上る。海堀センター長は「累積雨量がかなり多く地盤の強度が低下していたのは間違いない。(崖崩れの)予見は難しかっただろう」と語る。
 崖崩れは県道付近から下方に広がる斜面で発生した。黒新田の7月25日午前0時~午後3時の雨量は4ミリと少ない。海堀センター長によると、無降雨時の崖崩れは道路付近で発生することがよくあるという。舗装された道路は水を通さず、むしろ山からしみ出す水を集めてしまう。路面の傾斜や側溝の配置などの条件が重なり、集められた水が斜面の上の一カ所から集中して排水されれば、そこから崖崩れが起きる可能性がある。
 土のうを積むなどして水の流れを変えても、別の場所から崖崩れが起きるリスクが高まり「対策は容易ではない」という。海堀センター長は、雨が降っていなくても、小石が落ちてくる、根が切れる音がするなどの予兆があれば近づかないようにと注意を促す。

 


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