1秒以内に14台の超僅差の予選。明暗わかれた優勝候補たちと復調気配のGT-R《GT500予選あと読み》

 開幕戦の圧倒的な速さと強さから、今回のスーパーGT第2戦富士でもポールポジション候補に挙がっていたトヨタGRスープラ陣営だったが、フロントロウを獲得したのは8号車ARTA NSX-GT、17号車KEIHIN NSX-GTとホンダ陣営が巻き返すことになった。今回の予選はQ1ではトップから1秒以内に14台という、超僅差の展開。さまざまな要因が明暗を分ける形となった。

 ウエイトハンデの面から、そして一発の速さはGRスープラ並、またはそれ以上のパフォーマンスを秘めるホンダNSX陣営。しかし、その中でも100号車RAYBRIG NSX-GTは7番手に沈んでしまった。GRスープラ陣営でも、今回ウエイトハンデを搭載しながら優勝候補に挙げられていた14号車WAKO’S 4CR GRスープラ、38号車ZENT GRスープラ、そして復調の気配漂う23号車MOTUL AUTECH GT-Rに予選後、聞いた。

 NSXのブリヂストン陣営のなかで、1台だけ7番手と遅れを取ってしまったのがRAYBRIG NSX-GTだ。フリー走行ではトップタイム。予選Q1でも牧野任祐がトップタイムをマークしながら、予選Q2ではエースの山本尚貴がまさかの低迷、予選後の山本の表情は暗かった。

「クルマのフィーリングも良くて、タイヤのグリップもよかったんですけど、1周回ってきたらタイムが遅かった。ショックです。単純に自分の力不足です。チームメイトがトップタイムを出しているのでクルマのポテンシャルはあるし、牧野は上手に乗っていた。そのポテンシャルを出せずにチームにも迷惑を掛けてしまいました」と、下を向く山本。

 予選Q2では路面温度が5℃近く下がり、ARTA、KEIHINとは異なるタイヤ選択をしていたRAYBRIGのタイヤが予選Q2の予選コンディションに合っていなかったという推測や、また、コースからは山本のアタック中に前のマシンとの間隔が狭まり、ややトラフィックのような形になっていたとの情報もあるが、山本は一切の言い訳をせずに「自分の力不足」とだけ語った。

 山本と同じく予選でショックを受けたのが、予選Q1を担当したZENTの石浦宏明だ。石浦はアタック中、前を走るGT500車両に引っかかってしまい、11番手で予選Q1敗退となってしまった。

「ウォームアップのセクター3で追いついてしまって、コントロールラインをそのクルマと接近したまま通過して、タイヤのグリップとしてはその周が一番いい状態だったので、そのままアタックしましたが……。それ以前にもスローダウンして十分間隔を開けていたんですけど、そうしたら向こうの車両は前にクルマがいるわけではないのに一緒にスローダウンして追いついて、結局、一度もクリアな状態でアタックすることができませんでした」と石浦。

「クルマのフィーリングも、朝はちょっとドタバタしていたのですが、予選に向けていい方向に行っていたので、予選Q1でも4番手くらいのタイムを出せる速さはあったと思います。今回、勝てるチャンスがあると思っていたのでショックですね。僕が引っかかった時にアタックを止めていればよかったのかもしれないですけど、そうなると僅差のタイム差の状況でいろいろその周だけのおいしい部分を諦めることになってしまう。僕の中で『この周を捨てて次ぎの周に』とはならなかったので、結果からみれば、捨てた方が正解だったのかもしれないですね」と、予選Q1を悔やむ。

■着々と復調の気配を見せるニッサンGT-R陣営

 石浦同様、不本意な予選となってしまったのが、同じく今回の優勝候補の1台、WAKO’S 4CR GRスープラだ。大嶋和也が予選Q1を6番手で通過し、予選Q2は坪井翔が担当。しかし、坪井はまさかの8番手となってしまった。坪井が振り返る。

「予選Q1からQ2に向けてセットアップをアジャストしていったんですけど、それがちょっと悪い方向にいってしまったのと、路面温度が下がってしまったのが僕らにとっては良くない状況になってしまいました。その上、クルマ側のトラブルといいますか、パワステに問題があって、100Rの出口でパワステの問題で変な挙動を起こして、スピンするかと思うような大きなミスにつながってタイムロスしてしまいました」

「そのミスがなかったとしてもトップのタイムは見えないですけど、3番手くらいは見えていたと思うので、残念すぎるというか、悲しい予選になってしまいました。今日はすべてがうまく噛み合いませんでした。決勝は前回のように追い上げる展開になると思いますけど、クルマとしてはロングランに強いですし、開幕戦よりは前の位置でスタートできるので最後まで諦めずに頑張りたいと思います」と決勝に期待する坪井。

 今回はホンダNSXが活躍することとなったが、ニッサンGT-R陣営としても着々と復調の気配を見せる予選となった。12号車カルソニック IMPUL GT-Rが4番手を獲得し、MOTUL AUTECH GT-Rも5番手と2台のGT-Rが決勝に望みをつないだ。予選Q1を7番手で通過したMOTUL GT-Rの松田次生が振り返る。

「クルマは今回、すごくフィーリングが良くて走り出しから悪くなかったんですけど、やはりNSXが一発が速いので、どこまで太刀打ちできるのか。選んだタイヤはちょっと硬めのタイヤなので、Q1突破はギリギリかなと思っていましたけど、最後のアタックでしっかりとQ1通れて、ロニー(クインタレッリ)さんも5番手なので悪くはないですけど、やはり目指しているのはトップなので、まだまだやらなきゃいけないことは多いかなと思います」

「クルマは前回からセットアップを変えてきました。自分たちのセッティングの方向性、前回、自分たちのダメだった部分を見直して、今回ちょっとトライしてセットアップをもってきました。それが結果として良かったと思います。セクター3が良かったですが、あれだけセクター3を速く走ることができれば、レースでも結構勝負はできると思うので、決勝はじっくりと前に行ければと思います」と次生。
 
 開幕戦ではGRスープラの圧倒的な強さとともに、ニッサンGT-R陣営の厳しさも浮き彫りになってしまった。

「前回の結果だけでなく、厳しい状況なのは分かっていましたので(苦笑)。開幕戦のあとはこれ以上悪くなることはないと割り切って、あとはしっかりとクルマをどこまでトップに追いついて、追い越すところまで持って行ければなと思います。今回、レースでは表彰台には行きたいですけど、相手も速いですし、タイヤ選択も分からないですので楽なレースにはならないと思いますので、まずはしっかりとレースで走りたいと思います」

 予選Q1のタイム差は、トップから1秒以内に14台という、超僅差の戦いとなった第2戦富士の予選。ほんのわずかなミス、トラフィック、セットアップの違いが大きく明暗を分ける結果となった。そのなかでもARTAの福住仁嶺は予選Q1の1コーナーでタイヤロックさせて右フロントタイヤにワイヤーが表面に見えるくらいのフラットスポットを作りながら、8番手でギリギリQ1を突破して、Q2の野尻智紀のポールポジション獲得につないだ。

 いろいろ綱渡りとなった今回の予選だが、果たして決勝では今回もGRスープラ勢が前回同様の強さを見せるのか、それともNSXが予選の速さのまま逃げきるのか。それともカルソニック、ニスモが逆襲するのか、さまざまな意味で今後の試金石となりそうだ。

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