【F1第5戦無線レビュー(2)】逆転で首位浮上のフェルスタッペン「水分とってる? 消毒もしておいてね」

 2020年F1第5戦70周年記念GPでは、レース前半からメルセデス勢がタイヤに苦しむ一方、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)はブリスターなどにも悩まされることなく順調に走行を続けていた。

 レース後半、ハミルトンのピットインに伴い首位に立ったフェルスタッペンは、ジョークを飛ばす余裕も見せてトップでチェッカーを受けた。一方チェッカー後には、自らのミスを詫びたり、怒りをあらわにするドライバーも。そんな70周年記念GPのレース後半を無線で振り返る

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 1回目のピットアウト直後にバルテリ・ボッタス(メルセデス)を逆転してトップに立ったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)。2回目のピットインのタイミングは同じ32周目だった。ふたりともハードに履き替えてピットアウト。両者の位置関係は変わらない。

レッドブル・ホンダ:このタイヤで最後まで走る。残りは20周だ。君の最初のスティントは26周だったから、問題はない

フェルスタッペン:モードは?

レッドブル・ホンダ:モード10

2020年F1第5戦70周年記念GP バルテリ・ボッタス(メルセデス)&マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 一方、フェルスタッペンに対してアンダーカットを仕掛けられなかったハミルトンはステイアウトして、セーフティーカーが自分に有利なタイミングで入ることを期待するしかなかった。しかしセーフティーカーは入らず、逆にブリスターに深刻に悩まされ始める。

ハミルトン:マシンがなんか変だ。左リヤで起きている

メルセデス:了解

ハミルトン:左リヤ、大丈夫?

メルセデス:わかった。とにかく、いまはその状態で少しでも長く走ることに徹してほしい

ハミルトン:わかった。でも、タイヤはブローしないよね?

メルセデス:ただブリスターができて、ペースが落ちているだけだ

 こうなると、レッドブル・ホンダ陣営は無理をする必要がなくなった。暫定トップを走るハミルトンとの差は10秒程度なので、ハミルトンがピットインすれば、余裕で逆転できる。あとは後ろのボッタスのペースを見て走ればいいからだ。

レッドブル・ホンダ:ライバルのペースを見て走るように。ハミルトンとの差を詰めなくていいから

 41周目にハミルトンがピットイン。3番手に後退するも、新品のハードタイヤであっという間に2番手のボッタスに追いつく。

メルセデス→ボッタス:クリーンに戦ってほしい。ただし、スペースは残すように

メルセデス→ハミルトン:自由にレースしていい

 後方でメルセデス同士がバトルしているころ、フェルスタッペンは前戦イギリスGPに続いて、またこんなジョークをとばした。

フェルスタッペン:ちゃんと水分を摂ってる? 今日は手に汗握ったから、ちゃんと消毒もしておいてね

 そして、52周のレースを終えたフェルスタッペンはトップでチェッカーフラッグを受けた。

2020年F1第5戦70周年記念GP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

レッドブル・ホンダ:やったな、マックス。完璧だった。そして、本当に速かったよ

フェルスタッペン:ハハハッ!! なんていうレースだ。チームもファクトリーもみんなよくやった。この調子でプッシュして行こう。本当に最高の1日だ。それから、ホンダのみんなにも感謝している。ありがとう。今日はすべて完璧だった。だから、今日はお祝いしなくちゃ

ホーナー:信じられないレースだったよ、マックス。完璧に消毒したな。素晴らしいパフォーマンスだった。よくやった

フェルスタッペン:そうだね、消毒に水分補給。でも、今日の僕には水分補給は必要なかったけどね、ハハハッ

レッドブル・ホンダ:1回目のピットストップ直前のラッブタイムは1分31秒0だった。25周も走ったタイヤだったのに……信じられないよ、マックス

フェルスタッペン:ハードタイヤだけど、そんなに硬くなかったからね

レッドブル・ホンダ:タイヤかすをピックアップするのを忘れるなよ

ハミルトン:今日は僕たちの日じゃなかった。しっかりと分析しよう。

2020年F1第5戦70周年記念GP ルイス・ハミルトン(メルセデス)&マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 タイヤ管理が難しいレースで、10番手からスタートし、9位でフィニッシュしたランド・ノリス(マクラーレン)はチェッカーフラッグを受けると、まず勝者がだれだったのかを尋ねた。

ノリス:だれが勝ったの?

マクラーレン:マックスが勝った。マックスだ

ノリス:やっぱり、レジェンドだ

 このあと、パルクフェルメに戻ってきたノリスは、フェルスタッペンの帰りを待ち、フェルスタッペンに握手した。

 7番手からスタートしたにも関わらず、チームの戦略によって11位に終わったピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)は、チームへの怒りを爆発。また10番手を走行中の31周目にスピンして14位に終わったダニエル・リカルド(ルノー)は、自分に落胆するレースとなった。

アルファタウリ・ホンダ:(ピットロード入口で)OK、スローイン、プリーズ。スローイン

ガスリー:なんてなレースだ。*。

アルファタウリ・ホンダ:了解。フェイル84。フェイル84

ガスリー:なぜ、あんなに早く1回目のピットインを指示したのか、理解できない。タイヤは問題なかったし、プレッシャーも受けていなかった

アルファタウリ・ホンダ:わかっている

ガスリー:渋滞の中でタイヤがダメになってしまったじゃないか

アルファタウリ・ホンダ:言いたいことはわかっている。ピエール、君の言う通りだ

2020年F1第5戦70周年記念GP ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)

リカルド:アアア、みんな本当にごめん。なんてな1日だ

ルノー:わかっているよ、ダニエル。早く立ち直って、来週へ向けて一緒にレースを分析しよう

 同じサーキットでの2週連続開催となった70周年記念GP。しかしレース結果も、その内容も、1週間前とはまったく違った。

2020年F1第5戦70周年記念GP ダニエル・リカルド(ルノー)
2020年F1第5戦70周年記念GP ランド・ノリス(マクラーレン)&アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)

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