「1万いいね」の小説に芸人も作家も大絶賛 バイク川崎バイク「本が売れたら改名します!」

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ピン芸人の“BKB”ことバイク川崎バイクの初の著書『BKB ショートショート小説集 電話をしてるふり』(ヨシモトブックス)が、8月12日(水)に発売されました。

新型コロナによる自粛期間にネットの投稿サイトで書きためてきた作品は、どれも粒ぞろい。「BKB」の頭文字ネタで知られる芸風からは、ちょっと想像がつかない繊細な筆致は、まさに“意外な才能”です。今回は、そんな話題の書の作者であるバイク川崎バイクに直撃インタビュー。初の著書への思いや、芸人としての今後の展望などを語ってもらいました。

出典: ラフ&ピース ニュースマガジン

本書は、ネット上で無料公開されて大きな反響を呼んだ“すぐ読めて、もう一度読み返したくなるショートショート小説”の待望の書籍化作品。SNSで「いま一番泣ける小説」などと話題となった表題作をはじめ、厳選された連載作品に書き下ろし5作を加えた全50作品が収録されています。恋愛モノやミステリー、SFなど幅広いジャンルに挑戦していて、思わず涙してしまう感動作から、クスッと笑えるブラックコメディーまで、ラインナップは実に多彩。さらには著者によるセルフレビューもついた、まさしくBKB渾身の1冊です。

ついさっき藤井隆さんに褒められました

—『電話をしてるふり』は、コロナ禍の外出自粛期間が始まってから書き始めたそうですが、直接的なきっかけは?

今年の春、オズワルドの伊藤(俊介)という仲のいい後輩が、連載コラムの有料配信を始めたんですけど、そのときに「バイクさんも何か書きたいものあったら、やってみたほうがいいですよ」って勧められたんですよ。で、「俺、ショートショートは好きやけど……」って言ったら、「あ、それいいじゃないですか」と。

ただ、BKBの小説が有料で果たして読んでくれる人はいるのか、という問題が浮上しまして(笑)。じゃあ、俺はもう覚悟を決めて、無料配信にしようと。しかも、そのころにちょうど新型コロナで自粛が始まって暇になってきてたんで、毎日書こうと。それだったら、多少は世の中に広がっていくんじゃないかという、希望的観測のもとに始めました。いまにして思うと、世の中的に“家にいないといけない”という状況だったことが、いい方向に働いた感じですよね。

—連載当時は、毎日朝の8時19分にアップしていましたが、その理由は?

“バイク=819”という、それだけのことです、はい(笑)。普段から「BとKとB」で戦ってるもんでね、そういう“縛り”というか、自分に枷(かせ)を課すクセがあるのかもしれないです。要するに「M」なんやと思います(笑)。

――となると、執筆する時間帯は……?

お察しの通り、夜中です(笑)。もうめちゃくちゃ夜中。だいたいいつも午前2時、3時くらいに「さて、そろそろ」って、ようやく腰を上げる感じで。で、書き終わってネットに上げたら、そこから寝始めて。それから昼過ぎに起きて、「あつまれ どうぶつの森」(任天堂の人気ゲーム)をやったりしながらダラダラ過ごすという、そんな毎日でしたね。「どうぶつの森」やる時間に小説のこと考えろって話なんですけど。だからまぁ、日々“自転車”操業ではありましたよね、“バイク”ではなく(笑)。

出典: ラフ&ピース ニュースマガジン

—そうして続けた連載が、しだいにSNSなどで注目を集めるようになったわけですが、きっかけとなったのは、やはり表題作の『電話をしてるふり』ですか?

そこは間違いないですね。新作を投稿したら、毎回ツイッターでURLを張り付けてツイートしてたんですけど、『電話をしてるふり』のときは、「いいね」が1,3000くらい付いたんです。

手前みそですけど、読み物のURLを張っただけのツイートに、1万以上の「いいね」が付くことって、かなり珍しいらしいんですよ。写真がリンクされてるとかならまだしも、URLからわざわざ別のページに飛んで、しかも文章を読まないとあかんっていう、わりと手間のかかるものにこれだけの反応があるっていうのは、なかなかない。その上、作者はBKBとかいう、わけのわからん芸人ですから(笑)。だから、作品そのものが相当よかったんだなっていう実感はありましたね。

—具体的には、どういった反応が?

