声優・愛美×プロレスラー棚橋弘至×ブシロード木谷会長が語る、エンターテインメントの変化と手ごたえ「急がず、信頼を勝ち取っていく」

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●満員の会場とお客さんの顔を思い浮かべるだけで頑張れる

新型コロナウイルス(COVID-19)が各業界へ様々な影響を及ぼしている。株式会社ブシロード及び子会社である新日本プロレスリング株式会社(以下、新日本プロレス)は、2020年3月から6月にかけて開催予定だったイベント・試合を軒並み延期・中止した。現在は、「BanG Dream!」「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」「D4DJ」などのメディアミックスプロジェクトでは、自宅でも楽しめるコンテンツをオンラインで提供。新日本プロレスは無観客試合の配信、また観客数を抑えた形で試合を開催するなど、今のエンターテインメントの形を模索している。

今回は、ブシロード取締役の木谷高明氏と新日本プロレス所属のプロレスラー・棚橋弘至、「BanG Dream!」戸山香澄役や「D4DJ」山手響子役などを担当する声優の愛美による鼎談を実施。イベント・試合中止による日常の変化や、それぞれが考えるエンターテインメントの今後について訊いた。

それぞれのステイホーム

――2020年4月7日に政府から「緊急事態宣言」が発出されてから、自宅で過ごす時間も増えたかと思います。皆さんはどのように過ごされていましたか?

棚橋:試合ができない、トレーニングする場所も限られるという状況だったので、気分のアップダウンが激しかったんです。なので、映画を見たり、家族とゲームをしたりしながらモチベーションを下げないように心がけていました。

愛美:私はYouTubeでアーティストさんのライブ映像を見たり、自分自身も同じ事務所の佐々木未来ちゃん・伊藤彩紗ちゃんとYouTuberデビューしたりと、YouTube漬けでした。YouTuberとしての活動は、もともと3人で何かやりたいと話していて、昨年くらいに案として出たものだったんです。それをこのタイミングで実現する形となりました。

木谷:会社の体制としては、2月19日から出社を少なくして、緊急事態宣言が発出されてからはさらに減らして10%以下にしました。また、上の立場の人間はなるべく自家用車で来ることを徹底しましたね。私も4カ月で2回しか電車に乗ってないです。

――自家用車での出社をはじめ、仕事のスタイルが変わったと思いますが、プライベートでは何か変化がありましたか?

木谷:毎日のように出社しているので忙しさは大きく変わっていませんが、それでも夜の時間は空くようになりました。その空いた時間には、NetflixやU-NEXTなどの配信サービスをよく見ています。

棚橋:我が家もNetflixを利用しているのですが、みんなで同じアカウントを使っているので、例えば嫁がお風呂に入っていると、俺が見れなくなるんです。ある日、嫁がシャンプーをしているなというタイミングで、こっそりアニメを見ていたんですよ。そしたら、お風呂から「消して」という冷たいひと言が飛んできました。

愛美:(笑)。

木谷:私は映画を見たり、仕事で関わっている人のアニメ作品を見たりしました。最近は大河ドラマの「関ヶ原の戦い」シーンだけ何作も比較しながら見ています(笑)。

棚橋:時間があるからそういう見方もできますね。

木谷:それと、配信だと飛ばしながら見ることができるじゃないですか。だから、「関ヶ原の戦い」のシーンだけを一気に見ることができる。例えばどれが一番エキストラ多いとか、一番お金かかっていそうとか。その他、『翔ぶが如く』と『西郷どん』で明治維新以降の大久保利通の描かれ方が違うので、それも比較していました。色々とマニアックな楽しみ方が手軽にできるのは、配信ならではかもしれません。

棚橋:会長、めちゃくちゃ有効に時間を利用しているじゃないですか!

木谷:いやいや……!

棚橋:でも、自宅で過ごす時間が増えたこの期間は「インプットの時間」だと思っています。俺も映画やテレビ番組を見たり、本を読んだりと、とにかく情報を入れていましたね。

木谷:昔だったら本を買い込むことしかできなかったかもしれません。技術が発達していた今だからこそ、色々な楽しみ方ができるんだと思います。

明るい未来へ向けて

――3人とも悲観し過ぎず、ポジティブに色々なことに取り組まれていたんですね。しかし、仕事の面では、予定していたライブや試合が延期・中止となりました。実際に出演する側だった愛美さん・棚橋選手は、その知らせを聞いたときどんな気持ちでしたか?

