楽天で進化を見せる助っ人ロメロ 打撃指標や傾向から見える好調の要因とは?

楽天のステフェン・ロメロ【写真:パ・リーグインサイト】

ここまでリーグトップの14本塁打を放っている楽天ロメロ

来日4年目を迎えた助っ人にとって、今季はキャリア最高のシーズンとなりそうな気配だ。3シーズンにわたってオリックスで活躍したステフェン・ロメロ外野手は今季から楽天に新加入。あっという間にチームに溶け込み、確実性と長打力をあわせ持った打撃を活かして、チームの主軸の一人として出色の活躍を見せている。

そんなロメロだが、オリックス時代にケガに悩まされてきたこともあってか、今季も序盤戦ではジャバリ・ブラッシュ選手と併用されるケースも少なくなかった。そんな中で、リーグ1位タイの14本塁打、同3位の打率.3402という数字を記録し、成績の面でも優秀な数字を残している。

これだけの打撃成績を残しているロメロが時には6番以下を打つこともあるという事実が、今季の楽天打線の脅威をより強めているのは間違いないところ。ただ、ロメロは昨季まで在籍したオリックスにおいても、出場した試合では常に優秀な成績を残していた。これまで日本球界で残してきた成績は下記の表の通りとなっている。

ステフェン・ロメロの年度別成績【表:パ・リーグ インサイト】

規定打席に到達したシーズンこそ2018年の1度のみ。昨季は81試合の出場にとどまったものの、打率.305、OPS.902と出場した試合ではハイレベルなパフォーマンスを見せていた。また、来日初年度の2017年も26本塁打、OPS.838と十分な数字を残しており、故障さえなければその実力は一流レベルと言える。

その一方で、打点に関しては3年続けて60点台と、その打撃能力からすればやや物足りないもの。ただ、昨季はわずか81試合で63打点を挙げているのは特筆もので、143試合に換算すると約111打点となり、2019年の打点ランキングでhは3位に相当する数字だ。

ロメロが打順に9人並ぶと1イニングに1点以上入ることを指標が示す

オリックス時代から優れた打撃内容を示していたロメロだが、やはり、OPS1.100を超える数字を残す今季の活躍ぶりは目を見張るものがある。今回は各種の指標や、コース別や球種別の成績、打球方向といった要素を基に、ロメロが今季見せている活躍の理由をより深く掘り下げていきたい。

まずはセイバーメトリクスの分野で用いられる指標をもとにロメロの得点能力について評価していきたい。

野手の得点能力を示す数値である「XR(eXtrapolated Runs)」、ある打者9名で打線を構成した場合、1試合平均で何点取れるかを示す「XR27」、打率よりも長打と四球の数を重視した指標であり、“第二の打率”とも呼ばれる「SecA(Secondary Average)」という3つの指標におけるロメロの成績はそれぞれ以下の通りとなっている。

ステフェン・ロメロの年度別打撃指標【表:パ・リーグ インサイト】

XRの計算には各種の安打数、四球、盗塁数といった積み上げ式の数字が多く用いられることもあり、出場試合数の少なかった2019年と、まだシーズンの3分の2近くを残している2020年に関しては優れた打撃内容と比較するとやや控えめなものとなっている。

だが、そのXRをもとに計算されるXR27においては、その打撃内容に即した変化が生じているといえよう。直近の2年間では1シーズンごとに約2点ずつ数字を向上させており、2020年にはロメロが9人いれば、1イニングに1点以上が入るという領域にまで達している。盗塁数も評価対象となるXR27において、今季0盗塁のロメロがこれだけの数字を記録しているのは注目に値するだろう。

ど真ん中、そして内角低めで高い打率を示すロメロの打撃

また、SecAにおいても昨季までに比べて.160以上の差が出ており、こちらの面でも長足の進歩が見られる。長打力、出塁率ともに、ロメロ選手にとっては従来からの長所といえる分野だったが、今季はそれらの武器をさらに研ぎ澄ませているということがOPSを含めた各種の指標にも表れている。

次に今季のロメロが記録している、投球コース別の打率について見ていきたい。

今季のステフェン・ロメロのコース別打率【表:パ・リーグ インサイト】

多くのコースで打率.300以上を記録していることがわかる。ど真ん中の打率は.750、インコース低めの打率が.857と、2つのコースを極めて得意としている点は興味深い。打者によってはこのコースなら高い確率でヒットにできるという、いわゆる「ツボ」のようなものを持っているケースが往々にしてあるものだが、今季のロメロにもそれが2つある。

