【気になる一言】メルセデスとレッドブルの差は縮まらず。ボッタスは「予選モードより、タイヤの使い方が重要」

 先週の第4戦イギリスGPと同じシルバーストンで行われたF1第5戦70周年記念GPの予選。新しいリヤウイングを持ち込み、2基目のパワーユニットを投入してきたレッドブル・ホンダだったが、ポールポジションを獲得したメルセデスとの差は、イギリスGPの予選とまったく同じ1.022秒だった。

 そこで予選後の会見では、メルセデスのふたりのドライバーに「なぜ、依然としてレッドブル・ホンダとのギャップを広げられているのか。特別な予選モードでもあるか。あるいはそれ以外に何かあるか?」という質問が飛んだ。

 それに対して、ポールポジションを獲得したバルテリ・ボッタスがこう答えた。

「まず言えることは、何かひとつが要因ではないということ。僕たちは先週から今週にかけてマシンも向上させてきたし、ドライバーもドライビングを高めてきた。セットアップもそうだ」

「そして、70周年記念GPがスタートしてからも、すべてが正しい方向に進んだ状態で予選を迎えた。予選に入ると、まずセットアップは基本的には変えられない。でも、タイヤの温度管理などやるべきことはたくさんある」

「Q3までの1アタックごとに、アウトラップでタイヤのウォームアップをいろいろと探りながら、Q3での最後のアタックにすべてを集中させるんだ」

「確かに僕たちにはエンジンに関して予選モードというのがあり、それもQ1では必要ないから使わないけど、Q3へ向けて徐々に上げていく。最後はフルパワーだ。でも、それよりも僕たちとライバルとの間に大きな差があるのは、ドライバーがセッションを通していかに100%を引き出すかという作業にあると思う」

「特にタイヤの使い方、アウトラップでの温め方のほうがより重要なファクターになっていると思う」

 これを隣で聞いていたルイス・ハミルトンも「バルテリの答えがすべて。付け加えることはない」と語った。

 それはボッタスがイギリスGP後にブラックレーにあるメルセデスのファクトリーでシミュレーターに乗っていたことでもわかる。

 確かにホンダのパワーユニットよりも、メルセデスのパワーユニットのほうが予選で高出力であることは事実だ。フェルスタッペンは今回の70周年記念GPの予選後に「僕らにはメルセデスのような予選モードはないが、ここまでレースペースでは競争力を発揮できている」と語り、ホンダが自社のリリースにもそのまま引用している。

 だが、パワーユニットの予選モードだけがすべてではないことは、メルセデスとレッドブル・ホンダのQ3でのタイヤの使い方にも表れていた。

 Q3の2回のアタックのうち、1回目はレッドブル・ホンダがミディアムでメルセデスがソフトだったのに対して、2回目はレッドブル・ホンダがソフトでメルセデスがミディアムという対照的な使い方をしていた。

2020年F1第5戦70周年記念GP バルテリ・ボッタス(メルセデス)

 その理由をボッタスはこう説明した。

「フリー走行から使っていて、もし条件が整えば、ミディアムのほうがソフトより速く走ることができると思っていた」

「そして、予選が始まってから、セッションの最後にミディアムのほうが速くなると確信し、ミディアムタイヤを温存することにした。この路面状況なら、最後はミディアムのほうがマシンのポテンシャルを最大限引き出せるとね」

 ミディアムからソフトにタイヤを変えたレッドブル・ホンダはフェルスタッペンが2列目となる予選4番手を死守したが、チームメートのアレクサンダー・アルボンは9番手に終わった。

「ミディアムからソフトにタイヤを交換したら、マシンのバランスがかなり変わってしまった。もしかしたら風の影響があったのかもしれない。なぜそうなったのか、分析する必要がある」

 レッドブル・ホンダがメルセデスとの差を詰めるためには、予選モードの向上以外にもやるべきことはたくさんある。

2020年F1第5戦70周年記念GP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

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