語り継がれる夏に

 夏の甲子園予選の代替県大会が開かれていた先月末。プロ野球広島のエース大瀬良大地投手から、母校である長崎日大高野球部の3年生に記念品が届いた。「悔しい1年だろうが、これから先、一番に語り継がれる年になる」というメッセージを添えて▲コロナ禍で各種全国大会が中止となり、多くの3年生が目標を見失った異例の夏。彼らは「悔しい」という言葉では言い表せない苦しみを経験した▲そんな状況で開催された代替県大会。感染拡大を懸念して「最後までやれるのか」という声もあったが、その対策も含めて確かに記憶に残る大会になった▲優勝したのは全校生徒数116人の大崎高。清水央彦監督が率いて3年目の小規模校が、初めて夏の頂点に立った。鹿町工高は過去最高成績となる準優勝。壱岐高、長崎西高など公立7校が8強入りしたのも印象的だった▲春の選抜の代替大会「甲子園交流試合」が10日、開幕した。選抜に出るはずだった32校が、それぞれ1試合限定の真剣勝負に臨む。ブラスバンドも大声援もない。何もかもが特別な甲子園だ▲その球児の聖地にきょう11日、創成館高が立つ。ぜひ、県内のライバルたちの思いも胸に、この夏を最高のプレーで締めくくってほしい。その勝利もまた、語り継がれる「1勝」になるだろう。(城)

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