長崎8月9日 被爆75年 核軍拡競争に歯止めを 国連・中満氏が役割期待

約5000個のキャンドルが点灯され、平和を願い風船が放たれた「平和の灯」=長崎市、平和公園

 長崎は9日、被爆から75年の節目となる「原爆の日」を迎え、長崎市松山町の平和公園で午前10時45分から長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典(平和祈念式典)が営まれる。参列のため来県した国連軍縮担当上級代表の中満泉事務次長は8日、長崎市内で報道陣の取材に応じ、被爆地長崎、広島について「核兵器廃絶運動を引っ張ってきた。さらに強力に進めてほしい」と述べ、世界の核軍拡競争に歯止めをかける役割を期待した。

 新型コロナウイルス感染問題を受け、式典への参列は市の招待者だけに制限される。原爆犠牲者遺族や被爆者、安倍晋三首相のほか、各国代表として過去3番目に多い68カ国の駐日大使らが参列を予定している。核保有国は米国、ロシア、英国、フランス、イスラエルが出席。中国、インド、パキスタンは欠席する。
 式典では、7月末までの1年間に死亡が確認された被爆者と「被爆体験者」計3406人分の名簿4冊を奉安。午前11時2分に黙とうする。
 田上富久市長は長崎平和宣言でコロナ禍を踏まえ、核廃絶に向けても当事者意識を持つよう世界に呼び掛け、日本政府や国会議員には核兵器禁止条約の署名・批准を求める。
 カトリック信徒の深堀繁美さん(89)が被爆者代表として「平和への誓い」を述べる。原爆にきょうだい4人を奪われた壮絶な体験を語り、ローマ教皇フランシスコが昨年11月の長崎訪問の際に被爆地から発したメッセージを引き合いに核廃絶を訴える。
 8日夜は平和公園で、恒例行事「平和の灯(ともしび)」(実行委主催)が開かれ、市内の小中学生が準備した約5千個のキャンドルを点灯。参加者らが風船を空に放つなど平和への思いを共有した。9日は県内各地で平和集会や追悼行事が開かれる。


© 株式会社長崎新聞社