山本由伸が快投しても勝てない… 随所に見えたオリックス低迷の要因を元監督が指摘

オリックス・山本由伸【写真:荒川祐史】

「勝負所というものは、試合の終盤に来るとは限らない」と森脇氏は言う

■西武 3-1 オリックス(18日・京セラドーム)

オリックスは18日、本拠地・京セラドームで行われた西武戦に1-3で惜敗した。5位・西武に5ゲーム差、首位・ソフトバンクには11.5ゲームの大差をつけられ、最下位を低迷している。この日は先発した山本由伸投手が7回1失点と快投したものの、降板後に2番手のヒギンスが決勝点を献上。継投が裏目に出る結果となったが、元オリックス監督で2014年に優勝したソフトバンクにゲーム差0の2位まで押し上げた森脇浩司氏は「敗因は他にもある」と指摘した。

山本は7回まで毎回、西武の先発メンバー全員から計12三振を奪う快投。5回に一塁手・ロドリゲスの適時失策で1点を許したとはいえ、相手に付け入る隙を与えなかった。まだ余力はありそうに見えただけに、同点の7回で降板し、8回から登板したヒギンスが2点を取られたのは、なんともやりきれなかった。

森脇氏は「チーム内部の事情はわかりませんが、私は8回も山本続投、状況次第で9回も、と見ていただけに、交代は非常に興味深い」と言う。結果的にこの継投が裏目に出ることにはなったが、敗因はそこだけではない。試合の随所に、オリックスが低迷している理由が見え隠れしていたという。

例えば、決勝点を奪われることになった8回の守備。1死一、三塁のピンチで、栗山を一ゴロに仕留め、三塁走者の外崎を三本間の挟殺プレーでタッチアウトにした。しかし、この間に、一塁走者の山川が三塁、打者走者の栗山が二塁に到達していた。

三本間での挟殺プレーでの細かなミスが直後の2点適時打に繋がる…

森脇氏は「本来なら山川を二塁、栗山を一塁に留めておけるタイミングでした。捕手・若月が三塁走者を追い詰めずに、早めに三塁へ送球してしまったため、三塁手の宗が本塁へ向かって走者を追いかける形になり、山川と栗山の進塁を許してしまった。僅差のゲームでは、こういうことが命取りになる。ランダウンプレーは三本間が一番多く、チームとして平均以上のスキルを身に付ける必要がある」と指摘した。

この直後にメヒアに左前へ2点適時打を浴びた。たらればにはなるものの、山川を二塁、栗山を一塁に留めておけば、ヒットが出ても失点は1ですんだか、もしくは山川が三塁でストップしていた可能性もあった。

さらに森脇氏は、メヒアにカウント2-1からチェンジアップを痛打された配球にも疑問を呈する。「ヒギンスはこの回先頭の源田にチェンジアップを右翼フェンス際まで飛ばされ、右翼手・西浦の美技に助けられました。さらに続く外崎にも、チェンジアップを左前打された。その上であの勝負所で、5人目の打者だったメヒアに対し、バッティングカウントでチェンジアップを投げさせたのは、どうだったのか」と首をひねる。「ヒギンスが素晴らしい投手であることは言うまでもないが、少なくとも今日のチェンジアップは信用出来る球ではなかった」からだ。

女房役の若月は、森脇氏がオリックス監督時代の2013年にドラフト3位で指名し、埼玉・花咲徳栄高から入団した選手で、いまや正捕手の座を固めつつある。「初々しかった若月の顔も、プロらしい顔になってきた。弱音を吐かない心身のタフさと素直さを持ち合わせ、素晴らしい選手になる素質を持っている」と見ているだけに、さらなる成長を期待する。「常に二段、三段構えの準備をして挑んでほしい。良い習慣は自分を成長させ、チームを発展させる」と付け加えた。

森脇氏の提言「結果が全てと言われる世界だからこそ、プロセスを大切に」

また、ポイントは序盤の2回の攻撃にも。オリックスはT-岡田の適時二塁打で1点先制し、なおも1死一、三塁のチャンスだった。味方の先発・山本が2回まで無安打無失点5奪三振のスタートを切っていただけに、もう1点追加すれば、試合を極めて有利に進められるところだった。だが、8番・西浦はストライクを2球見逃してカウント1-2と追い込まれた挙句、ワンバウンドになるフォークを振らされ三振。消極的な姿勢が残念だった。続く若月も空振り三振に倒れて逸機したのだった。

「勝負所というものは、試合の終盤に来るとは限らない。私はオリックスの監督時代、選手、コーチ、チームスタッフに『初回にベストのプレーができる準備をしてくれ』と伝え続けた」と森脇氏は言う。この日の攻撃の勝負所は2回だった。1点で終わるのか、2点目をもぎ取るのかでは大違い。そこにチームとして最善を尽くせたかどうか。

森脇氏は「首脳陣には戦略として、西浦がネクストサークルにいるうちに、状況(準備)の確認と勇気付けをしてほしかった」と指摘。さらに、西武は右足首を痛めている山川の代役としてメヒアが一塁を守っていただけに「まずセーフティースクイズを試みるとみていた」が、西浦にそういう素振りはなかった。

「私はここまで結果論を述べたのではない。結果が全てと言われる世界だからこそ、プロセスを大切にしてほしいと思う。今年は稀に見る混戦のペナントレースを、今も期待している。オリックスはこの位置で終わるチームではない。私も一ファンとして心から声援を送り続けたい」と古巣にエールを送る森脇氏。オリックスが、いまや日本を代表する本格派投手に成長した山本、今季打率.361(18日現在)を誇る吉田正ら役者を擁しながら低迷している原因は、こういう見過ごされがちな部分にあるのかもしれない。

【動画】山本由伸が快投披露も勝利が遠い… 18日のオリックス対西武戦ハイライト

【動画】山本由伸が快投披露も勝利が遠い… 18日のオリックス対西武戦ハイライト(視聴可能期間:2021年8月13日まで) signature

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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