故土山氏 晩年の言葉出版 寄稿証言など収録「被爆地どうあるべきか示唆」

出版された本の表紙

 被爆地長崎の理論的支柱として反核平和運動をけん引した元長崎大学長、土山秀夫さん=2017年9月に92歳で死去=の晩年の言葉を収めた「『核廃絶』をどう実現するか 被爆地・長崎から日本と世界へ送るメッセージ」(論創社)が出版された。
 10~17年にかけ、NPO法人「ピースデポ」の機関紙や市民団体「長崎の証言の会」の証言集などに掲載した寄稿文のほか、講演で語った言葉を収録した。
 本書では、被爆地の立場から核兵器禁止条約に批准しない安倍政権の核兵器政策を批判。「平和への願いだけでは世界は変わらない」とし、核廃絶へ向け具体案を示し、政府に政策転換を迫る力を持つ必要性を提言している。
 過去の寄稿文だが現代に通じる内容が多く、核を巡る情勢の厳しさを物語る。編集者は「だからこそ、土山先生の考えや存在を次の世代につながなければならない」とし、被爆75年の節目の年に出版となった。
 ピースデポのスタッフだった当時、土山氏から手書きの原稿を受け取っていたという、長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の中村桂子准教授は「文字に優しい人柄が表れ、一文字ごとに思いがこもっていた」と回想。「先生の言葉は被爆地がどのような役割を担い、今後どうあるべきかを示唆してくれている。多くの人に読んでもらいたい」と話した。
 四六判、216ページで、全国の書店で販売中。2200円。

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