2021年度入試「主体性等」の準備は今のうちに済ませる、一般選抜出願には必須

2021年度入試での新型コロナウイルス感染症に伴う各大学の対応状況が概ね発表されました。中には個別試験の実施を取りやめた横浜国立大学のような大学もあり、入試日程・科目・方法等の変更点のチェックは必須です。また、2021年度入試では出願時に「主体性等」の入力が必要となる私立大学も多く、また国公立大学でも「志望理由書」等を新たに課す大学が増えています。受験生にとって出願時の負担が増えていますので、今から準備できるものは、今のうちに済ませておきたいところです。

国公立大は「面接」、「志望理由書」などを新たに課す大学が増えている

文部科学省は、2021年度入試での各大学の新型コロナウイルス感染症に伴う対応状況についてまとめたHPを開設しており、各大学へのリンクも設定されています。このサイトで各大学の対応状況が確認できます。この他にも入試についての変更点は、河合塾の大学入試情報サイト「Kei-Net」でも国公立大、私立大それぞれの特設ページがあり、内容が随時更新されています。

新型コロナウイルス感染症に伴う対応に話題が集まるため、受験生は忘れかけているかも知れませんが、学力の3要素のうちの1つ「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を一般選抜でも評価するという高大接続改革の結果、国公立大学では「面接」を新たに課したり、「志望理由書」の提出を求めたり、「調査書」を点数化する大学が増えています。

例えば、一橋大学は、合否ラインで志願者が同点で並んだ場合、調査書の内容を質的観点から点数化し、総合点の高い者から順に合格とするなど調査書を点数化します。こうした調査書の点数化の場合には、受験生本人が準備できることはありません。一方、東京外国語大学などのように、合否ライン上に位置する志願者の選抜に「高校時代に取り組んだことや将来に向けての意欲についての自己評価(チェックリスト)」、「高校時代に主体性を持って取り組んだこと(200文字以内)」を用いる、としている場合には、この200字の文章は今からでも作成しておくことが可能です。

この他、東北大学の「主体性評価チェックリスト」、横浜国立大学「自己推薦書」、高知大学「活動報告書」、佐賀大学「特色加点制度」、長崎大学「ペーパーインタビュー」なども事前に準備しておくと出願時の負担を軽くできるでしょう。国公立大学の場合、各大学が独自の取り組みを行っているため、統一されておらず、共通テストの自己採点後に急遽、出願校を変更する場合には、準備が間に合わないことも考えられますので、「志望理由」と「高校時代に取り組んだ活動」は、完結にまとめた文書を今のうちから用意しておけば、いざという時に出願大学に合わせてアレンジすることもできるでしょう。

文部科学省特設サイト

https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/detail/mext_00060.html

Kei-Net国公立大入試変更点

https://www.keinet.ne.jp/exam/2021/change/national/index.html

Kei-Net私立大入試変更点

https://www.keinet.ne.jp/exam/2021/change/private/index.html

→次ページ点数化されないものの出願時に求められるモノとは

私立大学は点数化されないものの出願時に「主体性等」の入力が求められる

私立大学は、受験者数が多いこともあり、「主体性等」の評価については国公立大学とかなり様相が異なります。また、各大学の対応がある程度統一的であるため、事前準備がし易いと言えます。私立大学の多くは、出願時に高校時代の活動などを入力することを必須としています。そして、多くの大学は得点化をしません(主要大学では関西学院大学が加点するとしています)。

例えば、早稲田大学の場合、受験生本人が自分自身の経験を振り返り、「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」をもって活動・経験してきたと受験生本人が考えていることについて100 文字以上 500 文字以内で記入することになっています。記入は出願要件ですが、得点化はせず、記入した内容は学生調査データの一部として、入学後の学部での教育の参考資料として活用するとしています。つまり、記入した結果は入試の合否判定には利用されません。多くの私立大学がこの方式です。

