【高校野球】木更津総合・篠木が学んだ「周りを見る力」 早大・早川らから続くエースの自覚

8回のピンチを凌ぎガッツポーズを見せる木更津総合・篠木健太郎【写真:上野明洸】

「主将」で「エース」という重役を見事にやり遂げた篠木

2020年夏季千葉県高等学校野球大会の決勝戦が18日、千葉県営球場で行われ、木更津総合が2-1で専大松戸に勝利。2年ぶりに千葉の頂点に立った。

木更津総合のプロ注目エース・篠木健太郎は「5番・投手」で先発出場すると、投げては最速149キロを記録し1失点完投。打っては先制の適時三塁打を含む2安打の活躍を見せ、2年ぶり優勝の立役者となった。

篠木は1年の夏から甲子園のマウンドを経験。2年の夏は背番号1を背負ったが、惜しくも習志野に敗れ千葉大会4連覇の夢は絶たれた。新チームで臨んだ秋季大会も習志野に延長戦の末に敗戦。その悔しさを胸に挑んだ大会だった。

「もっと周りを見れるようになってほしい。自分以外に気を配れるようになれば、もっといい選手になる」という五島卓道監督の思いで、篠木は新チームの主将に任命された。冬には、甲子園にも出場した木更津総合の先輩で現在は早大で活躍する早川隆久や、法大の山下輝といった「周りを見る力」を持っていた偉大な先輩たちの映像を見て勉強した。

コロナで目標を失った時に、落胆する選手達を励ましたのも篠木だった。「独自大会という目標を作ってくださった。それに向かって努力しよう」と選手たちに声かけ。バッテリーを組んだ佐々木隼は「大変だったと思うけど、主将としてチームのために動いてくれて、チームをいつも助けてくれた。篠木を勝たせてあげたかった」と篠木への感謝の言葉を口にした。

4回には専大松戸のエース・西村卓真から中堅の頭上を越える適時三塁打。「直球一本で狙っていました」と自らのバットで均衡を破った。16日の準決勝でも9回に代打で同点打を放っていた篠木。この日も、その勝負強さを遺憾なく発揮した。

千葉大会優勝を決め喜ぶ木更津総合ナイン【写真:上野明洸】

五島監督も篠木の投球に「本当に彼は凄い活躍をしてくれた」と脱帽

この日最大のピンチは8回。四球と安打で無死一、二塁とし、相手ベンチはチャンスに沸き立った。ここで9番・鈴木康平はバントの構えを見せる。

「一番自身のある球でいこう」

佐々木はそう振り返る。バッテリーは直球で押し、強めに転がった打球は篠木の正面へ。すかさず三塁に送球し、進塁を許さなかった。続く打者も直球で押し込み、セカンドへの併殺打。一塁にボールが到達しアウトになった瞬間、歓声の出どころは専大松戸から木更津総合へと一気に変わり、ナインは喜びを爆発させベンチへ帰ってきた。「あそこが最大の山場、篠木は冷静にプレーしてくれた」と佐々木。主将としての、篠木の成長が表れたプレーだった。

専大松戸打線を9回1失点に抑えた篠木に、五島監督も「本当に彼は凄い活躍をしてくれた」と脱帽。今大会は単なる独自大会ではなく、後輩が先輩の試合を見るという重要な大会だと位置づけてきた。もう1週間後には秋季大会の地区予選が始まる。偉大な先輩達の背中を見て成長した篠木、その先輩達の中に、間違いなく彼も加わった。また、その姿に憧れた後輩たちが大きく成長していくに違いない。(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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