被爆者5団体 首相と面会 「血も涙もない」 政府対応に不満相次ぐ

 長崎の被爆者5団体は9日、長崎市内で安倍晋三首相や加藤勝信厚生労働相と面会し、国が定めた被爆地域の外で原爆に遭い、被爆者と認められない「被爆体験者」に対する制度の抜本的改善、未発効の核兵器禁止条約への署名・批准などを求めた。首相らの回答は従来の見解の域を出ず、被爆者からは「血も涙もない」と怒りや不満が相次いだ。
 県被爆者手帳友の会の朝長万左男会長(77)は、被爆体験者について「被爆者健康手帳が発行されず、多くの人が無念の思いで亡くなっていっている」と国の対応を批判。長崎の被爆地域はかつての行政区域で線引きされたとして、それを見直し、拡大するよう求めたほか、被爆体験による心的外傷後ストレス障害(PTSD)がある人の医療費助成制度の対象症状に「がん」を追加することなどを要望した。
 これに対し、加藤氏は、被爆地域外で健康被害が出るほどの放射線被ばくがあったかは「科学的な知見はない」と、国の従来の見解を繰り返した。「黒い雨」訴訟で、原告全員を被爆者と認定した広島地裁判決については、控訴期限の12日まで「皆さんの声をしっかり踏まえて考える」と述べるにとどめた。
 面会後、県平和運動センター被爆連の川野浩一議長(80)は、高齢化する被爆体験者や広島の原告に「耳を貸さない政府などありえない」と批判。安倍首相が核禁条約の署名・批准について否定的な姿勢を重ねて示したことに、長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長(79)は「全然、考えようともしない」と切り捨てた。


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