“地獄”に暮らし 特徴的 【インタビュー】市観光商工部理事 加藤雅寛氏

「自分が楽しめないものは人にも勧められない」と、電動アシスト自転車の乗り心地を確かめる加藤理事=雲仙市、雲仙温泉街

 長崎県雲仙市の観光戦略の策定、推進のため、4月に環境省の加藤雅寛・国立公園保護管理企画官(43)が市観光商工部の理事として登用された。加藤理事は2012年5月まで国立公園雲仙の自然保護官として、地域再生行動計画「雲仙プラン100」策定に尽力。その後は同省で、観光誘致を促す「国立公園満喫プロジェクト」などに携わってきた。観光まちづくりの手腕を買われて舞い戻った加藤理事に、雲仙温泉の課題や戦略の進め方を聞いた。

 -8年ぶりに戻ってみて、雲仙温泉の現状は。
 雲仙市に招いてもらったからには、観光振興に精いっぱい取り組む。「プラン100」を振り返り、洗い出した課題の一つが、雲仙の素晴らしい魅力を活用できるプレーヤー(担い手)やノウハウの不足。観光戦略はあまり手を広げず、優先順位を付けて取り組む。

 -足りていないプレーヤーをどう増やす。
 戦略策定委員と、具体的な事業を考えるワーキンググループには、環境省や県、民間団体からも参加してもらっている。「地元を使おう」「自然を愛そう」など六つの行動指針と、「個の総力戦」「仲間を集める」など三つの意識を共有して同じ方向に進んでいる。

 -雲仙温泉の魅力は。
 全国的に見て、自然の真っただ中に地獄があり、そこに人が暮らす環境は他にはなく特徴的。雲仙地域は島原半島の中心に位置しているので、農漁業や食といった半島全体の魅力と観光をつなげ、半島内で6日間滞在してもらう形に持っていきたい。

 -コロナ禍で観光客に安心安全をどう提供する。
 雲仙市内の宿泊施設では(市、県、長崎大などで取り組む)コロナ予防対策認定を受けるための審査を進めている。認定制度の対象を、市独自に商店や飲食店にも広げるよう検討している。

 -戦略を進める上で大事にしていることは。
 地元に愛してもらうこと。コロナ禍でも市民、県民の宿泊に支えられ感謝している。地域の人が楽しめる観光地じゃないと、遠くの人はわざわざ来ない。雲仙温泉が再び本物の観光地を目指す過程で重要なことを教えてもらった。観光戦略もプレーヤー自身が楽しめる事業を積み重ねていく。


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