佐世保・浦頭供養塔 引き揚げ死没者を悼む 地域住民ら30人

供養塔の前で手を合わせる地域住民ら=佐世保市針尾北町

 終戦後、中国や朝鮮半島などから引き揚げる途中に命を落とした人々を悼む慰霊祭が11日、佐世保市針尾北町の旧浦頭検疫所跡であり、参列者が祖国の地を踏めなかった死没者の無念さに思いをはせた。
 同町には戦後、佐世保引揚援護局の検疫所が置かれ、海外から約140万人が船舶で帰国。船内では多くの人たちが伝染病や栄養失調などで亡くなり、約3800人の遺体が検疫所敷地で火葬された。
 検疫所跡では、当時を知る地元の森川普さん(84)が、30年以上前に地蔵菩薩(ぼさつ)を設け、供養を続けてきた。昨年7月には針尾地区自治協議会が供養塔を建立。お盆の時期に地域行事として慰霊祭を開いている。
 地域住民ら約30人の参列者が供養塔と地蔵菩薩の前で焼香し手を合わせた。同協議会の冨川安憲会長は「地元で起きた戦争の惨禍を次の世代に伝える必要がある」とあいさつ。森川さんは「命ある限り地蔵を守っていく」と決意を述べた。

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