IMSA:ポルシェドライバーが将来のLMDh参戦を睨み「つなぎ」のDPiシートを模索

 2020シーズン限りで、ポルシェはIMSAウェーザーテック・スポーツカー選手権GTLMクラスでのワークス活動を終了するが、そのドライバーたちは早くも将来のプロトタイプカーのシート獲得に向け、動き出しているようだ。

 2022年にIMSAが採用予定の新たなプロトタイプカテゴリー・LMDhについて、ポルシェは正式に参戦を決めてはいない。そんななか、複数のファクトリードライバーが、既存のDPiチームと2021シーズンのシートについて話し合いの場を持ったようだ。

 現在GTLMクラスのポルシェ911 RSRをドライブしているローレンス・ファントール、アール・バンバー、ニック・タンディ、そしてフレデリック・マコヴィッキの4名は、ポルシェの撤退により2021年に北米でのシートを失う危機にさらされている。

 ドライバーたちのDPiへのこのアプローチは、LMDhマシンが完成するまでの間、ポルシェがそのドライバーたちにトップレベルのプロトタイプマシンのドライビング体験を求めたことを示唆している可能性もある。

 プロトタイプカーでのレースに長い間関心を示してきたファントールは、来年にDPiマシンをドライブするというアイデアを、ポルシェ・カスタマー・モータースポーツの責任者であるパスカル・ズーリンデンに提案したことを認めたが、ズーリンデンからの返答はないという。

 2019年のGTLMチャンピオンであるファントールは、彼と彼のチームメイトにとって、「すべてが不確か」であることを認めている。

「いったいどうなるのか、本当に分からない状況なんだ」と先月に行なわれたメディアとのビデオカンファレンスでファントールは語った。

「アールにとっても同じことだけど、僕らの将来の夢がLMDhであることは秘密でもなんでもない。だが、残念ながらそれには数年かかる」

「ものすごく不確かなんだ。毎週のように、異なる話を聞く。じつのところ、ポルシェの人たちもLMDhについてはどうなるのか分かっていないと思うよ」

 ファントールはまた、ポルシェの承認が得られれば、来季はDPiマシンをドライブすることができると語る。

 ファントールにはLMP2マシンをドライブした経験がある。OAKレーシグのリジェでル・マン24時間にデビューし、翌年にはマイケル・シャンク・レーシング(MSR)のリジェLMP2でもル・マンを走った。

 2020年限りでチーム・ペンスキーがファクトリープログラムを終了することに伴い、現在GTDクラスでアキュラNSX GT3を走らせているMSRは、2021年にアキュラARX-05 DPiマシンを投入する可能性があるチームのひとつである。

「僕は本当にDPiをドライブしたいと思っているんだ」とファントール。

「DPiはLMDhへのステップではあるけれど、ポルシェの将来についてはどんなことも起こりうるし、変わりうるからね」

「自分が夢を見、やりたいと思っていることよりも少しだけ足りないことに、1年間は取り組まなければならないだろう。そのあとで、LMDhに乗れるといいね。ポルシェがすぐに(参戦決定を)知らせてくれるといいのだけど」

「一般論として、現在のドライバー・マーケットの状況は簡単ではない。世界中でストップしているプログラムは我々だけではないし、世界には優れたドライバーもたくさんいるからね」

912号車のレギュラードライバーを務めるバンバー(左)とファントール(右)。2021年の去就が注目される。

■ポルシェのLMDh参入は早くて2023年か

 一方、ポルシェのズーリンデンは2022年にポルシェがLMDhデビューをする準備ができていないことを示唆している。つまりポルシェとしては、IMSAにおけるGTLM撤退からLMDhのデビューまでに、少なくとも2シーズンの空白が生じることになる。

 ズーリンデンは、LMDhに関する決定はまだなされていない、と強調したうえで次のように語った。

「ものごとの決定という観点から見ると、(2020年の)12月に取締役会で参戦の決定が下され、2022年1月からレースがしたいとなった場合、2021年の6月までに完成したマシンがなければならないが、これはあまり現実的ではない」

「我々のスケジュールは、(LMDh)規定が開始される時期とは無関係である」

 なお、IMSAにおけるLMDh規則の導入が2023年まで延期されるという憶測が高まっており、複数のチームオーナーからはその決定がすでになされたとの話もSportscar365には寄せられているが、IMSAプレジデントのジョン・ドゥーナンはこれを否定した。

「2022年にLMDh導入が可能になることを、我々は引き続き望んでいる」とドゥーナン。

「しかし現在のニュースを見れば明らかなように、地球上の他のすべてのビジネスと同様に、自動車産業も大きな打撃を受けている」

「すべてはマーケットが、ひいてはマニュファクチャラーが語ることだろう。IMSAやACOは制限を設けることに興味はない」

 最終的なLMDh規則は、9月に行なわれるル・マン24時間レース期間中に発表されると見られる。

2019年はスーパーGT・GT500クラスでニッサンGT-Rをドライブし、1勝を挙げたマコヴィッキも、2020年レギュラードライバーのひとり。最高峰クラスでのル・マン24時間参戦のチャンスをうかがっているはずだ。

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