愛美:残念な気持ちはもちろんありましたが、一番大事なのは皆さんの命。演者としては仕方ないな、という気持ちでいました。それでも、そのイベントやライブのために予定を空けてくださっていた方々のことを思うと、申し訳なさや悔しいという気持ちがあったのも正直なところです。ほとんどのイベントが延期となってしまいましたが、決してこれからできないという訳ではありません。だから、今は明るい未来に向けて頑張っていこうと思っています。

棚橋:新日本プロレスは2020年1月4・5日に東京ドームで初めて2連戦を行いました。2日間で70,000人以上が来場してくださって、「新日本プロレスがすげーところまできた」と思っていたんです。そんなときに、新型コロナウイルス感染拡大のニュース。予定していた試合も中止となり、「あー、俺のキャリアって何だったんだろうな。新日本プロレスを盛り上げて、業界全体が盛り上がってきたのに」と、落ち込みました。業界全体が明らかに盛り下がっていくのを見るのも辛かった。

――いつまた以前のようにたくさんのお客さんを入れることができるか、不透明なのも辛さに拍車をかけている気がします。

棚橋:それでも、プロレスを好きになって、ファンになってくださった方々に離れていってほしくなかった。だから、ファンの方々に何か楽しんでもらえればと思い、SNSの更新頻度を増やしたんです。

そういう活動を続けていき、プロレスの火が絶えていないことを伝えていれば、きっとファンの人たちは会場に戻ってきてくれる。今はまだ3割程度のお客さんを入れた試合しかできませんが、満員の会場とお客さんの顔を思い浮かべるだけで、頑張れます。むしろ、俺が20年のキャリアをかけて少しずつ、1席ずつ増やしていったものを早回しで再体験できるかもしれないので、今はワクワクしていますね。

木谷:3月以降予定されていた様々なエンターテインメントのイベントは、ほぼできなくなりました。当社も予定していたイベントは延期・中止の判断をしています。それでも、お客さんを入れてのライブができなくなったら無観客配信ライブを実施するなど、とにかくコンテンツの供給が途切れないようにすることは意識しました。

当社だけでなく、エンターテインメントを提供する企業が様々な取り組みをやっています。今はまだライブエンターテインメントに関しては制限がかかっている状態ですので、我慢が必要だと思います。しかし、その中で頑張っていたところは、タガが外れたらこれまで以上の楽しみを提供してくれると思いますよ。今の企業努力は、1年後・2年後に成果として現れるんじゃないかな。

●無観客配信イベントの反響

大阪城ホールで鳴りやまなかった拍手

――愛美さんはこの期間に、YouTuberとしての活動のほか「SILENT SIREN」さんの無観客配信ライブなどにも出演されていました。配信で音楽を届けることとお客さんの前で歌うのとでは、感覚は違いましたか?

愛美:それほど変わらなかったかもしれないです。「本番です」となって、ステージに立って、スポットライトが付いて音楽が流れると、「いつものライブが始まった」という感覚でした。ただ、配信だと細かいところまで見えるので、なんだか丸裸にされちゃっているようで少し恥ずかしい、という気持ちはあったかも(笑)。

あと「BanG Dream!」では過去のライブを配信したのですが、その配信で初めて「ポピパ」(Poppin'Party)のライブを見たという声もあったんですよ。そういう意味では、配信が新しいファンを増やすきっかけにもなったと感じています。

――棚橋選手は6月に行われた新日本プロレスの無観客試合「Together Project Special」に出場されていましたね。

棚橋:無観客試合は2004年に一度経験しています。新日本プロレスに所属している選手のなかでは俺が唯一の経験者なのですが、当時は何の手ごたえもなかったのでトラウマを抱えていました。ただ、今の新日本プロレスはすごい。選手みんなが考え方を切り替えて、会場にお客さんがいない分、攻防自体に注力するようにしたんです。それが、配信を見てくださっている方々にも届きました。俺の仲間たちはすげーです。ドキドキしながら試合をしていたのは俺だけでした。

