密輸レクサスも転がす金正恩は「最恐の走り屋」…公道で抜いたらオシマイ

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は7日、金正恩党委員長が、水害に見舞われた黄海北道(ファンヘプクト)銀波(ウンパ)郡の大青(テチョン)里を視察したと伝えた。

同通信によると、現地は約730棟の家屋と約600ヘクタールの田が浸水し、179棟の家屋がつぶれるなど、多くの被害が発生したという。

金正恩氏は「被害を受けた住民に寝具類と生活用品、医薬品など必須物資を早急に供給して早く安着させるのが何よりも重要だ」などと述べ、さらに復旧作業に朝鮮人民軍(北朝鮮軍)を動員するとし、「見積もった所要量に従って国務委員長の戦略予備分の物資を供給する」ことを指示した。

一方、朝鮮中央テレビは同日、金正恩氏が現場を視察した際の写真を公開。それを見ると、金正恩氏が泥で汚れたレクサス「LX570」と見られる黒のSUVの運転席に座っている。北朝鮮メディアが、金正恩氏が車両のハンドルを握った写真を公開したのは初めてだ。

米シンクタンクのC4ADSが2019年7月に発表した、国連安全保障理事会の制裁決議で禁止されている北朝鮮によるぜいたく品調達についての報告書によれば、北朝鮮は2015年から2017年にかけて、レクサスを含む日本車256台を輸入していたという。

韓国の聯合ニュースはこの写真について、「平壌から約150キロ程度離れた現場まで(金正恩氏が)自ら運転したのではないにしても、現場では自らハンドルを握った可能性がある」と伝えた。

しかし筆者は、金正恩氏がかなりの距離を自ら運転した可能性が高いと見ている。なぜなら金正恩氏は、かなり以前から北朝鮮で「走り屋」として知られているからだ。

金正恩氏が愛車のベンツを自分で運転しているとの話は、「金正日の料理人」として知られる藤本健二氏から、テレビ番組で共演した際に、直接聞いたことがある。そして実は、平壌市民の間では以前から、「元帥様(金正恩氏)が、夜中にこっそり専用ベンツに乗って平壌市内を流している」との噂が囁かれているのだ。

そんな金正恩氏は、北朝鮮において「最強の走り屋」とも「最恐の走り屋」とも言うことができる。これは何も、運転が上手だからという意味ではない。

公道で金正恩氏が運転する愛車と知らず、彼の高級ベンツを抜き去った軍の高官が、悲惨な運命を辿ったエピソードがあるからだ。

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