「新しい生活様式」は、不況につながるかもしれない!どうして?どうすればいい?

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全席売れても稼働率67%止まりとは

それは、航空機を予約した際のこと。緊急事態宣言が最後に解除された5都道県とほかの府県の間をまたぐ移動が全面解除されたのは6月19日です。筆者が6月下旬の所用で航空機をネット予約・決済してから画面上で座席指定しようとしたら、例えば3席横並びの中央の席が前から後ろまで全部といったように、特定の席が指定できなくなっていました。

調べてみると、団体客の先約などではなく、機内で少しでも「ソーシャルディスタンス」を確保するため販売をしない席だと分かりました。ずっと続けるものではないようですが、こうした“自主規制”は航空会社の収益を直撃します。

仮に[中央廊下の両側に1列3席×25列の客席]の機体とすると、総席数は150です。3席の中央全部を販売見合わせすると、全席売れたとしてもこの機体の稼動は100席で頭打ちになります。

どう頑張っても満席の3分の2の稼働率しか期待できない状況がもしも全社的にずっと続くとすれば、会社の先行きも不透明になってしまうでしょう。

「新しい生活様式」の3つの基本

新型コロナウイルスの広範な終息が当面は見通せず、一方で医療提供体制と社会経済活動の両立が必要な状況を踏まえ、「新しい生活様式」が公表されました(※1)。

感染防止の3つの基本として、(1)身体的距離の確保 (2)マスクの着用 (3)手洗い が挙げられ、(1)は具体的に「人との間隔は、できるだけ2m(最低1m)空ける」と明記されています。

こうしたソーシャルディスタンスが社会経済活動に与える影響は、先述の航空機の例だけでなく、もっと広範で広域的に及ぶでしょう。

例えばサービスの売上は、座席を使う商売であれば【客単価×客席数】で構成されています。客席数が大きく減ってしまう場合、以前と同じ水準の売上を確保するには客単価を上げるしかありません。しかし、客席数が半分になったからといって価格を倍にできるでしょうか。

そのためにお客が来なくなってしまえば、実際に埋まる客席数(稼働率)が一段と減って逆効果になりかねません。一方、客単価の値上げを我慢し続ければ、先行きはジリ貧です。

航空機に限らず、電車・バス・船ほか運輸業全般、飲食業、小売業、映画館・劇場・ホールなどでの興行、スポーツイベント等々、こうした影響を受ける事業はとても広範にあります。

ソーシャルディスタンス不況(?)

このような状況も「コロナ禍」の一側面なのでしょうが、ソーシャルディスタンスがもたらす新たな「禍」とか「不況」ともいわれています。

各業界団体でも「新しい生活様式」の公表を踏まえたガイドラインを取りまとめていて、例えば日本経済団体連合会(経団連)では、勤務環境に関して「従業員が、できる限り2メートルを目安に、一定の距離を保てるよう、人員配置について最大限の見直しを行う」と示しています(※2)。

社員の席がみんな2メートルも離れている会社は、あまりないでしょう。(※2)では通勤頻度を減らす環境として「テレワーク、時差出勤、ローテーション勤務」などを例示しています。実際に、部署単位で職場への出勤を一定率内に制限するような形で運用している企業も少なくないようです。

また上記のような勤務形態が次第に定着して日常的になると、今までのオフィススペースを縮小する動きが広がる可能性もあります。そうなると、貸ビル業にもソーシャルディスタンス不況の影響が及んでいくわけです。

まとめ

景気全体の回復への道のりは当初は「V」字形になると楽観視されていましたが、もっと時間がかかって、「L」字形になるとの見方が有力になっています。

ソーシャルディスタンスに代表される「新しい生活様式」ですが、コロナ禍終息後も定着するのか、あるいは非常時の遺物として忘れられていくのかは、まだまだわかりません。

いずれにしても、これまでのやり方やビジネスモデルを一度再点検し、ムダを削ったり新たな付加価値で競争力強化を検討する。そんな意識や行動が必要となっていくのでしょう。

[出典]
(※1)厚生労働省「新型コロナウイルスを想定した『新しい生活様式』の実践例を公表しました」
(※2)一般社団法人日本経済団体連合会「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」

執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士