結局どっちも一緒?意外と知らないピラフとチャーハンの違いを調べてみた

先日、チャーハンを作って食べていたら、ふと思ったのでした。

「久しぶりに、ピラフが食べたいなぁ」

しかし、同時にこうも思ったのでした。

最近、海老ピラフ食べてないなぁ(イメージ)。

「ところで、ピラフってどう作るんだろう?」

ご飯と具材を炒めて味つけするイメージですが、それじゃあチャーハンと何が違うんだろう……そんな疑問が湧いたら吉日、という訳でさっそくピラフとチャーハンの違いについて調べてみました。

チャーハンとごっちゃにされがち?ピラフの基本的な調理法

とりあえず、標準的なピラフの作り方は、大体こんな感じみたいです。

(1)具材(魚介類や鶏肉、野菜など)を軽く炒める
(2)インディカ米(いわゆるタイ米)を研ぎ、バターで透き通るまで炒める
(3)炒めた米を同量のスープと具と一緒に炊いて出来上がり

※他にも色々バリエーションはあるようですが、とりあえず分かりやすくシンプルにまとめました。

出来上がりはチャーハンと似ている(と感じる)のに、その作り方は随分と違うことが判りました。米は国や地域によってジャポニカ米(粘り気のある、いつものお米)を使うこともあるようです。

ピラフもチャーハンも、後か先かの違いこそあれ、どっちみち炒める。Wikipediaより(撮影:Mandarin Restaurant氏)。

なお、日本ではほとんどチャーハンと同じ調理方法で、仕上げがコンソメやカレーなど、ちょっと中華っぽからぬ味つけのものをピラフと呼んでいることが多いようです。

まぁ、自分でこだわって作るならともかく、他人様が作ってくれた料理にあれこれと豆知識をはさむのは、あまり大人に相応しい態度とは言えないでしょう。

美味しければいいんです。美味しければ。

語源は材料の頭文字?トルコから世界各地に広まったピラフ

せっかくなので、ピラフについてもうちょっと調べてみると、その語源はトルコ料理のピラウ(Pilav)から来ており、一説には各素材の頭文字をとって組み合わせたPALOV OSが訛り、短縮されたものとも言われています。

【これぞ元祖?ピラフの材料】

P:パヨズ(葱)
A:アヨズ(人参)⇒葱にもある「~ズ」ってのは野菜の意味でしょうか
L:ラフム(肉)⇒イスラム圏だから豚肉はないとして、語感からラム(羊)肉でしょうか
O:オリオ(脂)⇒イタリア語でもオーリオ(Olio)って言いますね。
V:ウェト(塩)
O:オブ(水)
S:シャルィ(米)⇒お寿司のシャリ(ご飯)に似ていますね。

※調べてみたところ、現代トルコ語とはけっこう違うようです。

パキスタン料理のプラーオ、パンジャービー風。

ついでに、私たちがよく呼ぶピラフ(Pilaf)とはフランス語らしく、他にもプラーオ(पुलाव:インド料理)、ポロウ(پُلَو:イラン料理)、プロフ(плов:ロシア料理)などと呼ばれ、世界各地で親しまれているのが分かります。

ちなみに中国語ではジュワファン(抓飯)と呼ばれ、これは「手づかみ飯」という意味ですが、恐らくトルコから中央アジア、あるいはインド方面から伝わって来た時に、これを手で食べていた様子が印象に残ったのでしょう。

アレクサンドロス大王も賞味した?

ピラフの歴史は古く、かの有名なアレクサンドロス大王(BC356年~BC323年)も賞味したそうで、大王がサマルカンド(現:ウズベキスタンの古都)に遠征した際、地元民がおもてなし料理の一つとして提供したという伝承があります。

ピラフの美味さに感激したアレクサンドロス大王は、その後も快進撃を続けた(イメージ)。

あまりの美味さに感動したのか、大王は料理をマケドニア王国に持ち帰り、ヨーロッパ各地に広まったとも言われますが、ピラフに似た米料理は各地にあったようで、現代でもどこが発祥なのかは定説が決まっていないようです。

その上で、語源がトルコ語として定着しているのは、13世紀から20世紀にかけて栄えたオスマン=トルコ帝国の影響によるものかも知れません。

ピラフとチャーハンの違いまとめ

さて、ここまで調べてきたピラフとチャーハンの違いを、以下にまとめてみました。

結局のところ、日本の家庭では「どっちもご飯を炒めた上で、味つけの中華(和風も含めて東洋)っぽいものがチャーハン、洋風っぽいものがピラフ」とされがちです。

カレーピラフ、あるいはカレー炒飯。中には「ドライカレー」と呼ぶ人もいて、論争の火種になることも?(イメージ)。

しかし、調べてみると中には「カレーチャーハン」とか「中華ピラフ」なんて料理もあるので、実に油断がなりません。

まぁ、どっちであろうと美味しければいいんですが、違いを知っておくだけでも、料理をより楽しむことが出来るでしょう。

※参考文献:
エイ出版社編集部『洋食の基本』エイ出版社、2011年
加藤九祚『ユーラシア記』法政大学出版局、1984年

(文 / 角田晶生(つのだ あきお)

© 草の実堂