――その無観客試合を経て、7月には大阪城ホールにて、通常の3分の1程度ながらも観客を入れた試合が行われました。その時に「拍手の響きがとても美しく聞こえました」というコメントを残しています。

棚橋:プロレスの醍醐味は会場で「棚橋ぃ!!」と、声援やブーイングを送ることだと思うんです。それでも、大阪城ホールで3時間半鳴りやまなかった拍手は、本当に美しく、感動的でした。

木谷:もともとプロレスって拍手する文化もあるんですよね。例えば、誰かが技を決めたときに拍手を送るとか。

棚橋:ありますね。

木谷:そういう文化があったから、歓声ができない分、何かにつけて拍手するというリアクションがすぐにできたんだと思います。私も現地にいましたが、本当に3時間半拍手が続いていましたね。一か所思わず笑ってしまったのが、リング上で反則しているときにも拍手をしていたこと。普段だとブーイングするところなんですよ。ただ、声が出せないから今回は拍手していたんです。笑っちゃいけないけど、おかしかったです(笑)。

棚橋:俺たちは拍手のトーンで「これはブーイングかな」と判断していました(笑)。

――なるほど(笑)。

木谷:少し話が脱線しましたが、拍手の文化はライブや舞台でも取り入れていいんじゃないかと思います。ライブや舞台は、曲終わりや公演のラストに拍手することはあっても、途中ですることがほぼありません。声が出せないのであれば、代わりに拍手で表現してもいいと思います。

お客さんが少なくても一生懸命にやること

――実際にライブで演奏する側の愛美さんは、これまで拍手によって気持ちが昂ることがありましたか?

愛美:ありました。拍手って、普段のライブだと「いいものを受け取った」と感じたときに、自然と出るものだと思うんです。それをしてもらえただけで、気分は上がりますね。

木谷:先ほどから話にあがっている新日本プロレスの大阪城ホール興行は、通常1万2,000人がキャパシティのところ、1日目が約3,300人、2日目が約3,800人の観客数で開催しました。それでも、みんなで拍手するとそれなりの大きさになっていましたね。

棚橋:選手にもしっかり届いていましたよ。

木谷:その拍手があるだけで、気分は大きく違うと思うんです。あと、新日本プロレスは、15年くらい前はお客さんが少ない状態で試合をやっていたんですよ。だから、3,300人が少ないと感じていない選手もいるはず。

棚橋:感じませんね。一番厳しかったのが、2007年11月11日に両国国技館で行われた棚橋対後藤(洋央紀)のタイトルマッチ。1万人くらい入る会場だったにも関わらず、観客は2,200人だったんですよ。それでも、めちゃくちゃ盛り上がったんです。

木谷:今でも名勝負と言われている試合ですね。

棚橋:自分でいうのも何ですけども、あれで新日本プロレス復活の狼煙があがったと思います。

木谷:だから、お客さんが少なくても一生懸命やることが大事なんです。それが盛り上がりに繋がりますし、その姿が後々まで語り継がれることもある。それを見たお客さんにとっても、自慢話になると思います。

愛美:私は緊急事態宣言が発出されてからまだ無観客ライブしか経験したことがなくって。お客さんが入った状態のイベントはまだやっていないんです。だから、久しぶりにお客さんが目の前にいるステージに立ったときにどんな感覚になるのか、まだ想像がつかないです。

棚橋:あいみん、それは楽しみにしておいたほうがいいよ。俺は会場に入った瞬間、「おぉ! お客さんがいる!」って感動した。とにかくうれしい。そして、心から感謝した。ルーティンとして、リングに入ってからコーナーを見渡して写真を撮ってもらうんだけど、まだこの景色を堪能したいと思って、もう1周したもん(笑)。

愛美:それくらいうれしかったんですね! 私も楽しみにしておきます。

●イベント延期で興行収入はゼロ、そのうえ…

好きなものに対して、何かしたかった

――ブシロードさんは「BanG Dream!」では無観客花火大会の実施と配信、「D4DJ」や「ARGONAVIS from BanG Dream!」ではキャラクターが織りなす“音のみ”のオンライン配信ライブなど、様々なコンテンツをオンラインで供給し続けています。実際にやってみて、手ごたえは感じていますか?