うれしかったのは、「ゴッドタン」(テレビ東京)のプロデューサーの佐久間(宣行)さんとか、まったく面識のない、お笑い業界の人たちがリツイートしてくれたんですよ。会ったこともない人が反応してくれてるってことは、やっぱり作品が認めてもらえたってことなのかなと。まぁ、お笑いの作品ではないんですけども。

そういえばついさっき、偶然お会いした藤井隆さんにも褒められたんですよ。めったに会うことのないというか、お会いするのは人生で3回目くらいの大先輩なんですけど(笑)、向こうから声をかけていただいて。「読んだよ、電話の小説。めちゃくちゃ泣いちゃったよ。優しい話だね~」って。「すごく繊細な人なんだね」という、ありがたいお言葉をいただきました。

それと、文壇の方々からも反響がありました。作家の岸田奈美さんからは、賞までいただきました(※岸田氏が投稿サイト「note」で開催している文章コンテスト「キナリ杯」で「特別リスペクト賞」を受賞)。

お笑いネタを考えるよりはるかにラク

—本書の帯には、作家の吉本ばななさんが推薦文を寄せています。

ばななさんは、実は3年くらい連続で、僕が毎年夏にやってる単独ライブを見に来てくださってるんです。もともとお笑いが好きで、僕のこともちょっと気に掛けてくれてるみたいで、別に僕が招待してるわけじゃなく、勝手に……って言い方は失礼か(笑)、普通にチケットを買って、お客さんとして来てくださってるんです。

だから、年に1回ごあいさつするだけの間柄なんですけど、この連載も読んでくれていることは知っていたので、本の出版が決まったとき、ダメ元でばななさんに帯の文をお願いしてみようということになり、僕から直接連絡させていただいて。そしたら、二つ返事で快諾していただきました。本当にありがたいですね。

――吉本ばななさんは「彼はいつも少しだけ哀しい、別の世界を見ているんだね」という一文を寄せています。

いやいや、恐縮です。あと、帯に「B(ばなな)K(感心)B(びっくり!)」って書いてあるじゃないですか。これ、僕とか出版社の人が考えたように思われるかもしれないですけど、ばななさんご本人が考えてくれたんですよ。「BKB」作文としては完璧ですよね。さすが単独ライブの常連だけあるなっていう(笑)。

――「いつも少しだけ哀しい」というのは、ハッピーエンドだけど、ちょっと切なさを感じさせるというBKBさんの作風を見事に言い表していますよね。

確かにバッドエンドは好きじゃないし、ほっこり系の終わり方は好きですけど、かと言って、ご都合主義すぎるハッピーエンドも好きじゃなかったりするんですよね。だから、そのあたりは自分ではよくわからないです。

出典: ラフ&ピース ニュースマガジン

――ほかにこの小説集を書く上で心掛けたこと、意識したことは?

やっぱり、自分自身が読みたくなるものを書こう、というのは心掛けましたね。それと、ショートショートっていう小説のジャンルを知ってもらいたかった、というのもあります。いまの若い人って、意外とショートショートのことを知らないんですよ。「BKBさんが作った言葉ですか?」と言われたこともありますから。「ショート」っていう言葉を2つくっつけた造語やと思ってました、みたいな。バイク川崎バイクっていう僕の名前から連想が働くのかもしれませんけど(笑)。でもそういう、ショートショートを知らない、ふだん小説を読まないような若い人にも読んでほしかった。短くて読みやすくて、オチに意外性があって、というショートショートの面白さを知ってほしかったんです。

—BKBさんにとって、小説を書く作業は、お笑いのネタを作る作業と通じる部分はあるんでしょうか。

この小説集には笑いの要素はほぼないですけど、筋の通った物語を書くっていう作業は、どこかでコント作りに通じてるのかなとは思います。ただ僕の中では、それよりもBKBがこういうもんを書くことによって、「あ、この人って、こんなお話も書ける人なんや。そしたら、この人のコントも見てみようかな」っていう、そういう広がり方を狙っているところがあって。これまでBKBのファンでいてくれた人にも、もちろん読んでほしいですけど、それ以外の方が、BKBという芸人に興味を持つきっかけになったらいいなと。

—実際、小説を書く作業と、コントの台本を書く作業とでは、まったく違う脳みそを使っている感覚ですか?

そうですね。正直、ボケなくていい分、小説のほうがラクかもしれないです(笑)。小説は、お話を考えるのは大変ですけど、“ボケて、ツッコんで”はいらないんで。それと、書いたら終わりで演じなくていいですからね。そういう意味では、単独ライブのネタを考えるよりは、はるかにラクですね。

――とはいえ、ストーリーの構成も作り込まれていて、文章表現も多彩な印象を受けました。

ありがとうございます。でも、「文章が多彩」というのは、たぶん物語の設定が幅広いからそう見えるだけだと思います。僕、表現力は大したことないですから。むしろ、けっこう似通った言葉を使いがちなんで。

「ブック川崎ブック」か「文豪川崎文豪」に!?

