「曲の盆踊」勇壮に舞う 対馬、故人しのぶ

扇を手に勇壮に舞い、精霊船を送り出す「曲の盆踊」の踊り手ら=対馬市、曲漁港

 国選択無形民俗文化財「対馬厳原の盆踊」の一つ「曲(まがり)の盆踊」が15日夜、対馬市厳原町の曲地区であり、法被姿の男性が2本の扇を手に勇壮に舞い、精霊船を海に送り出した。
 文化庁などによると、全国的に見られる集団の輪踊りとは異なり、対馬では少人数の男性が隊列を組んで踊る形で各集落で伝承されてきた。現在、盆時期に踊っているのは曲を含め5地区だけとなっている。
 曲の盆踊には4演目あり、初盆供養で奉納するのは両手に扇を持つ「二本扇踊」。例年は浴衣姿で初盆の家に上がって奉納するが、今年は新型コロナウイルス感染予防のため簡素化。地元住民でつくる曲郷土芸能保存会の20~70代の踊り手6人と、ジューテー(地謡)3人、太鼓1人が「アッサ」の掛け声を響かせながら曲漁港の岸壁に並べた各家の精霊船を前に披露。精霊船はその後、漁船に乗せて曲漁港近くの海を巡り、流された。
 昨年9月に一本釣り漁師だった夫を亡くした梅野ツヤ子さん(76)は「夫はいつも優しい人だった。みなさんに踊っていただき、喜んでいると思う」と故人をしのんでいた。

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