木谷:花火は楽しかったですね。全国の花火大会が中止になるなか、新型コロナウイルスの厄払いの意味も込めて実施しました。感染者数がまた増えてきてしまいましたが、配信を見た方に少しでも楽しんでもらえていれば幸いです。

その他、中止になったイベントの代わりに色々な形でコンテンツを供給してきました。無観客ライブの配信やサウンドオンリーライブ、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」では事前に撮影した映像を編集して配信するという形で公演を実施しています。

また、「BanG Dream!」に登場するバンド「RAISE A SUILEN」に焦点を当てた舞台は8公演すべてを配信して、最終日だけライブビューイングを行い、さらにこの映像を後日配信しました。このように、配信という供給の仕方がひとつ加わっただけで、音楽コンテンツの見せ方やビジネスに、より多様性が出ました。その点に関しては手ごたえを感じています。

――これまでの配信は、「おまけ」「ついで」という意味合いが強かったかもしれません。

木谷:「音楽」はそうじゃないですか。ただ「スポーツ」は試合そのものをコンテンツとしてとらえ、ケーブルテレビといったところに販売したり、早くから配信ビジネスにも取り組みを行っています。

「音楽」はそういう概念がまだあまり定着しておらず、ビジネスにしているところも限られている気がします。今年がまさに元年になるかもしれません。日本の「スポーツ」も欧米に比べてコンテンツをビジネスにしていくのが遅れていましたが、ようやく色々な競技を海外にも配信することが始まりました。

新日本プロレスも2014年に、「新日本プロレスワールド」という配信サービスをスタートしています。3~5月は試合がなかったのでコンテンツの供給ができず利用者数も減りましたが、6~7月にかけて東京ドームでの試合時くらいまでの数字に戻りました。収益の面でも大きな支えとなっています。

棚橋:俺も後から聞いて驚きました。ビッグマッチが終わった後はだいたい利用者数が減るんですよね。東京ドームの試合後も例に洩れず、利用者数が少し減りました。ただ、今回は新型コロナウイルスの影響で2割も下がったんです。それが、6月からコンテンツを供給し始めたら一気に利用者数が増え、数字が元に戻ったんです。

木谷:加えて、7月3日にはBS朝日にて34年ぶりに「ワールドプロレスリング」の試合が生中継されたんですよ。この中継の視聴率が結構よかったんです。

棚橋:試合ができず、もどかしいことも多いですが、34年ぶりにプロレスが金曜8時(20時)に戻るなど、いいこともあるんですよね。それは救いです。

――利用者数の増加、そして視聴率がよかったのは、お客さんがコンテンツを求めているからだと思います。

木谷:そういう反響を見ていると、エンターテインメントは常にコンテンツを配信し続けて、お客さんに楽しんでもらったり、夢や希望を持ってもらったり、日々の生きる活力を持っていただいたりすることが使命だなと思うんです。それはリアルだろうがオンラインだろうが、同じことなんですよ。

――観客を入れてのイベントができないからといって、エンターテインメントができない訳ではない。

木谷:そうです。「BanG Dream!」は5月3日にメットライフドームにて、初となる6バンド総出演ライブを開催予定でしたが、このライブも残念なことに延期となりました。その代わりに、過去のライブをキャストの実況付きで配信するという取り組みを行ったんです。この配信は、連日4~5万人が同時接続してくれました。コンテンツを求めてくださる方の多さを改めて実感しましたね。また、結果として、ライブグッズも相当数売れたんですよ。グッズに関しては新日本プロレスもそうで、試合がゼロだったにも関わらず、商品の売り上げが通常の半分くらいありました。驚いたのと同時にお客さんに感謝しました。

棚橋:俺も音楽が好きなので、自粛期間にライブハウスTシャツや、好きなバンドのTシャツをたくさん買いました。好きなものに対して、何かしたかったんです。新日本プロレスの商品が売れたのも、それと同じ思いだったのかもしれません。ファンが支えてくれているということを実感しています。