――BKBさんの文章力は、どのように培われたものなんでしょうか。

いちばん影響を受けてるのは漫画ですかね。漫画はもう、アホほど読んでるんで。あとは、ほかの作家さんの言い回しをよくマネさせてもらってます(笑)。たとえば、西尾維新さんの小説に、よく「純然に」って言葉が出てくるんですよ。それまで僕、「純然」なんて言葉、まったく知らなかったんですけど(笑)、それを使わせてもらったり。あと、「踵(きびす)を返す」っていう言い方も、小説によく出てくるから俺も使ってみようとか。そういう文学的な表現を使ってみたくなるときってあるじゃないですか。でも、それをエッセイで書いたら、ダサいというか、恥ずかしいでしょ? でも、小説だと堂々と書ける。堂々とカッコつけれるんで。

――エッセイを書きたいという意欲はないんですか?

ないですないです。僕はやっぱり、物語が好き……というわけでもないか(笑)、う~ん、なんて言うんですかね、正直、俺の熱い思いなんか誰が興味あんねん、って思うんですよ。同じピン芸人でも、バカリズムさんぐらいの人やったら、エッセイも成り立つんでしょうけど、何者かもようわからん僕みたいな芸人が、「俺はこう思ってる!」って熱く語るのは、おこがましいし照れくさいんですよね。そもそも僕は“熱さ”が欠落した人間なんで(笑)。だから、今後また何か書くとしたら、フィクションがいいですね。

出典: ラフ&ピース ニュースマガジン

――やはり、ショートショートという形にこだわっていきたい?

まぁしばらくは、そうですね。この本が万が一売れたりして、ショートショートの芸人といえばバイク川崎バイク、みたいなことになったらうれしいなと。ショートショートを書く芸人って、いままであんまりいなかったと思うんで。

ちなみに僕、この本が売れたときは、“ブック川崎ブック”に改名したいと思ってるんですよ、“文豪川崎文豪”とどっちにするか迷ってるんですけど(笑)。そういう意味では、僕の書いてきたショートショートがこうして1冊の本という形になったことによって、この先、文章の仕事をさせてもらえる可能性もなくはないと思うんで、ありがたいですね。

――では、具体的なショートショート集第2弾の構想は?

いやいや、まだそんなことはね、おこがましいです。まず、この本が売れてくれないと。結局、みなさんに読んでもらわないと意味ないですから。

――本を出版したことで、今後、単独ライブなどお笑いの活動にもなにか影響は出てくるのでしょうか。

勝手なイメージですけど、1人コントなんかは、やりやすくなるんちゃうかなと思ってます。でも、まだまだなんですよね。どうせまだ知らない人も多いんですよ、この本のこと。『電話をしてるふり』も、和牛の水田(信二)がリツイートしてくれましたけど、それに「いいね」だけして、読んでない和牛ファンは山ほどいると思うんですよ。「水田さんが薦めてる! いいね! 読まないけどね!」って(笑)。そういう人にこそ、読んでもらいたいんですけどね。本当、振り向かせるの大変なんです。

――そのための策はありますか?

勝手なことを言わせてもらえば、映画とかドラマとか、映像化されたりしたら、また広がっていくんでしょうけど……どうなんでしょう、こればっかりはもうわかんないですね、本を出すこと自体が初めてなんで。ただ、ひとつ思うのは、お笑い芸人、お笑いファン以外の人たちに読んでもらって、「楽しかった」って言ってもらうことが大事なのかなと。芸人本って、身内の間だけで話題になって終わる確率が高いような気がするんで。

――最後に「ラフマガ」読者に向けてメッセージをお願いします。

えーっとですね、和牛と、アインシュタインとアキナと、あと、すゑひろがりずのファンで、この本をまだ読んでない人は全員読んでください(笑)。あと、僕に対して“「B」と「K」と「B」で作文を作る芸人”みたいなイメージしか持ってない人は、ぜひ読んでみてください。“文豪川崎文豪”の一面を見ていただけたらうれしいです(笑)。

出典: ラフ&ピース ニュースマガジン

書籍概要

2020年8月12日発売
書籍名:『BKBショートショート小説集 電話をしてるふり』
著者:バイク川崎バイク
定価:1,200円+税
発行:ヨシモトブックス
発売:ワニブックス
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