レッドブル・ホンダ分析:ハードタイヤが使えず戦略は似通ったものに。2番手浮上のチャンスを活かせず

 2020年F1第6戦スペインGPのレース前、国際自動車連盟(FIA)から、パルクフェルメ後に交換された各マシンのパーツの一覧が発表された。それによれば、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)はほかのいくつかのパーツとともに、ICE、TC、MGU-H、MGU-Kを交換していた。

 ただし、それらはすべて、すでに使用していたコンポーネントで、3基目を投入したわけではない。また今回の交換は、予選でのパワーユニット(PU)のデータに異常を確認したため、万全を期してFIAに申請し、許可を得たうえでの交換であり、壊れたわけではない。したがって、現時点では3基でシーズンを戦うという予定には変わりはない模様だ。

 日曜日のバルセロナ-カタロニア・サーキットは気温30度、路面温度は49度と、今シーズン最も暑いなかでスタートが切られた。スタートでは、フェルスタッペンは1コーナーでバルテリ・ボッタス(メルセデス)の前に出て2番手へ浮上。優勝した前戦70周年記念GPのように、ルイス・ハミルトン(メルセデス)へプレッシャーをかけるには、絶好のシチュエーションとなるはずだった。

2020年F1第6戦スペインGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 しかし、その差がなかなかDRS圏内となる1秒以下まで縮まらない。その理由として、まず考えられるのは、スペインGPに投入されたタイヤは、第5戦70周年記念GPよりも1段階硬い組み合わせだったことだ。

 加えて、タイヤの内圧も異なっていた。70周年記念GPではフロントが27.0psi、リヤは22psiに引き上げられていたが、スペインGPではフロント23.0psi、リヤも20.5psiと大きく引き下げられていた。これは同じ組み合わせだったイギリスGPよりも低い設定だった。ピレリによれば、バルセロナ-カタロニア・サーキットがシルバーストンよりもタイヤにかかるストレスが小さいからだった。

 内圧が下がってタイヤと路面との接地面積が増えると、熱が一箇所に集中しないため、ブリスターは発生しにくくなる。それが1週間前にブリスターに悩んだメルセデス勢が、スペインGPではほとんど悩まされずに済んだ要因だと考えられる。

 逆に11周目以降、徐々に引き離されていったフェルスタッペンは21周目、ハミルトンよりも先にピットインするしかなかった。このとき、フェルスタッペンはハミルトンから7秒以上遅れており、もはやアンダーカットすることはできない。かといって、タイヤ戦略の違いで逆転を図ることも難しかった。

 というのも、今回スペインGPに持ち込まれた3種類のタイヤは、70周年記念GPに比べて1ランク硬かっただけでなく、バルセロナ-カタロニア・サーキットで使うタイヤとして、そもそも硬かったからだ。そのことは、初日にハードを使用したドライバーの多くが、「ハードは硬すぎて使い物にならない」と言い、レースではアレクサンダー・アルボン以外、だれもハードを履かなかったことでもわかる。

 こうなると、ソフトかミディアムしかレースでは使えず、おのずと戦略は似通ってくる。

2020年F1第6戦スペインGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)&マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)

 また、今回のスペインGPではスタート直後にボッタスが後退したことも、結果的にフェルスタッペンに味方とはならなかったのではないかと思われる。それはメルセデス勢が2台そろってパンクした第4戦イギリスGPも、2台そろってブリスターに悩まされた70周年記念GPも、スタート直後からメルセデス勢が1-2体制を築き、レースを通してメルセデス勢同士で優勝争いしていたことが、タイヤトラブルを引き起こす遠因となっていたと個人的に考えられるからだ。

 だからといって、3番手にいたほうが良かったと言っているわけではない。

「第1スティントはルイスについていくために全力を尽くしたけど、今日のルイスはちょっと速すぎた」(フェルスタッペン)

 自力でハミルトンにプレッシャーをかけることができるマシンが現時点でないことが、今回の最大の敗因だったということだ。

2020年F1第6戦スペインGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第6戦スペインGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第6戦スペインGP アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)
2020年F1第6戦スペインGP アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)

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