入学後の活用方法としては、成績が優秀な学生が高校時代にどのような活動を行っていたかを調査することで、入試制度の設計に活かすことが考えられます。退学者、成績不振者についても同様です。また、キャリアセンターが就活の際のアピールポイントを高校時代まで遡ってアドバイスするなどの活用方法もあるでしょう。ただ、それもその大学に入学した学生の場合に限られます。例えば、実質倍率10倍の場合では、合格しても入学しない受験生を含み90%以上の入力データが活用されないことになります(勿体ないことですが)。

こうして見ると、私立大学の場合は、一般選抜では「主体性等」は国公立大学ほど重きがおかれていないことが分かります。この点では受験生が私立大学一般選抜での「主体性等」評価を負担に考える必要はないでしょう。

ほとんどの私立大学では100文字以上の文章が求められている

先程の早稲田大学の場合は、「主体性等」活動・経験について、100 文字以上 500 文字以内で記入することになっていましたが、他でも字数を明示している大学を見てみると、学習院大学、慶應義塾大学、東京女子大学、法政大学も100字以上500字以内と早稲田大学と同じです。また、日本女子大学が100字から200字程度、南山大学は200字から400字程度となっています。つまり、最低限100字の文章を1つ用意しておけば、複数の大学を併願する場合でも使い回しが可能だと言うことです。

ただ、この100字というのは、他者に文章で何かを伝える場合には、字数が少ないため、かなりコンパクトにまとめなければならない文字数と言えます。SSHやSGHの学校で熱心に活動してきた生徒にとっては、とてもこの字数ではまとめきれません。しかし、課外活動や校外での諸活動には特に参加しないで、普通に過ごしてきた生徒にとってはかなり有り難い文字数です。そのような生徒の場合、「主体性等」について特に書くことがないのかも知れませんが、それでも、文化祭や体育祭ではクラスの全員が何かの係を担当することも多いため、例えば、体育祭で道具を準備する係をしたことがある生徒を想定すると、以下のような文例がすぐに作れます。

(文例1)

私は高校2年生の体育祭で道具準備係を担当した。運動があまり得意ではない私が、クラスに貢献できる方法を考え、自ら立候補した。他の係と協力しながら、体育祭を支えた達成感が今の受験勉強の粘りにつながっている。

これで101文字です。読み手にとっては随分と物足りないのですが、主体性を持って他者と協働した経験が書かれており、文字数も100字以上で良いと指定されていますので、必要十分条件を満たしています。出願要件として入力は求めるが、合否判定に用いないというのはそういうことなのでしょう。中には50字以上としている大学もありますので、かなり受験生に配慮をしてくれていると言えるでしょう。なお、例文の「体育祭」、「道具準備係」を他の行事や係・委員に変えても大体意味は通じますし、具体的なエピソードなどを加えると、次の文例ように200字ぐらいに拡張できます。

高校時代を振り返ってキーワードだけでも書き出しておく

(文例2)

私は高校2年生の体育祭で道具準備係を担当した。運動があまり得意ではない私が、クラスに貢献できる方法を考え、自ら立候補した。障害物リレーなど使う道具が多くて準備に時間がかかる競技は、他の係と話し合い、事前に何度も設営リハーサルを行うなど工夫をした。当日は忙しかったが、皆と協力して体育祭を裏方として支えたことで、これまでにはない達成感を得られた。この経験によって粘り強く取り組む力が成長したことを実感している。

(以上、204字)

これらの文例は、ユニークな活動経験のない生徒を想定しています。しかし、総合的な探究の時間などで、独自の取り組みを行った生徒の場合は、書く内容が豊富にありますので、前もって準備をしておかないと、出願時に何をどう書くかについて意外と迷うことも考えられます。その場合を想定して、今のうちから、ポートフォリオなどを活用して、キーワードだけでも書き出しておくと良いでしょう。

文部科学省が「ジャパンeポートフォリオ」システムを運営する「教育情報管理機構」の運営許可を取り消しましたので、今後のシステム自体の存続は現時点では不透明ですが、私立大学の「主体性等」の出願時入力は確実に必要です。1日に5分間でも良いのでキーワードのメモを作る時間を持っておくと出願時の負担がかなり軽減されるでしょう。

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