小林雅英氏が驚嘆する“鯉の謎”「高卒入団の若手の体がみるみる大きくなる」

広島・坂倉将吾【写真:荒川祐史】

今季は強打の捕手・坂倉、20歳羽月も1軍でプレー

広島は主に救援投手陣の不調で開幕から出遅れ、Bクラスとなっているが、今季もまた、新たな“若鯉”が台頭している。かつてロッテの絶対的守護神として大活躍した野球解説者の小林雅英氏も「なぜ広島ではこうも次々と凄い野手が育つのか」に注目している1人だ。

今季、成長著しいのが、4年目・22歳の坂倉将吾捕手。左打ちの強打が売り物で、高い打率をマークしている。スタメンマスクをかぶる試合も多く、侍ジャパンの主戦捕手である会沢、磯村らと高いレベルの定位置争いを展開している。

小林氏は「広島の野手は総じて、高校から入ってきた頃は華奢でも、技術の向上とともにみるみる体が大きくなる。体つきが他球団と一回り違います。その結果として、スイングも強くなる」と語る。「まずハムストリング(太もも裏)の肉付きがよくなり、次いで腕が太くなっていく印象。丸(現巨人)も、(鈴木)誠也も、會沢もみんなそうでしたし、坂倉にもその傾向が見られます」と見ている。

長年、不思議だった“カープの謎”を解き明かそうと、小林氏は4年間務めたロッテ1軍投手コーチの退任が決まった2018年秋、宮崎・日南で行われていた広島の秋季キャンプを視察に出かけたという。「1日中、練習を観察してみましたが、僕が在籍したロッテ、巨人、オリックスと比べて、大きな違いは見つかりませんでした。ただ、マシン打撃で150キロを軽く超えるような速い球を、空振りしたり完全に振り遅れたりしながら、必死に取り組んでいる姿が印象的でした」

他球団でもマシンを160キロに設定することはあるが、広島では日頃から“超速球”に目を慣らすことが、野手の成長を促しているのだろうか。「それだけではなく、ウエートトレーニングなのか、食事なのか、外から見えない部分にも何か要因があると思います」と小林氏は興味津々だ。

中堅の堂林も11年目で打撃開眼

坂倉だけではない。鹿児島・神村学園高からドラフト7位で入団し2年目・20歳の羽月隆太郎内野手も、今月7日に初の1軍昇格を果たすと、同日の阪神戦に「2番・二塁」でスタメン出場し、4打数2安打3打点。躍進への足掛かりをつくった。また、昨季初めて規定打席に達した西川龍馬内野手は、今季安定感を増し、ひと皮むけたところを見せている。

異色なのが、堂林翔太内野手である。鳴り物入りでプロ入りし、毎年期待されながら裏切り続け、昨季の1軍出場はわずか28試合、打率.206のありさまだった。ところが、今季は打撃開眼。プロ11年目、28歳での遅咲きブレークで周囲を驚かせている。

小林氏は「監督が投手出身の佐々岡さんに代わったことが、吉と出ている気がします」と言う。「堂林はこれまで野手出身の野村謙二郎元監督、緒方前監督のもとで、大きな期待をかけられ、重圧を感じながら鍛えられてきました。自分への視線が少し緩み、ふっと肩の力が抜けて才能を発揮できるようになったのではないでしょうか」と精神面に要因があるとみている。

若手、中堅が見違えるほどの力を発揮し、一方で35歳のベテランで移籍2年目の長野久義外野手も“復活”。一昨年までリーグ3連覇していた広島にはまだまだ、底力が残っているとみてよさそうだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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