「投げ過ぎのツケは必ず…」 元メジャー右腕が指摘する広島投手陣起用法の危うさ

広島・大瀬良大地【写真:荒川祐史】

藪恵壹氏が見る大瀬良とは… 「広島にあるエースの系譜を受け継いでいる」

■広島 2-1 阪神(8日・マツダスタジアム)

広島は8日、本拠地での阪神戦に2-1で勝利した。この日はエースの大瀬良大地投手が立ち上がりから絶好調。2回に大山悠輔内野手に同点ソロを左翼席へ運ばれたが、7回を5安打6奪三振で1失点。119球を投げてマウンドを下りると、直後の攻撃で味方打線が勝ち越し、今季4勝目(1敗)を飾った。

2回2失点で降板した7月24日のDeNA戦の後で登録抹消され、中14日を挟んで臨んだマウンドで見せた躍動ぶりに関心するのは、阪神OBで元メジャーの藪恵壹氏だ。藪氏は広島のエースに育った29歳右腕について「バッターを打ち取る術や引き出しが豊富な投手」と高く評価する。

「打者を打ち取るパターンが1個だけじゃない。ドローンとしたカーブも使って、打者のタイミングを外すこともできます。ルーキーの頃から見ていますが、佐々岡(真司)さん、大野(豊)さん、黒田(博樹)くん、マエケン(前田健太)といった、広島にあるエースの系譜を受け継いでいますね」

リフレッシュして上がったマウンドでは、走者を置きながらも順調にアウトを重ねた。最大のピンチは、同点で迎えた7回。1死満塁という危機を迎えたが、代打・福留孝介外野手を見事、二塁併殺打に打ち取って無失点で切り抜けた。その裏の攻撃で味方打線が勝ち越して4勝目。次回に繋がる投球内容となった。

この日は7回で119球を投げたが、藪氏が気掛かりだというのは、広島の先発陣に見る“投げ過ぎ”の傾向だという。大瀬良は開幕戦を116球で完封すると、続く2戦目で132球完投勝利。「最初2試合のツケが4~6週間ほど経ってから出ましたよね」と話す。

広島・佐々岡真司監督【写真:荒川祐史】

タフな投手だった佐々岡監督「求める基準が高すぎる可能性はありますね」

「完投させたり、7月4日のホーム開幕戦にあわせるためにスライドさせたり、佐々岡監督は現役選手にはちょっと酷と思える起用をすることがありますよね。僕は、投げすぎたツケは、必ずあとでやってくると思います。

メジャーの監督は春先に『お前たちの肩肘は俺が守る』と投手陣に言うんですよ。選手生命が短くなれば、生活にも関わってくる。日本ではスタミナのある則本(昂大)投手もデビューから6年目で肘の違和感を訴えています。チームの首脳陣は投手の起用にリミットをかけながら、怪我をしない期間を10年、15年と伸ばしていくべきだと思います」

今季から広島を率いる佐々岡監督は現役時代、最多勝、最優秀防御率、沢村賞などを獲得した大エースだった。18年の現役生活で570試合に登板し(303先発)、66度の完投を記録とタフな投手だった。藪氏はこの経験が現在、投手の球数が多い傾向に影響しているのではないかと見ている。

「佐々岡監督が求める基準が高すぎる可能性はありますね。現代の基準に下りてきてくれればいいけれど、自分の現役時代の基準に合わせようとすると危険ですよね。広島は一時、黒田くんがメジャーから戻ってきた時、先発は100球程度までという考えが定着した時期がありましたが、監督が替われば起用方法も変わります。新人の森下暢仁投手も含め、無理に使いすぎないようにしてほしいですね」

佐々岡監督が今後、どのような先発投手の起用をしていくのかにも注目してみたい。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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