【甲子園交流試合】東海大相模・神里、野球一家の勲章また一つ 兄はDeNAでプレー

大阪桐蔭戦の5回にチーム初安打を放った東海大相模の神里=兵庫県西宮市の甲子園球場

 17日に甲子園球場で行われた高校野球の2020年交流試合。東海大相模高の正捕手・神里陸(3年)は、かつて父や兄もプレーした憧れの舞台に立つ夢をかなえた。遠く沖縄から親元を離れ、激戦区・神奈川で鍛えられて2年半。「今まで味わったことがないほど気持ちが高ぶった」という大阪桐蔭高との一戦で2安打の活躍を見せ、アルプス席に駆け付けた両親を喜ばせた。

 1点を追う七回1死二、三塁。神里は詰まりながらも右前に落とし、一時逆転の2点打とした。前のイニングまで無得点に封じられていた相手投手を攻略し、「泥くさく食らい付いた結果」と塁上で右の拳を突き上げた。

 5人きょうだいの末っ子。横浜DeNAベイスターズで活躍する長男和毅(26)の影響もあり、小学校に上がる前からバットや白球を握っていたという。父昌二さん(60)は豊見城高(沖縄)で通算4度の甲子園を経験。兄も糸満高(同)時代に夏の全国選手権に出場しており、自宅の居間には甲子園の土が並ぶ特別な環境で育った。

 興南高(同)が東海大相模高を13-1で破り、史上6校目の甲子園春夏連覇を達成した2010年夏。当時小学生だった神里は郷土のヒーローではなく、同じ沖縄出身の大城卓三(現巨人)らが身に付けた青いタテジマのユニホームに強い憧れを抱いた。

 「サガミでプレーできるように頑張れよ」。昌二さんの後押しを受け、中学時代は軟式のU-15(15歳以下)日本代表にも選出。東海に進学後は2年秋に捕手のレギュラーポジションをつかみ、チームも今春の選抜大会出場を決めていた。

 しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で大会は中止され、学校の寮も閉鎖。「ショックだったけど、沖縄に帰ってからみんなが励ましてくれた」。自宅にある手製の打撃ケージで父が投げ込むボールを毎日2時間近く打ち込んだり、近所の砂浜で自主的にダッシュを繰り返したりした。

 昌二さんは「もともと弱音を吐くような子ではないけど、本当にたくましくなった。兄よりも野球選手向きだよ」と目を細める。LINE(ライン)で励ましのメッセージを送っていたという和毅も「甲子園に出場できたことを、兄として誇りに思う。イレギュラーな形での試合になったが、この経験をこれからの人生に生かしてほしい」とねぎらった。

 東西の名門校対決と注目された一戦で、捕手としても3投手を粘り強くリードし、試合終盤までもつれる熱戦を演じた。「お父さん、お兄さんと3人続けて甲子園に出場できて良かった」と神里。野球一家の勲章がまた一つ増えた。

© 株式会社神奈川新聞社