愛美:この期間で私も、支えていただいていることをより実感しました。

イベント延期による収益への影響

――オンライン展開への手ごたえについてお話いただきましたが、実際、イベントの中止や延期は興行収入の面で大きな痛手となったと思います。

木谷:例えば、新日本プロレスは大きな収益として「興行収入」、「グッズ売上」、そして、棚橋さんなどの選手がTV出演された際の出演料や配信・テレビの放映権料といった「メディア収入」の3つがあります。その中で、先ほどもお話したように、配信の利用者数は減っておらず、選手たちのテレビ出演も続いているので「メディア収入」はあまり落ちていないんですよ。「グッズ売上」もお客さんに支えていただき、何とか保っています。一方、「興行収入」は興行をやらないと収入はありません。

――試合をしなければ、「興行収入」はゼロ。

木谷:むしろ、準備までの費用もありますし、基本はキャンセル料がかかりますので、マイナスです。プロレスの興行・音楽ライブ共に3~5月は大きなダメージを受けました。また、チケットを販売した後にイベントが延期となり、その分の返金を行うと、手数料がかかる場合があります。そのため、「やります」→「入金しました」→「延期です」→「払い戻します」が続くのが、一番ダメージを受けるんですよ。考え方によっては、最初から中止と決めた方がダメージは少ないかもしれません。

――延期し続けることによって、ダメージが増えていく。

木谷:そうとも言えます。7月から感染者数が増えてきましたので、一度延期して再度延期となったイベントは、ダメージが大きいかもしれません。なので、年末年始に会場を押さえているイベントは、お客さんを入れられるパターンが「フル」「半分」「ゼロ」どれになっても「やる」と決めて計画していますよ。プロレスの場合は巡業システムが確立されており、音楽ライブに比べてローコストで実施ができます。大阪城ホールの試合でいえば、実は3,500人前後の集客でも2日間やれば採算が合うんですよ。これが音楽ライブだと、大赤字です。それでも、例え興行そのものが赤字でも、我々エンターテインメント企業はコンテンツを作っていかないといけないんです。この歩みを止めるわけにはいかない。

――興行収入が見込めない分、イベントの抑制が続く間は配信が収入源においても重要になってくる。

木谷:そうですね。あとは政府が補助してくれているので、それも助かっています。ただ、その補助は、延期になったイベントの開催に充てるものなので、そもそも手持ちがなくなって開催ができなくなったら、補助を受けるのも難しくなってしまいます。今お話している補助は文化・芸能が対象ですので、プロレスは対象外です。ただ、スポーツ庁には別でサポートをしていただいているので、そういう補助についても、企業としては考えないといけません。

●配信によるエンターテインメントの変化

それぞれのエンターテインメント

――エンターテインメントの在り方はこれから変わってくると思います。皆さんが関わっているエンターテインメントは今後、どのように変化していくと思いますか? またそれに対してどのように向き合いたいですか?

棚橋:以前のように、超満員のお客さんが大きな声援やヤジを飛ばしているなかで試合をするのがゴールだとは思っています。ただ、そこに至るまでどのくらいの期間が必要なのか、今はまだ見えません。無観客試合などを含め、しばらくは新しいプロレスの形を探しながら皆さんに楽しんでいただこうと思っています。急いではダメ。「大丈夫です」「安心してください」ということを積み重ねて、信頼を勝ち取っていくのが大切なんじゃないかな。

愛美:ライブの配信、そしてYouTubeを始める声優さんも増えるなど、時代がものすごい勢いで変わっていると感じています。そこに振り落とされないようにしないといけません。ただ、流れに乗るだけじゃなくて、自分たちで新しい発信の仕方を見つけることも必要だと思っています。具体的に「こういうことを」というのはまだ思いつきませんが、時代の変化に抗わず、私もエンターテインメントを届けるべく頑張っていきたいと思います。

――声優の仕事の仕組みも変わるかもしれません。

愛美:これまでのスタイルだと現場はどうしても密になりがちなので、それを回避する収録体制が整ってくるかもしれないですよね。私もこの機会に機材を揃えたりマイクを購入したりしました。もしかしたら、自宅で収録する設備があるのが当たり前になる時代がくるかもしれません。今はアンテナを張って日々を過ごそうと思います。