また、低めのボールコースの球に対しても一定の打率を記録しており、ローボールヒッターの傾向も。それでいて、高めの球に対してもストライクゾーンであれば.300以上の数字を記録しており、総じて穴が少ない打撃を見せていることが、今季の好成績にもつながっているのではないか。

得意としているコースが多いが、アウトコースの低め、インコースの真ん中という2つのコースに対してはやや苦しめられているようだ。インコース、アウトコースともに他の高さに来る球は得意としているだけに、この2つのコースへの対応策を見いだせれば、さらなる打撃成績の向上も見込めるかもしれない。

満遍なくどの球種にも高い打率を残し、苦手な球種が見えない

続けて、球種別の打率についても見ていきたい。

今季のステフェン・ロメロの球種別打率【表:パ・リーグ インサイト】

フォーク、カットボール、スライダー、シンカー/ツーシームに対しては打率.400以上の数字を残しており、真っ直ぐとチェンジアップに対しても打率.300以上を記録。速い球にも緩い球にも対応できる能力の高さが数字に表れている。

大半の球種に対応している一方で、シュートに関してはやや苦慮しているとも取れる数字が残る。ただ、シュートに近い球種であるツーシームやシンカーに対しては、全球種の中でも最も高い打率を記録しているという面もある。それだけに、今後改善が見られる可能性も大いにあるのではないだろうか。

安打になった打球の方向に目を向けると、左方向が14本と最も多く、センター方向が9本、左中間方向が8本、右方向が4本、右中間は0本と、長距離砲らしく引っ張って記録した安打がやや多くなっていた。その一方で、逆方向への打球は少なかったものの、センター返しの数もやや多くなっており、引っ張り専門ではないという点も興味深い。

その傾向がより顕著となっているのが本塁打の方向で、右方向への本塁打が2本だったのに対し、中堅方向と左方向がそれぞれ6本と、センターから左への本塁打に関しては同数となっている。柵越えも含めてセンター方向に強い打球を飛ばすことができるという点も、ロメロが持つ大きな特徴の一つだ。

最後に今季放った本塁打の内訳について見ていこう。左方向への6本塁打はカットボールが3本、スライダーが2本、カーブが1本とスライダー系の球種を引っ張ったものが多くなっている。コースはインコース低めの球をうまく拾ったものが3本、アウトコース高めに入ってきたカットボールを引っ張ったものが1本、ど真ん中に入ってきた変化球を逃さずに捉えたものが2本と、対応力の高さが示されている。

本塁打の方向もスライダー系をレフト、ストレート系をセンターからライトに放っている

右方向への2本塁打は、いずれも外角真ん中へのストレートを逆方向に流し打ったもので、逆らわずにスタンドまで持っていく打撃技術とパワーの詰まったもの。先述の通り、逆方向への安打の数自体は少ないものの、本塁打の数自体は引っ張ってレフト方向に運んだものと1本しか違わない点もポイントだ。

そして、左方向と並んで多かった中堅方向への本塁打は、ストレートが4本、ツーシームが1本、スライダーが1本と、速球系の球が多くなっていた。投球コースに関してはアウトコースが3本、インコース高めが2本、真ん中低めが1本とさまざまであり、速い球を狙った際のタイミングの合わせ方の上手さと、先述した各コースへの対応力の高さが反映された内容といえる。

数字に表れない面としては、走塁面でも貪欲に先の塁を狙う姿勢を持っており、時には二塁へのヘッドスライディングも敢行するなど、プロとして手を抜かない姿勢が垣間見えるところもロメロの魅力の一つ。守備でもフェンスに激突しながら好捕を見せるシーンもあり、その気概が若いチームに与える良い影響は、決して小さくはないことだろう。

豪快な打棒とたびたび見せるハッスルプレーで、加入初年度からチームに欠かせない存在となりつつあるロメロ。故障もあって、これまで個人タイトルとは縁がなかったが、開幕から圧巻の打棒を見せている2020年はまさに大チャンスといえる。今季こそケガに悩まされることなく、2年ぶり2度目の規定打席到達を果たし、このままタイトルを争うような活躍を見せ続けてほしいところだ。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

© 株式会社Creative2