主婦をしながら家賃収入「月200万円」、大家さんに聞いたその実態

コロナ禍で在宅勤務の人も多い昨今。在宅勤務を今後も続けたいとする人は7割に上るという調査結果も報告されました。在宅でできる仕事のひとつに、いわゆる「不労収入」で暮らしていける大家さん業があります。

でも、利回りがいい物件を見つけるのってどうすればいいの?そもそも不動産を運用するほど元手がないし、と疑問は尽きません。そこで、もともと地主でもなく主婦業から大家業に手を付けたという、カナコさん(仮名)にその実態を聞いてみました。

※記事初出時、株式会社TATERU様についての記述がありましたが、事実と異なるため当該部分を訂正させていただきました(2020年8月25日)。

【プロフィール】

・カナコさん  主婦(40代)横浜市・不動産投資歴 11年・総投資額   約2億円・所有物件   築古アパート4件、賃貸併用住宅1件・家賃年収   2,400万円・利回り    10%

出産を機に退職→大家業へ

――今回は、実際の大家業というのはどういうものかお聞きしたくインタビューさせてもらいます。まずは自己紹介をお願いします。

こんにちは、カナコです。大学卒業後、一般企業に就職し、シンガポールへの中国語留学を経て台湾系メーカーへ転職、出産を機に退職した後に大家業を始めました。夫は元不動産鑑定士、外資系製造会社の財務ディレクターです。子供は2人いて、南の国へ移住して旅しながら暮らすことが夢です。

――そもそもなぜ大家業をやってみようと思ったんですか?

元々、ロバート・キヨサキの「金持ち父さん貧乏父さん」を読んで投資に開眼しました。株やFXの短期〜中期投資をしていたんですがトータルではあまりうまくいっておらず、かつ少し疲れてきて。

その頃に知り合った現夫が、元不動産鑑定士で宅建も持っており、不動産投資に興味を持っていたんですね。私もある女性大家さんの書かれた本を読んでみて「私もやれそう、やってみたい!」とすぐにノリノリになりました。

――株やFXより不動産投資が良いと思った理由は?

不動産投資は株などの短期売買よりゆっくり取り組めてミドルリスクミドルリターンなところが魅力に思えました。

――不動産投資をやろうと思ってからはまず何から始めましたか?

手始めに宅建の勉強をして合格し、不動産投資の本を数十冊読みながら不動産屋巡りを始めました。初期は主に先輩方の体験をつづった出版物、つまり不動産投資本で勉強しました。それから、不動産屋を巡って話を聞いて、セミナーや賃貸住宅フェアも行ってみました。

主婦の場合、借り入れはどうする?

――いざ買いたい物件が現れて、購入代金はどう工面しましたか?

最初に買ったのは1,300万円の4戸の木造アパートで、300万円は自己資金、1,000万円は、政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」を利用しました。

――金融機関からの借り入れはすんなりいきましたか?

主婦なので一般銀行からは無理なんですが、政策金融公庫から女性起業の優遇レートで借りることができたんですね。申込用紙に履歴などを書く欄があって、面接をして割とすんなり。

その後、夫がきらぼし銀行からの借入でまた小規模アパートを購入しました。もう9年前のことですね。

ここ数年は夫がきらぼし銀行、静岡銀行と三井住友トラストから融資を受けています。主婦が借り入れるには、まだ借りてはいませんが、可能性としては三井住友トラストのノンバンクもあると思います。

<これまでの借入額>
・政策金融公庫1,000万(妻)
・きらぼし銀行2,000万3.357%(夫)
・静岡銀行4,500万3.2%、7,400万3.3%(夫)
・三井住友トラスト5,000万2.3%(夫)

大家業にもコロナによる逆風

――個人の大家業は逆風も度々吹きますが、融資の受けやすさに変化はありますか?

不動産業者からは、ひと頃に比べ非常に借りにくい状況になっているとよく聞きます。とはいえ金融機関も貸し出し先を探しており、昨年はまた不動産投資にも貸し出し枠を設定拡大するところも増えてきていました。ですが、今年になってまた業者の不正融資事件が明らかになり、一投資家として迷惑しているし憤りを感じていました。

そのところにコロナで、開きかけていた門戸がまた閉じてきていると感じていますね。コロナ中に買いたい物件に出会ったので懇意にしている某地銀に打診しましたが、随分待たされた挙句、5,000万円以内で積算価格が売値と同等のもののみ、と全くこれまでと違う条件を出されて断念しました。

――これまでにどこに何軒購入し、何軒売却し、現在何軒所持していますか?

