カネミ油症 東海地方に被害者団体設立 “空白地帯”で救済に力

 愛知県など東海地方に暮らすカネミ油症事件の被害者が、名古屋市を拠点とする被害者団体を初めて設立したことが10日までに分かった。会員の多くは被害が集中した五島市など九州出身で、事件が発覚した1968年以降に東海へ移住した。救済運動は近年まで西日本が中心で、団体のない東海では被害者同士の連携が難しく、救済や支え合いの“空白地帯”となっていた。新団体は孤立している被害者の窓口となり、次世代被害者問題にも取り組む方針。
 名称は「カネミ油症被害者東海連絡会」で、主に愛知、岐阜、静岡、三重の東海4県に暮らす被害者やその家族で構成。共同代表は名古屋市在住の認定患者の男性(61)=五島市玉之浦町出身=ら2人が務める。会員は五島市や福岡県出身の被害者9人で、今後も次世代や未認定患者を含めて入会を呼び掛ける。
 東海4県在住の認定患者数は、各県が把握しているだけで計65人(愛知47、岐阜5、静岡7、三重6)。認定患者の健康状態を調べ未認定患者の認定診査にもつながる油症検診は、名古屋市で年1回実施され、周辺自治体から数十人が受診している。
 現在、全国の被害者は、原因の汚染食用油が多く出回った本県や福岡県を中心に各地で暮らしている。被害者団体は、本県3団体と福岡、広島、関西などを合わせ、計13団体(東海除く)あり、昨年1月に全国組織も設立。各団体は被害者の意見を集約し、救済法に基づく3者協議などで国や原因企業カネミ倉庫と交渉してきた。一方、東海の被害者は要望や意見表明が難しかった。
 こうした状況を受け、支援団体のカネミ油症被害者支援センター(YSC)や日台油症情報センターなどが2年ほど前から、個別に東海の被害者と接触。所在確認や健康状態などの聞き取りを重ね、団体設立をサポートしてきた。
 東海連絡会は6月1日付で設立し、厚生労働省に届け出済み。半年後の次回3者協議から参加する。同会共同代表の男性は「東海では『カネミ油症』の言葉すら知らない人が多く、私も含め被害者は患者であることを伏せて生きてきた。子や孫の体調が悪く、不安に思っている人もいる。声を上げられない人のためにも次世代被害者の救済などに力を入れたい」と話している。


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