ビール6本缶セットも「無料クーポンが次々届く」ファミペイ、背後にはDX戦略が

ファミリーマートが2019年7月から開始したキャッシュレス決済サービス・FamiPay。このアプリをダウンロードすると、お酒や飲み物の無料クーポンが毎週のように届くと、ツイッターなどで話題です。

コンビニのキャッシュレス決済といえば、セブンイレブンの「7pay」が昨年、サービス開始から実質4日の稼働で、あっけなく終了が発表され、セキュリティ対策など技術的な難しさが明らかになりました。

一方で、ファミペイは順調にユーザーを伸ばし、1,000万ダウンロードを目指すとしています。どのような戦略なのでしょうか。


毎週のようにお酒のクーポンが届く?

「ファミペイでまたまたクーポン配信。今日の晩酌にしよう」「またもやファミペイの無料クーポン。今週4本ももらってる」「今週も配給頂きました!」。

ツイッター上では、こんな書き込みが多く見られます。ファミペイアプリに、毎週のように、ビールやチューハイ、コーヒーなどソフトドリンクの無料クーポンは届くというのです。

中には「ファミペイを使ったことがないのに、クーポンが届いた」「お酒を飲まないのに、毎週のようにお酒のクーポンが届く」などという声も。驚くことに、「アサヒスーパードライ6本セットのクーポンが来た」という書き込みもありました。

ファミマでしか使えないのに540万ダウンロード

同社が7月に発表した決算資料によると、アプリのダウンロード数は540万件を超えました。

ファミペイは、基本的にファミリーマートでしか使えず、PayPayやd払いなどのように、街の様々なお店で使えるという便利さはありません。しかしながら、PayPayユーザーは3,000万件(2020年5月末時点)、d払いが2,526万件(2020年3月末時点)であることを考えると、激しいキャッシュレスサービスのシェア争いの中で、小さくない存在感を示しています。

そのカギとなるのがこの無料クーポンのようです。無料クーポンほしさに、アプリをダウンロードしたという声もよく聞きます。

ビール6本セットの無料クーポンが届く!?

同社広報によると、何種類のクーポンを何枚ほど配っているかは社外秘。ただ、「当たる人は毎週何かが当たるという声も聞いております」とのこと。お酒のクーポン以外にも、お菓子やお茶などがもらえる様々なクーポンが配信されているそうです。

どのクーポンが届くのかは、人によって全く違うそうです。「細かなルールは社外秘ですが、過去の購入履歴などを参考にクーポンを配信しております。来店動機を生むことが目的です」ということでした。

「(ネット上で話題になった)アサヒスーパードライ6本セットのクーポンが来た、というのはホントです」。

ユーザーからは、「商品を試すいい機会になった」と好評の声が届いているとのこと。広報の担当者は、「ファミペイはクーポン配信だけでなく、決済もクーポンもポイントカードの提示もスキャン一発で完了するほか、様々な割引サービスも受けられます」と利便性を強調します。

大きな変革期にあるファミマ

実際にその効果は大きく、2020年5月時点でファミリーマート店舗におけるキャッシュレス比率は30%にまで上昇。前年同期比150%と急上昇しています。経済産業省によると、国内全体のキャッシュレス決済比率は約20%なので、ファミペイは高い効果を示しているようです。

同社は7月、親会社の伊藤忠が、TOB(株式公開買い付け)を行って完全子会社化することを発表し、大きな話題を呼びました。同社が4月に発表した2019年度通期決算によると、営業収益は5,170億6,000万円(前年同期比16.2%減)となる一方、事業利益645億4,700万円(25.2%増)と大幅増でした。

同社ではここ数年、不採算店舗の閉店を進め、本部社員の早期退職を募るなど、コスト削減と収益力の向上を進めています。ファミペイを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)改革もその一環と言えるでしょう。

しかしながら、7月に発表された2021年2月期第1四半期決算では、新型コロナウイルスの感染拡大により、営業収益は前年同期比15.9%減の1,117億6,300万円、事業利益は同54%減の89億8,300万円と大きな痛手を受けています。

DXの成功例となるか

2020年度の重点施策として、ファミペイアプリの1,000万ダウンロード、年間アプリ利用者数2,000万人を目指すことを掲げています。今後、デジタル広告、デジタル販促を増やし、ファミペイを使った小口ファイナンスなど金融事業へ乗り出すことも表明しています。

ファミペイはサービス基盤を自社で構築しているため、得られたビッグデータを元に、今後は様々な新規事業が展開されるものと思われます。国内に約1万6,000店の実店舗を持つ強味を最大限活用し、DXの成功例となるのかもしれません。

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