木谷:「ピンチはチャンス」とよく言いますが、今年は本当に大きく動くと思っています。10年かかっていたかもしれないものが1年、2年で進化する可能性だってあります。例えば働き方。当社では2月中旬の時点で在宅勤務と時差通勤システムを整えて欲しいとお願いしました。秋葉原と新宿でパソコンを購入して、マスクも調達、それを1週間で行ったんです。幸いなことに弊社は社員の平均年齢が31歳と若いので、仕組みさえ作れればデジタル化や働き方の変更には、わりと早く順応できました。

今は毎日在宅勤務率を測って、お昼にはその数字を出しています。現在は社員の50~60%が出社していますが、11月頃には10~20%に下げても大丈夫なように体制を整える予定です。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いたとしても、インフルエンザが流行する時期は会社に出ないほうがいいと思うので。こういう働き方に関しても、一歩前進したなと思っています。

――ビジネス面ではどのような変化があると思いますか?

木谷:これまでお話している通り、オンラインを利用したサービス・商品化が進んでいくでしょう。当社でもまだ色々な取り組みを行う予定ですので、楽しみにしていてください。一方、リアルでの展開はどうなるのか。これは逆に、価値の大事さや貴重さが浮き彫りになっていくと思います。

――オンラインでのライブエンターテインメント展開が増えたとしても、実際に足を運ぶことへの価値が下がるわけではない。

木谷:アメリカンフットボールの最高の大会である「スーパーボウル」は、視聴率が40%あります。つまりは、アメリカ国内だけで1億2,000万人が見ていることになる。その「スーパーボウル」のチケットは、後ろの席でも何千ドルで販売されているんですよ。つまり、見る人が大勢いればいるほど、現場に行ってその様子を見たい人も増え、価値も上がるんです。なので、ライブやプロレスも、見る人が増えれば増えるほど、価値も上がるんじゃないかな。

――日本でいえば野球も中継がありますが、球場まで足を運ぶ人もいますよね。

木谷:音楽ライブはスポーツを参考にして、配信の仕組みを考えればいいのかなと思っています。

――本日はありがとうございました。最後に、皆さんにとってエンターテインメントがどのような存在なのか、教えてください。

棚橋:エンターテインメントは生きる目的のひとつになるものだと思います。例えば、プロレスが好きで試合を見たいから仕事を頑張る、風邪をひかないようにする、そういう衣食住を整える行動につながるものだと思うんですよね。そして、俺ら提供する側にとっては、いやらしい言い方ですけど、人を笑顔にするものだと思います。今回、新型コロナウイルスのせいで人から笑顔が消えました。なので、これからもう一度、俺たちが増やしていきます。

愛美:ほぼほぼ棚橋さんと同じ考えですが、私にとっては「幸せを作る場所」かもしれません。好きなエンターテインメントに触れると癒されたり、パワーをもらったりして、本当に幸せな気持ちになります。また、そういう素敵なエンターテインメントを作るにはどうしたらいいかなと考える時間も、幸せなんですよね。声優の仕事でも音楽の仕事でも、あーだこーだ言いながらひとつのものを作り上げる時間は楽しいですし、やりがいを感じます。それが幸せなんですよね。

木谷:ストレスを抱えないことは健康維持の面でも大切なことだと思います。そして、笑ったり感動したりすることは、ストレスの解消にも繋がります。そういう面からも、エンターテインメントの存在意義は大きいです。より多くの人に笑ってもらったり、感動してもらったりしていただくコンテンツを供給し続け、皆さんの体・精神を活性化する力になれればと思っています。

【バンドリ!情報】 8月21日(金)、22日(土)、23日(日)、夏の野外3DAYS「BanG Dream! 8th☆LIVE」を富士急ハイランド・コニファーフォレストにて開催。DAY1にはRoselia、DAY2にはRAISE A SUILEN、DAY3はPoppin'Party、前島亜美(Pastel*Palettes 丸山彩役) with RAISE A SUILEN、Morfonicaによる野外ライブが開催される。 詳しくは https://bang-dream.com/8th-live-aug を参照。

【新日本プロレス情報】 8月29日(土)、明治神宮野球場大会を開催。新日本プロレスの至宝「IWGPヘビー級」&「IWGPインターコンネンタル」王座ダブル選手権試合のほか、タイトルマッチが多数行われます。チケット情報はhttp://www.njpw.co.jp/を参照。