TCRドイツ第2戦ニュル:これがWTCR王者の貫禄。ミケリスが初参戦でポール・トゥ・ウイン

 8月14~16日の週末に開催された2020年のTCRドイツ・シリーズ(TCR Germany)第2戦ニュルブルクリンクにゲスト参戦した、WTCR世界ツーリングカー・カップ王者のノルベルト・ミケリス(ヒュンダイi30 N TCR/Team Engstler)が、同シリーズデビュー戦ながら貫禄を見せつけるポール・トゥ・ウインを達成。しかし、このレース後の車両検査を巡って有力ドライバーがシリーズ撤退を決めるなど、波乱も巻き起こっている。

 TCR規定ツーリングカーの世界最高峰で戦い2019年には念願のタイトルを手にしたミケリスは、これがニュルブルクリンクのGPサーキット初挑戦ながらさすがのドライビングを披露。予選ではTeam Engstlerのi30 N TCRで1分33秒804のタイムをマークし、同じくヒュンダイi30 N TCRをドライブするハロルド・プロチェク(HP Racing International)を0.017秒上回り、デビュー戦ポールポジションを確保した。

 3番手にはTCRドイツ・シリーズを代表する“兄妹ドライバー”の兄で、FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRに乗るマイク・ハルダー(Profi Car Honda ADAC Sachsen)が続き、妹のミシェル・ハルダー(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/Profi Car Team Halder)も、開幕戦ポールシッターのアンティ・ブリ(ヒュンダイi30 N TCR/Team Engstler)を抑えて5番手を確保した。

 そして、ミケリス同様にスポット参戦を果たしたこちらも兄妹ドライバーのアンドレアス・バックマン(ヒュンダイi30 N TCR/Target Competition)が、世界王者に遅れることわずか0.155秒差の4番グリッドに。妹ジェシカ(ヒュンダイi30 N TCR/Target Competition)は、同じくコンマ4秒差の3列目6番グリッドに着けた。

 明けた土曜正午にスタートが切られたレース1は、フロントロウ2番手に並ぶプロチェクが世界チャンピオンとの対戦に気負ったか、1コーナーに向けホールショットを奪ったものの、ジャンプスタートの裁定でドライブスルーペナルティが課されることに。

 これで楽になったミケリスは、オープニングラップに後続で発生したクラッシュにより序盤はセーフティカー先導ラップが続いたものの、その後は19周の決勝でニュルGPサーキットを1周1周習熟するようにラップを重ね、2番手マイク・ハルダーに1.6秒のマージンを築いて盤石のデビューウインを飾った。

 最後の表彰台枠となる3位にはゲストドライバーのアンドレアスが続き、その背後4位にハルダー兄妹の妹ミシェルが入り、選手権ポイント対象外の勝者ミケリスとアンドレアスのふたりを除き、兄マイクが最大の25ポイントを獲得、妹ミシェルがTCRドイツで2位を記録することとなった。

「もちろん、すぐに競争力を発揮できてうれしく思うよ」と、WTCR現役王者の貫禄を見せつけたノルベルト・ミケリス
アンドレアス・バックマンのヒュンダイを抑え切ったマイク・ハルダーと、その背後を伺う妹のミシェル・ハルダーだったが……

■車載消火器を巡って場外戦が勃発

 しかし、レース後のパルクフェルメで騒動が発生する。スチュワードはマイク・ハルダーのFK8シビックが搭載する消火器が「作動していないことを発見」し、直ちに失格処分が降された。

 これにより4位に入っていた妹のハルダーが最大の選手権ポイントを獲得するリザルトとなったが、Team Halderとして長らくシリーズに参戦してきた兄妹はSNSを通じて怒りの声明を出し、TCRドイツからのシリーズ撤退を決断した。

「すべてはニュルブルクリンクでの最初のレースでポイントを獲得した後の失格によって引き起こされた」とSNSに綴ったマイク・ハルダー。

「失格理由は消火器の作動不備とのことだが、これはシートベルトを外すときに誤って作動しないようパルクフェルメで消火システムを無効にしたためだ」

「DMSBはこれを規則違反(厳密に言えば正しい)と評価した。パルクフェルメで車両に技術的変更を加えることは禁じられているからね。しかし近年、委員会はこれを罰してはこなかった」

「その他の多くのドライバーも“安全上の理由から”同じ措置を採っている。消火システムが不意に作動して、ドライバーや車両に損害を与えないように配慮しているんだ。つまり『Safety first!(セーフティ・ファースト)』の意図でね」

「この失格により、勝利に相当する25ポイントを失った。我々にとっては、この終わりなき旅路の果てに突き付けられた、近年稀に見る失望を禁じ得ない」

 2台の撤退により計13台(シリーズエントリーは9台に)でスタートが切られた日曜レース2は、前日のフライングによるペナルティで9位に終わり、この日のリバースグリッドを活用したプロチェクが今季初勝利をマーク。

 ミケリスは怒涛のオーバーテイクショーを演じて2位までカムバックし、3位には開幕戦レース2の勝者でもあるドミニク・フューゲル(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/Profi Car Honda ADAC Sachsen)が入っている。

 今後も波乱の影響が避けられそうにないTCRドイツ・シリーズ。続く第3戦は9月19~20日の週末にホッケンハイムで争われる。

R2は前戦の雪辱を期したハロルド・プロチェク(HP Racing International)がリバースグリッドを活かして今季初勝利
3位表彰台獲得で、選手権対象外のミケリスを除き実質2位のポイントを獲得したドミニク・フューゲルが選手権首位を守った

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