現在、神奈川と埼玉に計5軒所有中です。6軒購入して1軒売却しました。

<保有物件情報>
・2009年賃貸併用住宅@神奈川県横浜市 共有名義→夫名義 築10年
・2010年木造アパート@神奈川県厚木市 夫名義 築21年
・2010年木造アパート@神奈川県大磯町 妻名義(1,300万円で購入→2018年2,060万円で売却)
・2018年12月木造アパート@神奈川県葉山町 夫名義 築23年
・2019年2月木造アパート@埼玉県上尾市 夫名義 築22年
・2019年7月木造アパート@埼玉県北鴻巣 夫名義 築28年
※購入時ではなく現在の築年数

2011年からサラリーマンの不動産投資が広まったからか価格が上昇して、夫がしばらく購入を控えると言い出したため、しばらく買わない年が続きました。2015〜2017年には海外勤務のため全く市況も見ていないです。

2018年に日本に帰国し不動産価格がまだ高値にあると感じたので大磯の物件を売却することにしました。現金2,000万円ほどができたのでそれを元手に規模を拡大することを決意し、夫に貸し付けて属性の良い夫がより有利な融資を引き出して拡大中です。

大家業で夫婦の役割分担は?

――大家業のルーチンワークとしてはどんなことがありますか?

ルーチンワークは、毎日のメールでの新着物件のチェック、毎月の入金チェック、物件次第ですが2〜6カ月ごとの清掃です。絶対にやらなくてはならないことは意外と無いですね。ですが、よりよくしようと思うと果てしなくあります。

例えば、税金や保険の知識をつけたり、空室対策、各種トラブルの対応などに起こってからではなく普段から備えておきます。一度買って終わりではなく、資産負債バランスを把握しながら必要なら売却を挟んでいきます。また、自分の投資スタイルを決めること、そのための研究と努力は欠かせません。

――どういった投資スタイルでいますか?

築古一棟買いが基本です。貸してもらえるなら新築もやりたいんですけどね。

――大家業をやる上での夫婦の役割を教えてください。

購入時の判断は2人でしています。どちらかがノーならやめる方針です。物件の選定は、最初に情報をキャッチしたり見に行くのは平日昼に動ける私が多いですね。管理は基本私がやっていて、大規模修繕などは2人で相談して行っています。

物件保有者は共有から夫に変更したんですが、これは税金対策で私が専従者給与を得るにあたり専従者となるには共有名義ではできない、という税理士さんからの助言を受けてのことです。

――物件の情報集めは主にどうやってしていますか?

今は投資物件専門サイトに条件を登録し、メールで着信する物件情報を日々チェックしています。その中から気になる物件に問い合わせをすると、その会社から継続的に情報がまわってくるようになることが多いですね。

さらに購入時の担当の営業と相互関係を築いて、その後もいち早く情報をもらえるようにしていますよ。また、良さそうな不動産業者の個別相談に出向いてお願いしておくのも大事です。

――大家業で大変なことは何ですか?

一番は購入時の投資判断でしょうか。あとは、トラブル対応も。最近初めて所有物件に孤独死が出ました……。空室対策も悩みどころですね。

月収200万円、ローン・経費120万円

――いくら儲かっていますか?利回りはどれぐらいでしょうか。

月の家賃収入200万円、ローン返済100万円、管理費など必要経費20万円で、利回りは平均して10%程度です。

手残り(帳簿上ではない実際に手元に残るお金)は、大規模修繕などの運転資金であり次の物件を購入するための頭金諸費用とするので、基本プライベートで使っているわけではないですよ。自由に使っていられるほどは儲かっていないとも言えます。ここは考え方次第ですが、手残りが月200万円以上になれば一部プライベートに回してもいいかな?いいよね……。

――新規参入したいという主婦大家がいたら勧めますか?

勧めます。主婦なら政策金融公庫かノンバンク、あるいは自己資金のみで始めることなりますが。今思えば創業から8年は女性起業優遇条件があるので、政策金融公庫で借りて立て続けに買っておけば良かったなと。自己資金で格安戸建てなどを買い増す手法でもいいと思いますよ。でも会社勤務していればもちろん融資の可能性が広いので、断然有利です。

――まだまだ大家業を続けていく予定ですか?

もちろん!一度やったらやめられまへん(笑)。今年は法人化して税金対策して手残りを増やすことが必要と思っています。また人口が急速に減少する日本で今のことを続けるのに疑問を持ち始めたところで、海外不動産の調査を始めました。

――最後に今後の目標は!?

手取り年5,000万円で脱サラ、海外移住です!


お話を聞くと、ご本人は軽く言っていますがそう簡単じゃないなと思わされました。勉強は欠かせず、投資判断は生半可な覚悟ではできそうにありません。しかし、「不動産投資は楽しい、通勤生活はもう考えられない」と断言するだけに、投資は「楽しい」もののよう。自分用の不動産を購入するにも悩んでばかりの筆者にはまぶしく見えました。

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