スペースX、スターシップ試験機「SN5」による高度150mへの飛行に成功

飛行するスターシップ試験機「SN5」(イーロン・マスク氏のツイートより)

スペースXは日本時間8月5日、開発中の大型宇宙船「スターシップ」の試験機「SN5」による短時間の無人飛行試験を実施しました。離陸したSN5は高度150mまで上昇した後に、無事地上への着陸に成功しています。

Starship takes flight pic.twitter.com/IWvwcA05hl

— SpaceX (@SpaceX) August 5, 2020

スターシップは月や火星への飛行も想定した完全再利用型の宇宙船です。機体は全長50m、直径9mと大型で、地球からの打ち上げ時に使われるブースター「スーパー・ヘビー」と組み合わせると、アポロ計画で使われたサターンVロケット(全長110m)を上回る全長120mに達します。スターシップは旅客輸送用のクルー型と貨物輸送用のカーゴ型に分かれており、クルー型には100名の搭乗が可能で、カーゴ型は地球低軌道に100トンのペイロード(衛星や貨物など)を輸送できます。打ち上げ後に軌道上で推進剤の補給を行うことで、月や火星にも100トンのペイロードを輸送可能とされています。

スペースXは2019年8月に小型の試験機「スターホッパー」による高度150mの飛行試験に成功。同年10月には実物大のプロトタイプ「Mk1」を公開し、2019年中に高度20kmを目指した飛行試験を行うとしていましたが、その後の地上試験において相次いで機体を損傷・喪失しています。

今回実物大の試験機として初めて飛行に成功したSN5は、Mk1では3基搭載されていたラプターエンジンが1基しか取り付けられておらず、機首部分や翼も装着されていませんでした。さながら貯水塔かサイロが飛んでいるような光景ですが、昨年飛行したスターホッパーからは着実にスケールアップを果たしています。今後は並行して製造された「SN6」や、機首部分と翼も備えた「SN8」による飛行試験が実施される見込みです。

なお、ZOZOの元社長・前澤友作氏が複数名のアーティストとともにスターシップに乗り込み、2023年に月周辺を飛行する予定であることが昨年発表されています。今回の飛行試験成功により、前澤氏らの月周回旅行実施にも一歩近づいたことになります。

火星に着陸したスターシップを描いた想像図(Credit: SpaceX)

Image Credit: SpaceX
Source: SpaceX / NASASpaceFlight.com
文/松村武宏

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