岩崎良美「Vacance」観測史上最も遅い梅雨明けに泣いた1982年夏の名曲

1982年 8月9日 岩崎良美のシングル「Vacance」がオリコン最高位(41位)を記録した日

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大人っぽかった岩崎良美

今年はなかなか梅雨が長かったですねぇ。連日曇天、ゲリラ豪雨で気分が晴れない日が続きましたからね。そこにコロナ禍も重なり一層気分が滅入るような日々でした。だから梅雨が明けた今こそ “夏気分” に浸りたいもので、今回は岩崎良美さんの「Vacance」をセレクトしてみました。

1980年デビュー… いわいる“80年組”の岩崎良美さん。1982年はデビュー3年目ということになりますが、オリコンベストテンヒットは無かったわけで、いわゆるスマッシュヒット止まりだったんです。でも、曲としては佳曲が多いんですよねぇ。

1982年、件の “花の82年組” アイドルが大挙デビューしたこともあり、これぞ80年代(前半)型のアイドル曲っていうフォーマットがある程度固まってきた頃だったんですが、岩崎良美さんの曲は、そんなフォーマットからは随分外れてたなぁ。どちらかというと岩崎良美さんって大人っぽさを売りにしてたんだよね。

イメージは夏! 地中海を彷彿させる「Vacance」

個人的には、この年1月にリリースされた「愛してモナムール」って曲も好きなんですよ。フレンチポップスな雰囲気がオシャレだったし。そして、この「愛してモナムール」の続編という感じのヨーロッパ系の曲としてリリースされたのが「Vacance」で、デビュー以来ちょうど10枚目のシングルですね。

「愛してモナムール」が “春” のイメージだとしたら、「Vacance」は完全に “夏”で、南フランス、あるいはエーゲ海… ともかく “地中海” を彷彿させるオシャレな雰囲気。

小道具的なポイントとして、詞に “ペリエ” なんて言葉がでてくる。今では何てことないだろうけど、当時はすごくオシャレだったのよね。

なんと、頭脳警察のPANTA作曲!

曲がまた良い。非常にシンプルなメロディなんだけども引っかかりがある。思わず惹き付けられるようなイントロから秀悦。詞とメロディのマッチングもすばらしい。聴いた瞬間 “ビジュアル” が浮かんでくるんだよね。出だしの「♪ いつか ふたりで~」で、すっかりこの世界に引き込まれる。気分は一気に、青い空、青い海がきらめく地中海。

ちなみにこの「Vacance」は、あの伝説のバンド、頭脳警察のPANTAさんが書いたっていうのも、ちょっとビックリなんだけどね。70年代初頭、反体制的バンドとして過激なパフォーマンスで名を馳せていた頭脳警察。そのリーダーだったPANTAさんが、こんなシンプルかつキャッチーなメロディを書くとは、この時点では全くもって意外だった。まぁ、後年、石川セリさんの「ムーンライト・サーファー」を聴いて納得したけど。

それだけではない。当時若手アレンジャーだった清水信之さんのアレンジもメロディに負けていないよなぁ。詞のイメージを壊さない大胆なアレンジ、カラッとした空気感が曲を一層引き立だせている。そして作詞は、その昔シンガーだった青木茗こと、金井夕子さん。これほど作詞、作曲、アレンジが三位一体になった曲ってのも珍しい。

ともかく、初めて聴いたときから個人的には “大絶賛大会” でしたね。もうね、岩崎良美さんはこの曲で決まり! 絶対に売れる! 売れてほしい! と期待していたんだけど…。

売上低迷の原因は長梅雨と冷夏?

でもね、「Vacance」の実績は、オリコン最高位41位、売上枚数3.6万枚。この時点までの岩崎良美さんのシングルとしては最低売上げ… この結果に「え?」ですよ。今でも信じられない。

いかにも “夏” を連想させ、シングルとしてヒットするべき曲と思えたこの曲が、なぜこの程度しか売れなかったのか? ひょっとしたら、あの時点での岩崎良美さんのアーティストパワーやプロモーションに問題があったのか? それとも「マルガリータガール」という曲との、いわいる両A面だったため支持が割れたのか? 個人的に一番「これが要因!」と感じてるのは、1982年夏の天候不順。

あの年も今年と同じで長梅雨でなかなか梅雨が明けない夏だった。気象庁の統計によると、1982年の関東地方の梅雨明けは8月4日。これは観測開始以来、最も遅い梅雨明けとなっている。ちなみに、前月7月には、長崎県の重要文化財だった眼鏡橋が流された長崎豪雨が発生。今年と同じように長雨と豪雨に泣いた年だった。おまけに低温続きの冷夏で、典型的な天候不順な夏だった。

そんな天候不順な夏では、カラッとした温度感を醸し出し、いかにも夏の避暑を感じさせるこの曲にはマイナスに作用してしまったんじゃないか… なんて思うんだよね。

ヒット曲と天候の関係は?

いくら曲が秀悦であっても、寒い夏の日に夏を感じさせる曲を積極的に聴きたいと思わないしなぁ。ブルブル震える中で夏曲を聴いても魅力は半減するとも思えるわけで。

これは逆もしかりで、1984年4月にリリースされた、堀ちえみさんの「稲妻パラダイス」。この曲は4月リリースというのにタイトル通り亜熱帯的ムードの「夏曲」であったわけだけど、1984年初夏から夏にかけての高温が追い風になったのか、堀ちえみさんとしては、この曲でオリコン最高位(5位)を記録した… なんてこともありましたからね。

個人的にはそれ以来、これもヒットの要因… というのがヒット曲を追いかける上での教訓になっています。だから、毎年の天候状況は気にするようにしてますね。

もっとも、きちんと科学的に調査したわけではなく、個人的な肌感覚でそう感じているだけに過ぎないですが…。そこは、ちょうど夏休みだし “夏の天候とヒット曲の関係” なんて夏休みの自由研究として調べてみるのも面白いかもしれないですね。ひょっとして、すでに研究されている方がいらっしゃるかもしれませんけど、気になりますからね。

Song Data
■ 岩崎良美 / Vacance
■ 作詞:青木茗
■ 作曲:PANTA
■ 編曲:清水信之
■ 発売:1982年7月21日
■ 発売元:キャニオン
■ オリコン最高位:41位(1982年8月9日付)
■ 売上枚数:3.6万枚

カタリベ: かじやん